不起訴念頭に航空機事故捜査 いかにも日本的解決法2024年02月14日 18:02

不起訴念頭に航空機事故捜査 いかにも日本的解決法
・日本はICAO(国際民間航空機関)の「事故調査の唯一の目的は事故防止であり、責任の所在を追求することではない」という勧告に同意している。
・航空機事故調査の報告書を刑事裁判の証拠にしてはならない。
 とまあ、これまで散々言われてきたし、記事にも何度も載っている。いささか言うのも疲れてきた感がある。

 そんな中、羽田の事故から10日ほどに書かれたこの記事。

◆JAL機炎上事故、刑事責任を問うのか?航空機事故で「有罪」が少ないワケ
https://diamond.jp/articles/-/337104

○国内法があるからとりあえず捜査一課が航空機事故の捜査に乗り出すけどしばしば不起訴を念頭に捜査している。
○事故調が「操縦ミス」と指摘した報告書を司法が否定したかのような無罪判決がある。
などを紹介している。
 国際条約を批准しているという対外的な事情と、国内法を整備して整合性を持たせることを怠っている二重基準状態を捜査機関と司法が運用で補っている。
そんな実態が垣間見える。矛盾を抱えたまま帳尻あわせをするいかにも日本的なやり方。こういう視点の記事は見たことがなかった。
 目の前で起きた事実の羅列ではなく、長年集めたデータと取材経験を元にこういう記事をすぐに提示できてこそジャーナリストではないかと。

ICAO annex 13
Chapter 3 Objective of the Investigation
3.1 The sole objective of the investigation of an accident or incident shall be the prevention of accidents and incidents. It is not the purpose of this activity to apportion blame or liability.

AERAに書いた羽田事故の記事がyahooにキャリーされた2024年02月02日 17:56

AERAに書いた羽田事故の記事がyahooにキャリーされた
今週のAERAに書いた海保機-JAL機衝突事故とヒューマンエラーに関する記事がyahooにキャリーされた。
なぜAERAのサイトで読めない記事がyahooで無料で読めてしまうのかよく分らないけど、だんだんに状況が分かってきたね。CRMに関して書く新聞も出てきた。

<訂正>AERAでも読めました。
https://dot.asahi.com/articles/-/212694

https://news.yahoo.co.jp/articles/546cca982f097d710bdaceb22fec1c440f36d880

◆空港事故とCRMについて2ページ書いた
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2024/01/30/9655017

◆何とかできる人が多いほど人は何もしなくなる
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2024/01/15/9651106

◆事故機の免責は世界の常識
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2024/01/05/9648513

◆国交省の事故調が国交省の外局である海保の起こした事故を調べるのは利益相反ではないかという質問は出なかったのだろうか?
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2024/01/03/9648022

◆パイロットのミスとは限らない 管制官がミスすることもある
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2024/01/02/9647900

空港事故とCRMについて2ページ書いた2024年01月30日 13:58

空港事故について2ページ書いた
コクピット内のヒューマンエラーの話。

◆何とかできる人が多いほど人は何もしなくなる
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2024/01/15/9651106

◆事故機の免責は世界の常識
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2024/01/05/9648513

◆国交省の事故調が国交省の外局である海保の起こした事故を調べるのは利益相反ではないかという質問は出なかったのだろうか?
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2024/01/03/9648022

◆パイロットのミスとは限らない 管制官がミスすることもある
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2024/01/02/9647900

何とかできる人が多いほど人は何もしなくなる2024年01月15日 18:11

何とかできる人が多いほど人は何もしなくなる
冷淡な傍観者 The unresponsive bystander : why doesn't he help?
 街中で緊急事態が起きた時、それを助けられる立場にいる人が多数いたのに誰も行動しようとしなかった。そのような事例がアメリカで相次ぎ、都会の人間の冷たさ、他者への無関心さとして社会問題化した。
 そこで、検証のために試みられた社会心理学実験をまとめた本だ。

 真の実験目的を隠して被験者を集める。例えば、こんな実験。卓上でできる簡単な作業を頼む。隣の部屋に子どもが2人いてうるさいかもしれないが、気にせずに作業を続けてくださいと言って、実験者は去る。隣の部屋から録音再生で子どもたちの声を流す。子どもが遊んでいて、やがてひどいけんかになり、危機的状況になる。
しかし、被験者たちは隣の部屋に行って介入しようとしない。終了後、なぜ助けなかったのか質問すると、最初はそう思ったが、録音である事を見破ったと言うのだ。
 そこで、今度は「隣には子どもが2人と大人が1人います」と言い、それ以外は全く同じ条件で実験する。すると、今度の被験者たちは誰ひとり録音だと見破ることなく、なぜ隣の大人はけんかを止めないのか批判的な気持ちだけを募らせた。
 このような一連の実験から分かったことは、緊急事態の傍観者たちは無関心なのではなく、非常に強い関心を持って観察しており、自分が行動するべきかどうか強い葛藤とストレスを感じている。
 そして、行動するべきでない理由を探している。「これは事件ではなく、ドラマの撮影なのではないか」などだ。介入すると邪魔になってしまうかもしれない。
 そして、介入できる立場の人間が多いほど、他の人が行動しないということはやはり事件ではないとますます介入するべきでないと思ってしまう。介入が必要なら自分以外の誰かが行動しているはずだと考えるからだ。
 つまり、行動することがストレスとなる場合、人は行動しなくていい、しない方がいい理由を探し、行動できる人間が多いほどより行動しなくなる。外野がお見合い状態になってイージーフライを落とすようなエラーが起きるのだ。
今回の羽田航空事故で、ヒューマンエラーにフェールセーフが利かなかった理由にもつながるような気がする。
もともと理工系でなければ社会心理学をやりたかったのだが、大学1年の時に出会ったこの名著には感慨深いものがある。

事故機の免責は世界の常識2024年01月05日 18:34

事故機の免責は世界の常識
航空安全推進連絡会議が羽田の海保機-JAL機事故に緊急声明
1)この主張の通り、事故調の報告書を刑事裁判の証拠にしてはならないという国際的なルールを日本が守っていないのは問題だ。刑事被告人には自分に不利となる事柄に関しては黙秘権があり、事故当事者を免責しないと真実を話さなくなり、航空機事故の原因究明、再発防止ができなくなるからだ。
 欧米の法律では、よほど悪質なものでない限り過失には刑事罰を科さないのが伝統で。その点では日本の法律はドイツ法やイギリス法をモデルにしたにもかかわらず、非常に特異だ。
 またこの問題には日本の国民性の要素もある。何か過失による重大事故が生じると、「誰が悪いのか犯人捜し」に躍起になり、「犯人」を決めると、引きずり出して謝罪させ、罰を与えたがる。そして、罰を与えると満足して、すっかり忘れてしまい、なぜそのような事故が起きたかというシステムの欠陥の問題には興味を示さず、結局、教訓を生かすことができなくなる。
2)最後から2番目の段落、「また、・・・」で始まっているが、その前は「ICAOの精神を遵守するべき」なのに対し、日本は正反対のことをしているという主張なので、「また」はおかしい。「而るに」「しかしながら」「にもかかわらず」などを使うべき。この声明の主張の核となる部分なのに、惜しい失敗。
3)前段の部分は不要。これがあるために、最も訴えたい後段の主張がぼけてしまうので、むしろ、邪魔。
4)特に、報道機関やSNSの情報の取り扱いに関する注意喚起は無用。運輸安全委員会の事故調の調査はそんな雑音に左右される物ではない。日本の裁判の判決が報道機関やSNSの臆測に左右されたりしないのと同じ。

国交省の事故調が国交省の外局である海保の起こした事故を調べるのは利益相反ではないかという質問は出なかったのだろうか?2024年01月03日 11:23

国交省の事故調が国交省の外局である海保の起こした事故を調べるのは利益相反ではないかという質問は出なかったのだろうか?
国交省の事故調が国交省の外局である海保の起こした事故を調べるのは利益相反ではないかという質問は出なかったのだろうか?
 まだ出てないなら、誰か国交省か大臣のレクで質問してほしい。県警も調べていると反論するかもしれないが、再発防止を最優先にするため、当事者の刑事責任を問わないという世界の常識に逆行する。
 国交省は交通と運輸を所管しているんだから、当然、事故の当事者や有責者になることもしばしばある。アメリカでもNTSB(国家運輸安全委員会)は最初は運輸省と関係が強かったが、完全に独立した組織に改編されている。

◆パイロットのミスとは限らない 管制官がミスすることもある
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2024/01/02/9647900

パイロットのミスとは限らない 管制官がミスすることもある2024年01月02日 19:31

パイロットのミストは限らない NHKのニュースで、元パイロットの小林氏が[管制官の指示を聞き間違えたか、JAL機がコースをはずれたか、2つの可能性がある」とパイロットミスを前提にコメントしてました。しかし、管制官がミスをすることもあります。 ジャンボ機同士が空港で衝突した航空機事故史上最大の犠牲者となったテネリフェの悲劇では、パイロットだけでなく、管制官の指示にも問題があったとされています。  ◆JAL機と衝突の海保機、救援物資を運ぶ予定 6人搭乗、安否確認中
 NHKのニュースで、元パイロットの小林氏が[管制官の指示を聞き間違えたか、JAL機がコースをはずれたか、2つの可能性がある」とパイロットミスを前提にコメントしていた。しかし、管制官がミスをすることもある。
 同じような空港での衝突は、ジャンボ機同士の衝突で航空機事故史上最大の犠牲者となったテネリフェの悲劇が有名だ。この事故では、強引な離陸をしようとしたKLMのパイロットだけでなく、管制官の指示にも問題があった複合要因とされている。
 テロ予告で空港が閉鎖された後の解除で空港が混雑、混乱していたというのもミスが起きやすい要因。今回の能登地震による緊急の物資輸送も似たようなイレギュラーな状態が考えられる。

1)JAL機が誤った滑走路に着陸した。
①パイロットが管制官の指示を聞き間違えた、または、勘違いした。
②管制官がJAL機に誤った指示を出した。

2)海保機が誤ってJALの着陸する滑走路に進入した。
①海保機のパイロットが管制官の指示を聞き間違えた、または、勘違いした。
②管制官が海保機に誤った指示を出した。

3)JAL機のパイロットが着陸の際、誤って滑走路のコースからはずれた(国内でも過去に誤ってタクシーウェイに着陸するという重大インシデントが起きている)。
 大体、この5通りが考えられる。どの場所で衝突しているかがポイントだ。後はフライトレコーダー、ボイスレコーダーで詳細が分かるだろう

◆JAL機と衝突の海保機、救援物資を運ぶ予定 6人搭乗、安否確認中

急な教育者代役でウソ800並べて同僚に感心された2023年09月21日 13:18

急な教育者代役でウソ800並べて同僚に感心された
 中学受験の受験生と親の質問に識者たちが答えるオンラインイベントのシミュレーション(*)に駆り出された。突然の識者代役だったので質問に次々アドリブで対応することに。まあ機材とか進行の事前チェックだから発言内容はどうでもいいのだが、一応それらしいことを言おうかと。
最後の質問「精神的に追い詰められ子どもにひどいことを言いそう。どうやって心の平静を保てばいいか?」
の答が一番受けた。
「私も入社半年ぐらい、夜回りに行って何も話を聞けなかった時なんか会社に帰るのがイヤでイヤで。『このまま失踪してやろうか』と思った事が何回かありました。追い込まれた時の心の持ちようなんですが、その時思ったのは、これで別に死ぬわけじゃない。会社に戻っても死刑になるわけじゃない。殺されるかとは思いましたけど。罪に問われて投獄されるわけでもないし、クビになるわけでもない。親も子も、別に中学受験に失敗したからって殺されるわけじゃない、とそれぐらい開き直ればいいんです」
本番でも司会する同僚は大笑いしながら、「先生が夜回りに行っていたとは思いませんでした」と乗ってきた。
◆中学受験のメリットは?
「一貫校に入った場合ですが、高校受験は暗記中心なところがあるけど、中3でそれをやる代わりにもっとクリエイティブな学習、卒論を書いたりとかできるわけです。
中学高校で分かれていると授業内容が重複したり、駆け足になったりする事があるんですが、一貫校は非常に時間的な余裕があるので、ゆったり進める事ができます。三角関数だけで半年かけたりします。じっくり深く学べるんです」
◆国語の力を付けるには?
「最近の入試では、考えさせて長文を書かせる中学が増えてきました。白紙で出してはダメなので、とにかく、何でもいいから書く。今まで見た事も聞いた事も考えた事もなかったような事を出題されても頭の中と紙が真っ白にならないようにふだんから苦し紛れでいいから何か思いついた事で埋める訓練をしておくといいです」
◆中学受験をするかどうかいつ決断すればいいか?
「決断するのはいつでもいいんですが、撤退する勇気を持って下さい。国産ジェット機MRJの開発が断念されましたが、今まで塾にこれだけお金を使ってしまったから今さらやめられないとかそういう特攻精神で突っ込まないように」
◆どうやって覚えたら? 学習の振り分け、重み付けは?
「ワクチンと同じで、暗記するには連続して何時間も同じ事をやるより、何日か間をあけて繰り返した方が記憶に定着します。だから、同じ学習の反復を何時間も続けるのはではなく、ばらけた方がいいです。寝ないで暗記するというのは一番良くなくて、覚えられません」
◆受験準備の遅れから不安で学校を休みたがるがどうしたら?
「理由があって不登校になっている児童を無理やり行かせると良くないのと同じです。本人が行きたくないなら無理に行かせなくていいです」
◆勉強しないのを無理にさせてますが、どうすれば?
「親が無理やりやらせていい事なんて一つもありません。それで、仮に素晴らしい中学に入れて、中学でまた親が無理やりやらせるんでしょうか。親が強制できるのはせいぜい中学までです。高校以上になったらできません。何か1つでもいいから興味のあることを見つけ出し、突破口にするしかないです」
アドレナリンが出るのか、アーとかウーとか詰まらず、次々答が沸いてきた。同僚に「どうしてそんなまともそうな事(ウソ?)を言えるんですか」とちょっとだけ感心された。
https://www.asahi.com/edua/article/14968111
(*)テレビ番組でADがタレントや司会の名札を下げて代役のリハをやるようなこと。

YOSHIKIなどと同じ大きさだった2023年06月04日 12:12

YOSHIKIなどと同じ大きさだった
献花に行ってきた。事前にしつこく確認されただけあって、珍しく、鍛冶とか鍜治とかの間違いはなかった。ただ惜しむらくは順番。ちゃんと読み方も申込書に書いてあったのだが、あいうえお順なら壮一の方が先。価格は一律でランクワケがないので、YOSHIKIや高見沢俊彦などと同じ大きさになっていた。産経新聞の社長の名前などもあったが、相当な恩恵を受けた日テレなどの名前がない。たぶんだが、非公開でやった業界関係者だけのお別れ会で大枚をポーンと出したんじゃないかと想像する。しかし、一般ファンが見る所にも出してアピールしてないのは詰めが甘いなと。ちなみに思い出の写真の中央は、アマゾンに行く前パリで壮一が撮ったものだそうだ。戦車に乗ってるのもたぶんそう。

◆鍛治壮一の親友に哀悼を
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2023/05/06/9583633

◆松本零士さん今でも手書きだったのでしょうか
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2023/02/20/9564176

◆最後の社会部記者 鍛治壮一儀
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2022/03/19/9473885

囚人席はないJAL777 ボーイングvs.エアバス2023年05月21日 18:46

囚人席はないJAL777 ボーイングvs.エアバス
 昔出張で空港に行ったら、JASの職員がB777に乗る乗客に「今日は満席でもう5席の真ん中しか残っておりません」と謝っていた。私は777ではなく767に乗るために並んでいたのだが同じことを言われた。「767に5席編成なんてありましたっけ?」。謝りすぎてわけがわからなくなっていたようだ。このボーイング777の5席の真ん中をライバルのエアバスは「プリズなーシート(囚人席)と呼んでいた。
 ボーイングが双発ワイドボディB777のデモで欧州のエアショーに参加した際、777の客室にエアバス機の輪切りにした胴体の実物大模型を設置した。曰く、「WIDE BODY?」。ワイドボディはジャンボジェットなどのように通路が2列以上ある胴体の幅が大きい機体のこと。777の胴体は太く、こんなに客室が広いが、それに比べ、エアバス機の天井はこんなに低い。よくワイドなんて言えるなという痛烈な比較広告だ。ボーイングの背の低い広報が自分でも頭が天井にぶつかるとジェスチャーで揶揄していた。激怒したエアバスは「777にはprisoner seatがある」とわざわざ動画まで作って対抗宣伝。2本の通路にはさまれた5席の真ん中は窮屈な上に乗務員から物を受け取るのも一苦労。まるで囚人だと。
 「世界初の超音速旅客機も、世界初の双発ワイドボディも、フライバイワイヤもすべてヨーロッパが先にやった」。かつて、エアバスの広報は誇らしげに言っていた。民間航空機産業は、米国が席巻したマーケットを欧州が逆転するところまで盛り返した数少ない分野だろう。ワイドボディ機は長距離航路での安全を図るためエンジンは4発だった。双発にした方が重さも空気抵抗も減る。双発ワイドボディの価値を認めない米国勢を尻目にエアバスは双発機の経済性で業績を伸ばした。
 777の場合、座席は横9席だから、2-5-2とするか、3-3-3とするかは航空会社の自由。どうして囚人席編成なんてするんだろうと疑問を口にしたら、航空関係の広報担当者が教えてくれた。満席のときは囚人席まで埋まるが、そこまで混んでいなくて、9席のうち8席が埋まることを考えたら、窓際席が不便になる3-3-3より囚人席を作った方がいい。この動画を見ると、JALの700-200ERは囚人席のない編成(中4席の3-4-2)だ。
 しかし、ボーイングが特別思い入れのある番号を与えた777が退役の時期を迎えるとは。

◆JAL777-200ER退役 記念フライト、20年の思いを込めて
https://digital.asahi.com/articles/ASR5J55X9R5DUTIL02N.html