アビガンで残念なお知らせ まだ希望はあるが2020年04月26日 08:08

 国立感染症研究所が、承認済みの薬剤約300種類で新型コロナウイルスに対する効果を見た論文のプレプリント(正式発行前のパイロット版のようなもの)がネットに出回っている。
 NHKや共同通信、産経新聞などが、ネルフィナビル(エイズ治療薬)とセファランチン(白血球減少・脱毛症薬)が効果を示し、新たな治療薬候補になるとニュースにした。NHKなどは気づかなかったようだが、この論文にはもっと重要なデータが載っている。
これまで言われてきたクロロキン(CLQ)やネルフィナビル、セファランチンなどは薄い濃度で効いてるが、アビガンはこれまで効くとされてきた濃度60μMにしても全然効いてない。中国の臨床試験(RCT)で効果を否定されたカレトラの主成分ロピナビルよりもダメ。アビガン以外の4つは、細胞を傷害する濃度との間に数十倍の差がある。そもそも60μMですら、対インフルの約20倍。細胞を傷害する濃度との倍率があまり大きくない。(μMはμmol/L)
 同様なデータはほかの研究者からも寄せられているという。又聞きだが、ノーベル賞級の第一人者も効かないと言ってるそうだ。
 日本のウイルス学と抗ウイルス薬研究は世界でもトップレベル。彼らが(少なくとも細胞を傷つけないで濃度では)抗ウイルス活性がないと言うなら、おそらくない。
 ただし、抗ウイルス活性以外の理由で、アビガンが効くという可能性は残る。例えば、インターフェロンを活性化しているとか。
 また、感染研が実験に使っているのは、VeroE6/TMPRSS2細胞というアフリカミドリザルの腎臓の細胞なので、人間の肺の細胞を使ったら違う結果になる可能性もゼロではない。
 首相が富士フイルムの社長と仲がいいから忖度で書かなかったとかまたぞろ陰謀論を流す人が出るんだろうな。まともな砦に所属して仕事をしている記者は今の段階では書けなくて当然。しかし、逆に、アビガンをもてはやすような記事を書いて、期待を高めすぎるのは問題だ。
 とりあえず、6月に出る予定の富士フイルム富山化学の臨床試験結果を待つしかない。。もし期待はずれだった場合、反動が大きいだろうね。また、いい結果が出たとしても、ブラインド試験ではないので、意図的でないバイアスや利益相反などを見極めなければならない。
 インフル薬もそうだが、ほっといても9割以上が自然回復するような病気の効果を確かめるのは非常に難しい。重症患者の死亡率を下げる効果があるかどうか、今のところ疑問符だらけ。
https://www.researchgate.net/publication/340714038_Multidrug_treatment_with_nelfinavir_and_cepharanthine_against_COVID-19

アビガンに不都合な点ごまかしてない? 開発者の緊急提言
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/31/9230040

アビガン濃度20倍!にすれば効くかも コロナ 大丈夫か?
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/07/9221674

そりゃ効くよ(試験管内では) コロナの治療法になるかは別問題 評価法の確立が必要
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/26/9218028

タミフルよりアビガンな理由 コロナに効きそうな薬はRNA合成酵素阻害剤
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/22/9216635


訂正 首相とゴルフをしているのは社長ではなく、会長兼CEOでした。

コメント

_ 鍛治信太郎 ― 2020年04月27日 13:41

首相とゴルフをしているのは社長ではなく、会長兼CEOでした。訂正いたします。

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