最近「へーっ」だった話2023年09月11日 13:15

最近「へーっ」だった話
 50音の中で、何故「へ」だけがひらがなとカタカナが同じ形なのか。
ひらがなは「安→あ」、「以→い」、「波→は」など漢字全体を崩した文字。
カタカナは「伊→イ」、「江→エ」などヘンやツクリといった漢字の一部分のみを崩した文字。
へはどちらも部(べ)が元になった漢字だ。
カタカナはツクリのおおざとが元で、おおざとの下の方がちょっと開いたような形。
では、何故、ひらがなの方は全体の雰囲気が出ていないのか。
部の草書体を検索すると、へと似ても似つかない。
本当かどうか分からないが、納得のいく答を書いているサイトがあった。
その説明によると、古代、部は公文書などでしょっちゅう使われる頻出漢字だったので、省略して、崩したおおざとだけを書くのが普通だったという。
蟲を虫、體を体と書くのと同じ。これらの本字は今では旧字扱いで、省略形の方が正式になっている。
そのため、部からひらがなを作るときも、部全体ではなく、ふだん文書に使っている(カタカナと同じ)おおざとの崩し字からできた形になったというわけだ。
事実かどうかわからないが、古代には宮廷御用達の職業集団として、漢部、忌部、山部、漆部、長谷部、鍛冶部、呉服部などがあり、それらが服部、織部、綾部、物部などの名字や地名の由来にもなっている。それらがやたら公文書に登場してめんどうだから略字で済ませていたというのはありそうな話だ。
 そう言われて部の草書体を眺めると、確かに、左半分を省略するとへになる前の字に見える。
https://dragon-sassa.com/2018/10/19/post-3419/#i-9

マンガやラノベの小鳥遊はウソ2019年01月14日 02:11

 名字研究家・森岡浩さんに話を聞きに行った時、自分の名字について鍛治の治は「先祖が書き間違えたんですかね」と尋ねたら、「治めるというのは良い字なので、ワザと変えた可能性があります」と言っていた。
 つまり、刀鍛冶など職業の鍛冶から生まれた姓で、元々、鍛冶と名乗っていた先祖が、ある時、ワザと鍛治に変えたのかもしれないのだ。
 なぜワザと字を変えるのか。詳しくは森岡さんの本(「決定版! 名字のヒミツ」、「なんでもわかる日本人の名字」など)に出ているので読んで欲しいが、例えば、作家の飯干晃一やその娘で女優の飯星景子の本名は宮崎県の飯干という地名から生まれた名字だ。
 その飯干家から川をはさんだ熊本県側に分家ができる際、本家と同じ名字を名乗るのは恐れ多いと改名したのが飯星。明治になるまでの日本は自由に名字を名乗ってよかったので、こういう改名がよくあった。読み方は同じで漢字を変えるか、漢字は同じで読み方を変えるのが定番だ。恐れ多いと言いながら、本家より良い字に変えてしまうという。
 この種の改名で一番有名なのが、高梨家の分家のギャグのようなやり方だろう。
高梨=鷹無し。鷹がいなければ雀などが羽を伸ばすだろうから、小鳥遊でタカナシ。和歌山県にほんの数世帯だけあり、しかも跡継ぎの子供が劇少なのでいつ滅びるか分からない名字だ。
 小鳥遊姓はマンガやラノベの結構有名なキャラに使われているが、小鳥遊一族がそんなにいるわけないからあれはウソ。まあ、そもそもマンガやラノベはウソなんだから目くじらを立てるような事ではないが。

君の名前は間違っていると教師に言われた日2019年01月13日 11:04

 私の名字「鍛治」の「治」はサンズイだ。刀を作ったりする職業の「鍛冶」は冶金の「冶」、ニスイ。中学で漢文授業の初日、教師が出席簿を見て、「君の名前は間違っている」と言い、クラスが大爆笑になった。
 電話帳に基づく名字データベースによると、鍛治は全国に1000世帯ぐらいあるようだ。ニスイは400ぐらいで、若干、サンズイの方が多い。
 また、神田鍛冶町など、全国にカジ町があるが、やはり、サンズイとニスイは半々ぐらい。
手書きでは「治」をわざわざ難しい「冶」に間違える人はいなかったが、ワープロでは99%間違われる。
 カジを変換すると、最初から5番目ぐらいに鍛冶が出てくるからだ。しつこく変換キーを押すと次ページの14番目ぐらいに鍛治が出てくる。
 ワープロソフト一太郎のかな漢字変換プログラムATOKやマイクロソフトのMS-IMEなどには、最初、鍛治は入ってなかった。パソコンの記憶容量が限られていたので、よく使われる漢字や熟語優先で語彙が増えていったからだ。
 ただし、稀少名でも、一太郎を作っていたジャストシステムの浮川和宣社長の名前など会社に関連するものは早くから入っていた。さて、仕事でしょっちゅうジャストシステムの広報とFAXなどを送り合っていた頃、ATOK7で鍛治も収録された。きっと、鍛治をいちいち入力したり、登録するのがめんどうだったのだろうかと。
 以前、同僚に「鍛治さんのせいで大変な事になる所だった」とクレームを言われた事がある。能の小鍛冶について書いていたら、いつも私とメールをしていた癖で、つい、サンズイにしてしまった。あやうく間違えたまま出る所だったと。