高山の酒中の仙 私が会ったノーベル受賞者12020年11月13日 15:49

高山の酒中の仙 私が会ったノーベル受賞者1
小柴昌俊さんに初めて会ったのは、ノーベル賞受賞より数年前の小柴さんが71歳の時。岐阜県高山市の国際ニュートリノ会議。早朝、会場外でぽつんとベンチに座っていたので、隣に座って質問した。「アメリカに同じ研究をしている競争者がいたのに、どうして日本のチームは勝つ事ができたんですか?」「アメリカは既製品の光電子増倍管を使っていた。日本は浜松フォトニクスが特注で、大きいのを作った。増倍管の数やプールの水量は少なくてもより多くの微弱な光を捉えられる」。そのご様子は、二日酔いではなく、どう見ても朝から聞こし召してるとしか思えない。健康問題があって晩年は酒を断たれたそうで、ノーベル賞決定後に会った時はシャキッとされておられたが。

言葉が見つからなかった2019年12月25日 17:58

 一応、物書きの端くれ。物書きとは言葉を探す仕事だと思う。
知りあいの研究者の20代の長女が突然亡くなったと知らせがあった。詳しい事は分からない。家族が見つけた時には倒れて冷たくなっていたという。予期せぬ突然の心疾患らしい。
 仕事上の知りあいだが、その研究者は家で花見の会を開いていて、毎年、20人、30人の友人が集まっていた。たまたま近所に住んでいたBOØWYのドラムスが来ていた事もあるそうだが、浮世離れした学者たちなので誰だか分かってなかったという。その会で奥さんにも、小学生だった娘さんたちにも何度も会った事がある。
 たまたま東京を離れていたので、葬儀には出られなかった。もし参列したら奥さんたちにどんな顔をして会ったらいいのか分からない。
 生まれて初めて弔電を打つ事にした。全く言葉が見つからない。率直に「言葉が何も見つかりません」とご冥福をお祈りしたが、定番の家族への言葉がなかった。
 NTTに電話し、短いメッセージを伝えると、オペレーターが「家族の皆様におかれましてはご自愛を・・・と付けると、やわらかになりますが」と助言。そのまま従った。

データ見逃しでノーベル逃した米国人 惑星発見の物理学賞2019年10月11日 16:13

 今年のノーベル物理学賞が決まったジュネーブ大と同じ頃に同じ方法の観測をしていたグループは他にもあった。ノーベル賞サイトの解説にも出てくるカリフォルニア州立大サンフランシスコ校やUCバークレーのグループ。観測している恒星数などはジュネーブ大より豊富だっただろうから、先入観を持たず、無心にデータと向き合っていたら、受賞者は変わっていたかも。
 惑星を直接見るのは難しいので、ジュネーブ大などの研究者は間接的な方法で探した。それはこんな方法。木星を凌ぐような巨大な惑星であれば、恒星の方も惑星からの引力の影響を受けるので、我々から見て、惑星が恒星の前に来た時と、後ろに来た時で、恒星がほんの少しだけ前後に動く。この前後のゆれの速度をドップラー効果という方法で測った。
 ちなみに当時、「数十光年離れたところにある超巨大なものがカール・ルイスぐらいの速さで前後に動くのを測るという超精密測定だ」と書いた。これは今となっては例えが古い。
 ただし、この方法は地球のような小さな惑星では軽すぎて恒星がほとんど動かないので測定は無理。また、惑星の軌道が我々視線方向に対して水平に近ければいいが、垂直に近いとほとんど観測できない。それでも、近場の恒星を手当たり次第に調べてればいつかは当たるだろうと。
 木星だと1周に12年もかかるので、どのグループも観測には何年もかかるだろうと気長にデータを貯めていた。そんな中、ノーベル賞に決まったジュネーブ大のグループが、ある時、地球から約40光年離れた恒星「ペガスス座51」のデータに小刻みなゆれがある事に気づいた。実は猛スピードで回っている惑星があって、何と4日で1周していたのだ。ジュネーブ大の発見を聞いて、カリフォルニア州立大サンフランシスコ校のグループが1987年から貯めていた自分たちのデータを調べたら同じように惑星が次々に見つかった。

職業科学の例えツッコミ ノーベル物理 惑星探しに思う2019年10月09日 17:18

 太陽系外惑星発見のノーベル物理学賞。ジュネーブ大の最初の発表は1995年で、その1年後、発見が10個ぐらい貯まった時に「太陽系以外の恒星を回る惑星探しが世界の天文学者の間でちょっとしたブーム」というのを書いた。
 その中で、惑星を望遠鏡で直接見て見つけるのが難しい理由をこう書いている。
「惑星は自分自身で光らないため、非常に暗い。その上、すぐそばに明るい星が輝いている。例えば、太陽系で一番大きい木星と比べても太陽は十億倍も明るい。やみ夜に灯台のライトのそばにいる虫を見分けるようなものだ」
 この「灯台と虫」の例えは自分で考えたのだが、きっと記事を読んだのだろう、国立天文台の教授が会見や記者向け説明会でこの例えをパクルようになった。まあ、芸人の例えツッコミと同じで著作権などないが。
 大学や研究機関のプレスリリースは、その分野を知っている人間にとってはとても分かりやすいが、固い用語が次々出てきて、一般読者には近寄りがたいもの。科学の例えツッコミ役として、科学ジャーナリストの存在意義はなくならないだろう。ほかの分野同様、ちょっと詳しい第三者として外部から批判する役割ももちろん重要だが。

ブラックホール超軽いじゃん 素人のツッコミにまたも2019年05月01日 11:12

 M87銀河の超巨大ブラックホール。発表によると、半径は200億km、重さは太陽の65億倍。
素人からまたもツッコミが。
 体積は1正3000澗kg、重さは3300正立方メートル(正は0が40個、澗は36個並ぶ数の単位。澗は1兆の1兆倍の1兆倍。正はその1万倍)。密度を出すと、1立方cmで0.39μg。空気だったら0.0003気圧って超薄っ。ほとんど真空じゃん。
 どういうこと?
半径なんて書くからいけない。まあ、一般相対論の授業を受けた人間には常識だが、当然、素人には意味不明だろう。
 さて、ブラックホールには半径はない。まあ、半径ゼロで、密度無限大。一般相対論では特異点と言って、空間にできたゆがみかシミのような物。
 じゃあ、ブラックホールの半径って何かというと、それ以上内側に入ると、脱出できなくなる境界の事。ブラックホールもある程度遠ければ、その引力を逃れて脱出できる。しかし、その半径より近づくと、脱出に必要な速度が光より速くなるので、光や電波も含め、あらゆる物が戻って来られなくなる。ということは、その半径より内部の様子はいかなる方法でも知ることができない。この半径を物理学ではシュバルツシルト半径という。
 その半径の中で、物質は一様に広がっているわけではない。引き込まれた物質は、全部、中心の点に引き寄せられてぐしゃっとつぶれて、ブラックホールの点に取り込まれてしまう。
 電波が通り抜けられないため、黒く抜けて見える場所を「シャドー」と言う。今回の観測は電波望遠鏡でそのシャドーの範囲を決めた。実際に見えているシャドーの半径は500億kmで、シュバルツシルト半径の約2.5倍。これはブラックホールの引力で光や電波の進路が曲がる重力レンズ効果というやつで、虫眼鏡を使ったように大きく見えている。シュバルツシルト半径はブラックホールの重さに比例する。太陽だと約3km。200億kmという半径から計算して、ブラックホールの重さは太陽の65億倍と推定した。
 なお、シュバルツシルト半径は高校で習うようなニュートン力学でも求まる。人工衛星などが地球の引力から脱出するのに必要な速度(第2宇宙速度)は地球から遠いほど小さく、高度が低くなるほど大きくなる。で、この速度が光速になってしまう距離を計算すればいい。地球だと1mm弱ぐらいになるはずだ。
 またも素人のツッコミに1本取られた。しかし、密度を計算してみようとか思うのがエラい。

ウルトラマン故郷のブラックホール2019年04月15日 19:13

 ブラックホールの直接観測の記事で、M87銀河は、本当はウルトラマンの故郷になるはずだった事を書いたのはASAHIデジタルだけ。新聞紙面などではどこも書かないのが不満だった。土曜になってようやく青野由利さんがコラムに書いていた。
 M87はとても目立つ有名な銀河。子どもに夜空を見上げて「あれがウルトラの星だ」と言って欲しくて(肉眼では見えないけど)、円谷は目立つM87をウルトラマンの故郷「光の国」に選んだわけだが、台本に間違えてM78と印刷してしまった。M78はあまり目立たないしょぼい星雲。円谷関連の書籍で何度も取り上げられている有名なエピソードだ。
 また、ゾフィー(ウルトラ6兄弟の長兄)の必殺技の一つにM87光線というのがあって、こちらは原案通りのようだ。
大体、国立天文台の台長とか副台長とか、もろにウルトラマン第1作世代だし、JAXAの山崎直子さんはウルトラセブンに憧れて宇宙飛行士を目指したとか言ってるんだから、プレスリリースにM87はウルトラマンの本当の故郷って書いとけよ、と説教したい。
 なお、私もすべてのメディアをチェックしているわけではないので、上記(朝デジ、青野さん)以外にも報道しているところがあったというご指摘はぜひ。ただし、yahooなどで元記事を転載しているだけの記事は除外。