ノーベル賞学者塾を全否定 受験が柱な教育メディアで ― 2023年12月01日 13:07
高校ではジェネラルな教養を身につけるべきで受験のために理系文系に分けるのはよくないというのはその通りだろう。自分も理系だが、作文も古文や漢文の暗記力でないエピソードも好きだった。「一体、どんな日本語教育を受けてきたんだ」と問いたくなる「独創的」な修正を原稿に入れる上司に「私は理系だけど、国語の成績はあんたよりはほんのちょっとだけマシだったぞ」と怒鳴りたくなるのを我慢したことが何度もある。
しかし、そういう梶田さんが漢字、漢文、古文、日本史が苦手だったそうで。ノーベル賞級の業績を挙げた研究者は話を聞くとほとんどが特化突出型タイプという印象だ。本当に何でもできて専門外のことでも何でも知っている白川英樹さんのような人はめったにいない。オールラウンダーの東大の研究って京大の研究みたいな馬鹿馬鹿しさに欠け、何か面白みがなかったりする。
「真・普通の人」が参考にできない破天荒で自由闊達な「自称普通の人」石原さん、とても参考になる教育的な田中学長、受験産業への不信感をあらわにする梶田さん。期せずしてだが、あまりにも極端な三者三様連載になった。
◆「制限時間内の高得点競争」を社会は求めていない ノーベル物理学賞の梶田隆章さん
https://www.asahi.com/edua/article/15067899
◆底辺をはう成績だった中学時代、同級生の一言で急浮上 田中雄二郎・東京医科歯科大学長
https://www.asahi.com/edua/article/15067878
◆科学者たちはどんな勉強をしていたか
「“普通の人”でも科学はできる」と知った中高の理科授業 物理学者・石原安野さん
https://www.asahi.com/edua/article/15065984
しかし、そういう梶田さんが漢字、漢文、古文、日本史が苦手だったそうで。ノーベル賞級の業績を挙げた研究者は話を聞くとほとんどが特化突出型タイプという印象だ。本当に何でもできて専門外のことでも何でも知っている白川英樹さんのような人はめったにいない。オールラウンダーの東大の研究って京大の研究みたいな馬鹿馬鹿しさに欠け、何か面白みがなかったりする。
「真・普通の人」が参考にできない破天荒で自由闊達な「自称普通の人」石原さん、とても参考になる教育的な田中学長、受験産業への不信感をあらわにする梶田さん。期せずしてだが、あまりにも極端な三者三様連載になった。
◆「制限時間内の高得点競争」を社会は求めていない ノーベル物理学賞の梶田隆章さん
https://www.asahi.com/edua/article/15067899
◆底辺をはう成績だった中学時代、同級生の一言で急浮上 田中雄二郎・東京医科歯科大学長
https://www.asahi.com/edua/article/15067878
◆科学者たちはどんな勉強をしていたか
「“普通の人”でも科学はできる」と知った中高の理科授業 物理学者・石原安野さん
https://www.asahi.com/edua/article/15065984
大村智博士はポーズが良いので写真が楽 ― 2022年11月16日 13:00
久しぶりにノーベル賞関連のイベントに出てきた。こういうセレモニー系はいい写真が撮れなくて苦労するが、大村さんはいろいろな物を指さしして説明するので、いいカットが簡単に撮れて非常に楽だった。大村さんが修士だった60年代にNMRがもうあったとは。80年代でも400MHzがある大学は稀少だった。
◆ノーベル賞受賞者・大村智さんが大学院生時代を過ごした東京理科大に記念展示室
https://www.asahi.com/edua/article/14762935?fbclid=IwAR10K8Gl_RyVy6zaz45qhqmB7bdEIwt6QaPRiiEi6yP2o7Ndm7pGEsk_keI
◆ノーベル賞受賞者・大村智さんが大学院生時代を過ごした東京理科大に記念展示室
https://www.asahi.com/edua/article/14762935?fbclid=IwAR10K8Gl_RyVy6zaz45qhqmB7bdEIwt6QaPRiiEi6yP2o7Ndm7pGEsk_keI
違うシャープレスかと ノーベル選考に過去受賞は関係ないのだろう ― 2022年10月06日 09:04
シャープレスと言えば、シャープレス酸化、香月-シャープレス酸化と名前の付いた反応が2つもある触媒的不斉酸化反応の雄。酸化と逆の水素化(還元)反応のフランスのカガンとの組み合わせでノーベル賞を取るだろうとずっと前から言われていた人だ。そのカガンがはずれ、野依さんが入ったのは化学界には驚きだった。野依さんの方がボーダーという見方が普通だったからだ。しかし、そのシャープレスが2回目というのはもっと驚き。あのシャープレスとは違うシャープレスかと一瞬思った。
3人の頭文字を取った超伝導のBCS理論で2回目の受賞となったバーディンは自分がすでに取っているので、他の2人が取るのに不利になるのではないかと心配していたという話がある。ノーベルの選考調査は人ではなく分野が先行して決まるということなので、毎年、3つぐらいに絞られるというテーマの中で候補者に過去の受賞者がいても今年はこのテーマに出そうということになれば、そのテーマの3人に誰がふさわしいかを判断するので、以前の受賞は関係ないのだろう。
◆「1回目は実力。2回目は発想力」 2度のノーベル賞、親友が語る
https://digital.asahi.com/articles/ASQB56TNXQB5ULBH00M.html
3人の頭文字を取った超伝導のBCS理論で2回目の受賞となったバーディンは自分がすでに取っているので、他の2人が取るのに不利になるのではないかと心配していたという話がある。ノーベルの選考調査は人ではなく分野が先行して決まるということなので、毎年、3つぐらいに絞られるというテーマの中で候補者に過去の受賞者がいても今年はこのテーマに出そうということになれば、そのテーマの3人に誰がふさわしいかを判断するので、以前の受賞は関係ないのだろう。
◆「1回目は実力。2回目は発想力」 2度のノーベル賞、親友が語る
https://digital.asahi.com/articles/ASQB56TNXQB5ULBH00M.html
ネアンデルタール論争決着にノーベルがお墨付き ― 2022年10月04日 13:29
昔こんなのを書いた。当時は、まだネアンデルタール論争が争いの最中で、「また覆ったのか」とオセロを見てる感じだった。論争の決着にノーベル賞がお墨付きを与えたということなのだろう。記事を遡ると、「ネアンデルタールは人類(ホモサピエンス)の祖先」説→考古学的に祖先説否定(1980年代)→でも、混血はあったのではないか→DNAで混血も否定(2006-2008年ごろ)→ゲノム解析で混血説逆転勝利(2010年) という流れだ。
◆ノーベル医学生理学賞にスバンテ・ペーボ氏 古代人のDNA配列研究
https://digital.asahi.com/articles/ASQB3664NQB3UTFL01K.html
◆ノーベル医学生理学賞にスバンテ・ペーボ氏 古代人のDNA配列研究
https://digital.asahi.com/articles/ASQB3664NQB3UTFL01K.html
サリドマイドのウソ まだ信じてる科学記者がいるとは ノーベル化学賞 ― 2021年10月15日 13:23
もはや21世紀、令和の時代にまだこんな事を書く記者がいるとは嘆かわしい。
生物を形作るアミノ酸や糖質などの分子にはL体(左手系)、D体(右手系)の2種類(光学異性体)があり、双方で生理活性が全く違い、酵素などはこれを厳密に見分けている。この光学異性体を人為的に一方だけ作る有機不斉合成は2001年の野依博士のノーベル化学賞受賞で有名になった。
サリドマイドにも、左手系と右手系がある。催奇形性があるのは左手系だけで、右手系のみを使っていればサリドマイド禍は起きなかったという説が広く流布し、一時は教科書的な書物にも載っていた。有機化学の専門家でも信じていたくらいだ。
このようなデマが広まった原因は、マウスを使った実験で、右手系では催奇形性がなく、左手系にだけ催奇形性が出たという1本の論文だ。しかしながら、マウスやラットなどの齧歯類はサリドマイドの催奇形性に抵抗性があり、そもそもサリドマイドでは奇形は起きない。実験結果は偶然他の理由で起きた奇形か、捏造の疑いがある。その後、サリドマイドで奇形の起きるウサギなどで追試があったが、左手系のみに奇形が起きるという結果は一度も再現されなかった。
さて、左手系と右手系で、おそらく生理活性が違う。なぜ、差異が出ないかというと、サリドマイドの左手系と右手系は傘がおちょこになるように、簡単に反転して双方が入れ替わってしまうからだ。右手系だけを分離して、水に溶かして置いておくと、右手系が左手系に変化し、左右半々の混合物(ラセミ体)になってしまう。健常人を使った実験で体内でも速やかに混合物に変わってしまうことが確かめられている。
つまり、右手系だけを一生懸命不斉合成しても無意味なのだ。だから、今でもサリドマイドは右手系と左手系の混合物が売られている。右手系だけを苦労して合成して売っても被害は防げない。また、再発売された90年代、南米などで被害が出ていた。 有機合成に詳しいあるノーベル賞学者にこの右手と左手を作り分ける不斉合成について質問したとき、「サリドマイドは極めて不適切な例」と言っていた。
生物を形作るアミノ酸や糖質などの分子にはL体(左手系)、D体(右手系)の2種類(光学異性体)があり、双方で生理活性が全く違い、酵素などはこれを厳密に見分けている。この光学異性体を人為的に一方だけ作る有機不斉合成は2001年の野依博士のノーベル化学賞受賞で有名になった。
サリドマイドにも、左手系と右手系がある。催奇形性があるのは左手系だけで、右手系のみを使っていればサリドマイド禍は起きなかったという説が広く流布し、一時は教科書的な書物にも載っていた。有機化学の専門家でも信じていたくらいだ。
このようなデマが広まった原因は、マウスを使った実験で、右手系では催奇形性がなく、左手系にだけ催奇形性が出たという1本の論文だ。しかしながら、マウスやラットなどの齧歯類はサリドマイドの催奇形性に抵抗性があり、そもそもサリドマイドでは奇形は起きない。実験結果は偶然他の理由で起きた奇形か、捏造の疑いがある。その後、サリドマイドで奇形の起きるウサギなどで追試があったが、左手系のみに奇形が起きるという結果は一度も再現されなかった。
さて、左手系と右手系で、おそらく生理活性が違う。なぜ、差異が出ないかというと、サリドマイドの左手系と右手系は傘がおちょこになるように、簡単に反転して双方が入れ替わってしまうからだ。右手系だけを分離して、水に溶かして置いておくと、右手系が左手系に変化し、左右半々の混合物(ラセミ体)になってしまう。健常人を使った実験で体内でも速やかに混合物に変わってしまうことが確かめられている。
つまり、右手系だけを一生懸命不斉合成しても無意味なのだ。だから、今でもサリドマイドは右手系と左手系の混合物が売られている。右手系だけを苦労して合成して売っても被害は防げない。また、再発売された90年代、南米などで被害が出ていた。 有機合成に詳しいあるノーベル賞学者にこの右手と左手を作り分ける不斉合成について質問したとき、「サリドマイドは極めて不適切な例」と言っていた。
日本のお家芸だが落選 ノーベル化学賞 ― 2021年10月06日 18:58
先日亡くなった向山さんなどが切り開いたゴリゴリの有機不斉合成の分野。この種のお家芸で日本人が入らないのは珍しいかと。野依さんや根岸-鈴木さんらの有機合成は触媒に金属(ロジウム、ルテニウムなど)を中心に持つ有機金属錯体などを使う。今回の場合、金属触媒ではなく、有機分子触媒という分野を切り開いたことが評価されたということ。金属でないと反応は進みにくいが、原料も製品も有機物なので、触媒に金属が含まれなければ後で取り除かなくていいとか、まあ、利点はある。
真鍋さん米国人でも日本のノーベル賞のワケ イシグロさんはなぜ日本でないか ― 2021年10月06日 12:01
NHKなどが「日本人がノーベル賞を受賞するのはアメリカ国籍を取得した人を含めて28人目」と報じることに、「真鍋さんはアメリカ人だ」という異論が結構あるようだ。日本は二重国籍を認めないので、アメリカ国籍を取ったら日本人ではない。そこで、新聞などは「日本人が受賞」ではなく、「日本のノーベル賞」と書く。この場合、「日本の」は日本国籍という意味ではない。日本にいる時に日本でやった研究業績、または、日本で書いた論文が認められ、頭脳流出し、アメリカなどの研究機関で日本国籍の時にやった研究業績に、ノーベル賞が与えられるという意味だ。両親が日本人で、日本生まれでもイシグロさんのような場合は「日本の」とは言わない。
アメリカ国籍では、南部さんの最初の業績は大阪にいた時に書いた論文だし、中村さんの青色LEDは徳島にいた時に発明したもの。アメリカ国籍を取るのは今は簡単ではないが、ノーベル賞級の世界で唯一無二の研究者であれば比較的認められやすいとロスのアメリカ人に聞いた事がある。
今後出る可能性がある、日本の大学で外国人が行った研究だとややこしいですが、その場合は「日本の」とは書かないだろう。
ちなみに文科省が国別受賞者数をカウントする時は、南部さんはアメリカ人。二重国籍の場合は、ダブルカウントを避けるため、生まれた国でカウントしている。。
アメリカ国籍を抜いても25人もいるんだから無理して水増しする必要もないが。
◆現地は朝5時 ノーベル物理 押しかけは危険
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2021/10/05/9429779
◆気象でノーベル賞とは珍しい
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2021/10/05/9429744
アメリカ国籍では、南部さんの最初の業績は大阪にいた時に書いた論文だし、中村さんの青色LEDは徳島にいた時に発明したもの。アメリカ国籍を取るのは今は簡単ではないが、ノーベル賞級の世界で唯一無二の研究者であれば比較的認められやすいとロスのアメリカ人に聞いた事がある。
今後出る可能性がある、日本の大学で外国人が行った研究だとややこしいですが、その場合は「日本の」とは書かないだろう。
ちなみに文科省が国別受賞者数をカウントする時は、南部さんはアメリカ人。二重国籍の場合は、ダブルカウントを避けるため、生まれた国でカウントしている。。
アメリカ国籍を抜いても25人もいるんだから無理して水増しする必要もないが。
◆現地は朝5時 ノーベル物理 押しかけは危険
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2021/10/05/9429779
◆気象でノーベル賞とは珍しい
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2021/10/05/9429744
現地は朝5時 ノーベル物理 押しかけは危険 ― 2021年10月05日 21:34
本人の映像を取りたいテレビは大変。授賞発表時、プリンストンは午前5時台。日本の大学ならNHKのむちゃを何でもきいてくれるが、さすがにプリンストン大は朝6時、7時から記者会見を開いてくれない。それと、高級住宅街(プリンストン大上級研究員自宅付近)を怪しいアジア人が未明からうろいろしていたら射殺されるかもしれない危険がある。押しかけたようだが、電話が鳴りまくっていた。
物理学賞は、素粒子、物性(特に超低温が好き)、宇宙で回すのが相場で、キルビー特許のキルビーが取った時も意外性があったが、今回、コメンテーターも「まさか気象物理で出るとは」と言っている。
◆気象でノーベル賞とは珍しい
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2021/10/05/9429744
物理学賞は、素粒子、物性(特に超低温が好き)、宇宙で回すのが相場で、キルビー特許のキルビーが取った時も意外性があったが、今回、コメンテーターも「まさか気象物理で出るとは」と言っている。
◆気象でノーベル賞とは珍しい
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2021/10/05/9429744
気象でノーベル賞とは珍しい ― 2021年10月05日 19:09
他にも、ミスタートルネードとか異名を取った日本人研究者がいるが。ちなみに90歳はリチウム電池のグッドイナフさんとかが取る2018、2019年より前は最年長。66年に藤原賞って、「そんな昔に」と驚いたら、あの藤原賞ではなく、気象学会の賞だそうだ。
ノーベル医 重要な発見は日本人 富永真琴教授 ― 2021年10月04日 19:29
今年のノーベル医学生理学賞。温度感覚と触覚の受容体の発見。味覚と痛覚で日本人が重要な発見をしている。まあボスの手柄になるのはいつものことだが。生理学研究所の富永真琴教授。留学中に、唐辛子の辛み成分カプサイシンの受容体が温度センサーだという事を発見したまさに功労者。なぜ唐辛子を食べると汗をかくのかというのとも関わってくる。実際に発見したのは弟子の院生や助手でも研究室の主催者が受賞するというのは、パルサーなんかが有名な例。日本人受賞者でもそう言われてる例がある。青色LEDの赤崎さんと天野さん、HIV発見のモンタニエとバレシノゼなど師匠と弟子が共同受賞する方が珍しい。
それにしても、唐辛子を食べて「痛い」のと、熱い物を触って「痛い」のが同じセンサーだというのは本当に面白い発見。
それにしても、唐辛子を食べて「痛い」のと、熱い物を触って「痛い」のが同じセンサーだというのは本当に面白い発見。
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