ワクチンが1年で出来るわけない 同じ質問にウンザリ2020年09月09日 16:04

ワクチンが1年で出来るわけない 同じ質問にウンザリ
 「現代科学の粋を結集し、莫大な金額を投入しても何故未だにワクチンが出来ないのか」。今年に入ってから何度も同じ質問をされてウンザリしてる。答えはいつも同じだ。
 今回、新型コロナウイルスの遺伝子配列などがすぐに提供されたので、いろいろな種類のワクチンが日本企業も含め、数十社ですでに出来ている。物としては出来てるが、「完成」はさせたくないというのが本音だろう。
 問題は、安全性試験と有効性試験。試験管内の実験はすぐに終わるが、必ず人体実験をしなければならない。これにメチャクチャお金と時間がかかる。最も先行していたアストラゼネカのワクチンの臨床試験が重大な副作用で中止になった。しかも、事前の数百人ぐらいの試験では分からない副作用が数万人規模で使うと出てくる場合もある。
 さらに極め付けに難しいのが有効性の確認だ。ワクチンは予防薬なので、健康な人に投与して、新型コロナウイルスに感染しにくいかどうか、感染しても重症化しにくいかどうか確かめなければならない。普通なら何年もかかる。
 「人為的な感染実験をしたらどうか」とナチスや731部隊みたいな事を言ってる専門家もいるようだ。冷戦期の米軍が生物兵器防御のため、ウイルスの入った霧を兵士にかける実験をしていたという話を聞いたことがあるが、昭和の話。コンプライアンスの令和時代にできるわけない。
 今でこそ効果と安全性がかなり確かになってきているはしかやポリオなどのワクチンも何十年もの蓄積があるからこそで、最初は結構重大な事故が起きていた。患者の人権があまり考慮されない頃だから許容されたのだろう。
 安全性も効果もはっきりわからない新型コロナワクチンを大統領選があるからとりあえず10月中に承認・投入して、使いながら試すなんてわけにいかない。世界の製薬が共同で「安全性と効果の証明が得られないのに、急いで承認申請をすることはしない」と声明を出した。オプジーボなど最近の抗がん剤のように患者1人で何十万円、何百万円という薬ならリスクを取る価値もあるが、ワクチンは1人あたり何百円、何千円の世界だ。訴訟リスクまで考えたらやりたくないのが普通。
 厚生労働省は、「ワクチンで被害が起きた場合、製薬の責任を免責する制度」を導入する方針だそうだが、勇気があるなと。HIVなどで懲りてないんだろうか。これで安心して投入されたワクチンで死者が出たら、免責制度導入を決めた官僚が刑事被告人になる可能性もあるのに。官邸の意向に忖度しているのかもしれないが、これまで通り責任を取らされるのは大臣や首相ではなく、官僚だ。

ワクチン開発9社、異例の声明「拙速な承認申請しない」
http://dai-marc.asahi-np.co.jp/tp/tpdetail.php?selectId=14613616
アストラゼネカのワクチン治験が中断 深刻な副反応疑い
https://digital.asahi.com/articles/ASN993JL6N99UHBI00N.html?iref=comtop_8_02

(シルクスクリーン デビルマンの脳裏)

論文1本に振りまわされるのはやめよう コロナバブルでチェックいい加減2020年07月09日 13:54

論文1本に振りまわされるのはやめよう コロナバブルでチェックいい加減
 非常時だからこそ、最低でも3つの独立機関が同じ結果を出すまで気にするのは止めるという原則に立ち返るべきだろう。
 今回、「怪しいデータ会社に頼んだらいい加減だった」と言い訳しているが。だが、今回の事件以外にも怪しい論文は山ほどある。ブランド力(インパクトファクターと言う)の高い雑誌に多くの論文が採用された事が評価の主眼になり、雇用の継続や新たな就職先につながる研究者にとって、コロナバブルで判定がゆるくなっている一流紙に論文を載せるチャンス。ウイルス学や疫学、免疫や製薬にそれほど詳しいわけでもないニワカも参戦する。データの意図的ねじ曲げもあるだろうが、間違いに気づかない者もいるだろう。誰が見ても「さもありなん」という研究は取り上げられにくい。常識の斜め上を行くような論文の方が一流紙に大きく載る。そういう有名紙やメディアの食いつきが良さそうなテーマを思いついたら、その仮説に沿ってデータを集めてしまう。意図的捏造も無意識の偏りもある。
 例えば、インフル薬とエイズ薬を処方したら治ったという報告。最初は日本でも治療に使ったが、今は否定的なデータが多く、WHO主導の試験も中止になった。これなど、インフルエンザの患者だったから治ったのではないかと言われている。季節的に新型コロナ患者よりインフルエンザの患者の方がはるかに多く、同時感染もある。
 いま、疑わしいと思ってるのは、ネイチャーの医療系論文誌に載ったこれ↓
「新型コロナウイルス罹患後2,3月で抗体が急減する(ネイチャーメディシン)」
https://www.nature.com/articles/s41591-020-0965-6
 免疫学の教科書には書いてない現象らしいが。しかし、新型コロナに関しては、一度快復してもすぐに再感染するなど、免疫が有効でないといった怪しい言説がいろいろ流布している。ほとんど根拠がないそんなあいまいなストーリーに沿って結果を出そうとする研究者が多いのではないか。

悪玉抗体て 変な言葉作るの止めて,ワイドショー2020年05月06日 15:36

悪玉抗体て 変な言葉作るの止めて,ワイドショー  連休中、ワイドショーを見たら、「善玉抗体」「悪玉抗体」「役立たず抗体」という言葉を普通に使っていて、頭痛が。もうやめて。  今後、新型コロナウイルスのワクチンができたとして、ADE(抗体依存性感染増強、もしくは、抗体介在性感染増強)と呼ばれる現象が、その実用化で足かせになるのは間違いない。間違いないんだけど。  一言で言うと、免疫が中途半端だと、返って重症化してしまう現象だ。 細胞の表面には鍵穴に相当するたんぱく質(糖鎖たんぱくなど)が突き出ていて、ウイルスには鍵に相当するたんぱく質(コロナの王冠のスパイク)が突き出ている。細胞の種類によって鍵穴(リセプター)が違い、ウイルスは自分が持っている鍵(リガンド)が合う細胞にしか感染できない。HIVは、CD4という鍵穴を使うので、白血球の中でもCD4陽性リンパ球(いわゆるヘルパーT細胞)に専門的に感染する。コロナもインフルもノドに分布する細胞に感染するが、コロナの鍵穴はアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)、インフルはシアロ糖鎖で違う。  体内に異物のたんぱく質(抗原)が侵入すると、1種類の抗原に対していろいろな抗体ができる。その抗体の中で、抗原のたんぱく質としての機能を失わせるものを中和抗体と言う。ウイルスの場合、普通は、ウイルスの鍵にくっついて、ウイルスが細胞に感染できなくさせるものを指す。中和抗体以外にも、コバンザメのようにただくっつくだけの抗体もできる。抗体自体には抗原を破壊する機能はない。なので、ワイドショーなどではこれを「役立たず抗体」と呼んでる。  ウイルスに感染した後、十分な中和抗体があるうちは、同じウイルスに再感染しない。ところが、中和抗体が少ないと、免疫細胞(樹状細胞やマクロファージ)に対して、抗体がむしろ架け橋になって感染が成立する。これがADE現象。  抗体のY字形の二股の部分がウイルスにくっつくのだが、その反対側の棒の部分はマクロファージなどの免疫細胞がくっつくようになっている。抗体は役に立たないだけでなく、むしろ、積極的に免疫細胞とウイルスを近づけて離れないようにしてしまう。この抗体をADE抗体と呼ぶ。  ADE抗体が、通常は感染相手でない免疫細胞に感染させ、ウイルスを増やすだけでなく、感染された免疫細胞の中で遺伝子発現が暴走し、サイトカインやケモカインなどの免疫物質の大量分泌が起きる。この免疫細胞の暴走も加わってさらに重症化する。  デング熱は初めてかかった時より2回目にかかった時の方が重症化することが知られていた。2016年から2017年にかけ、フィリピンでフランスの製薬企業サノフィのデング熱ワクチン「デングワクシア」を数十万人に接種し、60人とも70人とも言われる子どもの死者が出た。ワクチンによるADEが原因とされる。デング熱には免疫的に4種類のウイルスがあり、同じ種類のウイルスに対しては一度かかると終生免疫になるが、しばらくすると、他の種類のウイルスに対しては、中和活性がなくなり、再び感染した時、ADE抗体が架け橋になって重症化すると考えられている。サノフィはワクチンで4種類全部を中和する抗体を誘導させたつもりだったが、実際には不十分だったという事のようだ。  フランス企業の実験台にされたとフィリピン国民の怒りは凄まじく、有効で必要性の高いはしかワクチンの接種率まで下がるという悪影響を及ぼした。  ADEはエボラウイルスの病原性や増殖能力にも関わっていると考えられている。新型コロナウイルスで起きるかどうかは分からないが、動物のコロナウイルスやSARS、MERSを使った動物実験ではADEと見られる現象が起きている。  実際に起きるかどうかは別として、ワクチンが出来たはいいけど、実戦で使うとなると相当な勇気が必要だろうね。仮に日本人10万人の命を救えるワクチンだとしても、ワクチンの副作用で10人でも死んだら大騒ぎになるだろう。弱めのワクチンを恐る恐る使った場合、副作用もないけど、抗体価が上がらないから効果もないということになるだろうし。  ところで、ワイドショーは、中和抗体を善玉抗体、ADE抗体を悪玉抗体と呼んでるが、これが定着するのは勘弁して欲しい。
 連休中、ワイドショーを見たら、「善玉抗体」「悪玉抗体」「役立たず抗体」という言葉を普通に使っていて、頭痛が。もうやめて。
 今後、新型コロナウイルスのワクチンができたとして、ADE(抗体依存性感染増強、もしくは、抗体介在性感染増強)と呼ばれる現象が、その実用化で足かせになるのは間違いない。間違いないんだけど。
 一言で言うと、免疫が中途半端だと、返って重症化してしまう現象だ。
細胞の表面には鍵穴に相当するたんぱく質(糖鎖たんぱくなど)が突き出ていて、ウイルスには鍵に相当するたんぱく質(コロナの王冠のスパイク)が突き出ている。細胞の種類によって鍵穴(リセプター)が違い、ウイルスは自分が持っている鍵(リガンド)が合う細胞にしか感染できない。HIVは、CD4という鍵穴を使うので、白血球の中でもCD4陽性リンパ球(いわゆるヘルパーT細胞)に専門的に感染する。コロナもインフルもノドに分布する細胞に感染するが、コロナの鍵穴はアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)、インフルはシアロ糖鎖で違う。
 体内に異物のたんぱく質(抗原)が侵入すると、1種類の抗原に対していろいろな抗体ができる。その抗体の中で、抗原のたんぱく質としての機能を失わせるものを中和抗体と言う。ウイルスの場合、普通は、ウイルスの鍵にくっついて、ウイルスが細胞に感染できなくさせるものを指す。中和抗体以外にも、コバンザメのようにただくっつくだけの抗体もできる。抗体自体には抗原を破壊する機能はない。なので、ワイドショーなどではこれを「役立たず抗体」と呼んでる。
 ウイルスに感染した後、十分な中和抗体があるうちは、同じウイルスに再感染しない。ところが、中和抗体が少ないと、免疫細胞(樹状細胞やマクロファージ)に対して、抗体がむしろ架け橋になって感染が成立する。これがADE現象。
 抗体のY字形の二股の部分がウイルスにくっつくのだが、その反対側の棒の部分はマクロファージなどの免疫細胞がくっつくようになっている。抗体は役に立たないだけでなく、むしろ、積極的に免疫細胞とウイルスを近づけて離れないようにしてしまう。この抗体をADE抗体と呼ぶ。
 ADE抗体が、通常は感染相手でない免疫細胞に感染させ、ウイルスを増やすだけでなく、感染された免疫細胞の中で遺伝子発現が暴走し、サイトカインやケモカインなどの免疫物質の大量分泌が起きる。この免疫細胞の暴走も加わってさらに重症化する。
 デング熱は初めてかかった時より2回目にかかった時の方が重症化することが知られていた。2016年から2017年にかけ、フィリピンでフランスの製薬企業サノフィのデング熱ワクチン「デングワクシア」を数十万人に接種し、60人とも70人とも言われる子どもの死者が出た。ワクチンによるADEが原因とされる。デング熱には免疫的に4種類のウイルスがあり、同じ種類のウイルスに対しては一度かかると終生免疫になるが、しばらくすると、他の種類のウイルスに対しては、中和活性がなくなり、再び感染した時、ADE抗体が架け橋になって重症化すると考えられている。サノフィはワクチンで4種類全部を中和する抗体を誘導させたつもりだったが、実際には不十分だったという事のようだ。
 フランス企業の実験台にされたとフィリピン国民の怒りは凄まじく、有効で必要性の高いはしかワクチンの接種率まで下がるという悪影響を及ぼした。
 ADEはエボラウイルスの病原性や増殖能力にも関わっていると考えられている。新型コロナウイルスで起きるかどうかは分からないが、動物のコロナウイルスやSARS、MERSを使った動物実験ではADEと見られる現象が起きている。
 実際に起きるかどうかは別として、ワクチンが出来たはいいけど、実戦で使うとなると相当な勇気が必要だろうね。仮に日本人10万人の命を救えるワクチンだとしても、ワクチンの副作用で10人でも死んだら大騒ぎになるだろう。弱めのワクチンを恐る恐る使った場合、副作用もないけど、抗体価が上がらないから効果もないということになるだろうし。
 ところで、ワイドショーは、中和抗体を善玉抗体、ADE抗体を悪玉抗体と呼んでるが、これが定着するのは勘弁して欲しい。

おでんのレシピ
①輪切りにした大根を米ぬかで炊く。ぬかがなければ白米でも大丈夫。
②昆布を水につけておき、その水で鰹節をゆで、出汁を取る。
③練り物(げそ巻き、いか巻き、ウズラ巻き、ゴボウ巻、きつみれ、ちくわ、野菜ボールなど。今回、薩摩揚げ、海老巻きが入ってない)を取った出汁②で煮る。しょう油とみりんで味付け。
④練り物を煮た出汁③の一部を取り、しょう油、みりんで濃いめの味付けをし、大根、厚揚げ、がんもどき、玉子、里芋など練り物以外の具を別々に煮込む。里芋は濁りやすいので、食べる直前にほかの具と一緒にする。

アビガンで残念なお知らせ まだ希望はあるが2020年04月26日 08:08

 国立感染症研究所が、承認済みの薬剤約300種類で新型コロナウイルスに対する効果を見た論文のプレプリント(正式発行前のパイロット版のようなもの)がネットに出回っている。
 NHKや共同通信、産経新聞などが、ネルフィナビル(エイズ治療薬)とセファランチン(白血球減少・脱毛症薬)が効果を示し、新たな治療薬候補になるとニュースにした。NHKなどは気づかなかったようだが、この論文にはもっと重要なデータが載っている。
これまで言われてきたクロロキン(CLQ)やネルフィナビル、セファランチンなどは薄い濃度で効いてるが、アビガンはこれまで効くとされてきた濃度60μMにしても全然効いてない。中国の臨床試験(RCT)で効果を否定されたカレトラの主成分ロピナビルよりもダメ。アビガン以外の4つは、細胞を傷害する濃度との間に数十倍の差がある。そもそも60μMですら、対インフルの約20倍。細胞を傷害する濃度との倍率があまり大きくない。(μMはμmol/L)
 同様なデータはほかの研究者からも寄せられているという。又聞きだが、ノーベル賞級の第一人者も効かないと言ってるそうだ。
 日本のウイルス学と抗ウイルス薬研究は世界でもトップレベル。彼らが(少なくとも細胞を傷つけないで濃度では)抗ウイルス活性がないと言うなら、おそらくない。
 ただし、抗ウイルス活性以外の理由で、アビガンが効くという可能性は残る。例えば、インターフェロンを活性化しているとか。
 また、感染研が実験に使っているのは、VeroE6/TMPRSS2細胞というアフリカミドリザルの腎臓の細胞なので、人間の肺の細胞を使ったら違う結果になる可能性もゼロではない。
 首相が富士フイルムの社長と仲がいいから忖度で書かなかったとかまたぞろ陰謀論を流す人が出るんだろうな。まともな砦に所属して仕事をしている記者は今の段階では書けなくて当然。しかし、逆に、アビガンをもてはやすような記事を書いて、期待を高めすぎるのは問題だ。
 とりあえず、6月に出る予定の富士フイルム富山化学の臨床試験結果を待つしかない。。もし期待はずれだった場合、反動が大きいだろうね。また、いい結果が出たとしても、ブラインド試験ではないので、意図的でないバイアスや利益相反などを見極めなければならない。
 インフル薬もそうだが、ほっといても9割以上が自然回復するような病気の効果を確かめるのは非常に難しい。重症患者の死亡率を下げる効果があるかどうか、今のところ疑問符だらけ。
https://www.researchgate.net/publication/340714038_Multidrug_treatment_with_nelfinavir_and_cepharanthine_against_COVID-19

アビガンに不都合な点ごまかしてない? 開発者の緊急提言
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/31/9230040

アビガン濃度20倍!にすれば効くかも コロナ 大丈夫か?
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/07/9221674

そりゃ効くよ(試験管内では) コロナの治療法になるかは別問題 評価法の確立が必要
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/26/9218028

タミフルよりアビガンな理由 コロナに効きそうな薬はRNA合成酵素阻害剤
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/22/9216635


訂正 首相とゴルフをしているのは社長ではなく、会長兼CEOでした。

コロナが変異しにくい理由 逆に抗ウイルス薬の効果を妨げないか?2020年04月15日 12:54

 コロナウイルスはインフルエンザウイルスなどと同じRNAウイルスだが、インフルに比べると変異しにくいという。インフルやHIVは時には感染者の体の中にいる間にも変異ウイルスが生まれるほど激しく遺伝子が変わる。その主な原因は、ウイルスのRNAを作る合成酵素「RNAポリメラーゼ」にある。RNAポリメラーゼは、元々のウイルスのRNAをお手本にして、細胞の中にある材料を使い、RNAを作る。ところが、この時、コピーの間違いが多い。そのため、遺伝情報が変わり、新しいウイルスが生まれるのだ。
 人間などの細胞の酵素はこういった間違いを元々犯しにくいが、間違いが生じてもそれを訂正する機能が充実している。長い間、RNAウイルスはこのコピーの間違いを訂正する能力はないと考えられてきた。だが、コロナウイルスは校正機能を持っている。酵素がRNAの間違った部分を削り、正しく作り直すのだ。
 コロナウイルスはRNAウイルスとしては例外的にRNAポリメラーゼのコピー間違いによる変異が起きにくい。ただし、このコピー間違いは変異の非常に重要な原因だが、校正機能のあるなしだけがすべてではないので、人間の細胞や天然痘ウイルスのように極め付けに変異が起きる確率が低いわけではない。
 さて、以前に、アビガンやレムデシビルなどの抗ウイルス薬はRNAの部品によく似た化合物(核酸アナログ)であり、RNAポリメラーゼがRNAの部品と間違えて取り込むことで、RNA合成を妨げられることを説明した。以下の論文には、リバビリンや5FUというやはりRNAの部品によく似た薬剤がコロナウイルスの校正機能によって取り除かれているという結果が出ている。もし、そうならアビガンやレムデシビルも取り除かれてしまう気がするが。それでも、アビガンやレムデシビルは邪魔し続け、コロナのRNA合成を止めるそうだ。

タミフルよりアビガンな理由 コロナに効きそうな薬はRNA合成酵素阻害剤
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/22/9216635

そりゃ効くよ(試験管内では) コロナの治療法になるかは別問題 評価法の確立が必要
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/26/9218028

アビガン濃度20倍!にすれば効くかも コロナ 大丈夫か?
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/07/9221674

コロナウイルスの校正機能の関連論文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23966862

https://www.researchgate.net/publication/256076581_Coronaviruses_Lacking_Exoribonuclease_Activity_Are_Susceptible_to_Lethal_Mutagenesis_Evidence_for_Proofreading_and_Potential_Therapeutics

https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1004342

新型コロナはなぜ肺炎が多いか 高病原性鳥インフルが参考になるのでは2020年04月13日 08:13

 新型コロナウイルス、SARSは風邪のコロナウイルスに比べ、なぜ肺炎を起こしやすいのか。高病原性鳥インフルエンザと普通のインフルの違いの研究が参考になるのではないかと思う。
 HIVは免疫細胞に感染する、肝炎ウイルスは肝細胞に感染するなど、ウイルスの種類によって感染する細胞の種類が違い、起きる病気も変わる。ウイルスは細胞を自分の仲間を増やす部屋として使う。細胞を覆う細胞膜の表面には細胞の種類ごとに決まった鍵穴(リセプター)が突き出ていて、ウイルスも種類によって違った鍵を持っている。自分が鍵を持っている細胞にしか入れないのだ。
 インフルエンザもコロナウイルスも、のど(上気道)にある細胞に感染するが、使っている鍵穴が違う。インフルエンザはシアロ糖鎖という鍵穴、新型コロナウイルスやSARSはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という鍵穴に合う鍵を持っている。
 インフルエンザが使う鍵穴は同じシアロ糖鎖でも2種類あり、季節性インフルエンザと鳥インフルエンザウイルスで違う。季節性インフルエンザが使う鍵穴は人間ののど(上気道)の細胞に多くあり、鳥インフルエンザウイルスが使う鍵穴は鳥ではのどに多くあるが、人間ではのどの奥、肺の方に多くある。そのため、季節性インフルエンザは人間ののどの細胞に感染して増えやすく、くしゃみや咳の症状を起こし、大量のウイルスがばらまかれ、効率よく人から人へうつる。だが、鳥インフルエンザは、人ののどの細胞には感染しにくいので、人から人にうつりにくい。その代わり、のどの奥の方まで入って肺に達すると肺の細胞に感染し、肺炎を起こしやすい。季節性インフルエンザに比べて、高病原性鳥インフルエンザが人には非常に感染しにくいが、鳥との濃厚接触で感染した場合、重い肺炎を起こしやすい理由だ。
 これと同じような事が新型コロナウイルスやSARSでもあるのではないか。これらが感染する鍵穴にもいくつか種類があり、のどから肺にかけての分布が違うとすればどうか。SARSが使う鍵穴は高病原性鳥インフルエンザのように肺に多く、感染は起きにくいが、感染すると肺炎を起こしやすい。これに対し、通常の風邪のコロナウイルスが使う鍵穴はのどの細胞に多く、感染はしやすいが肺炎は起こしにくい。そして、新型コロナウイルスはこの中間の性質なのではないか。SARSほど肺炎を起こしやすいわけではないが、肺でも増え、のどでも増える。今後、新型コロナウイルスやSARSが使う鍵穴ACE2に関する詳しい研究が進めば、その理由がよりはっきりするのではないか。

http://jsv.umin.jp/journal/v56-1pdf/virus56-1_085-090.pdf

HIV薬,コロナに効果無し そりゃそうだろうね2020年04月09日 21:15

 医学誌界の最高峰ニューイングランドジャーナルオブメディシンに、抗HIV薬カレトラは比較試験でコロナに効果がないという論文が載っていた。そりゃ、そうだろう。理屈からいってもプロテアーゼ阻害剤の使い回しは効きそうにない。試験管内実験でもHIVの時の200倍ぐらいの濃度にしないと効かなかった。
 医学・生物の世界で、理屈から言って絶対うまくいきそうと思っても、実際にやるとダメな事は星の数ほどある。だが、理屈から言ってとてもうまくいきそうにないが、やってみたら案外うまくいってビックリなんて事は極めて稀にしかない。

エイズ薬濃度200倍ならコロナに効く?
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/16/9224792

タミフルよりアビガンな理由 コロナに効きそうな薬はRNA合成酵素阻害剤
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/22/9216635

そりゃ効くよ(試験管内では) コロナの治療法になるかは別問題 評価法の確立が必要:
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/26/9218028

In hospitalized adult patients with severe Covid-19, no benefit was observed with lopinavir–ritonavir treatment beyond standard care.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2001282

元患者の血清輸血 ウイルスチェックはしてる USAではね2020年04月08日 15:37

 新型コロナウイルス感染から回復した元患者の血漿を患者に輸血する北里柴三郎の「血清療法」。北里博士の場合は馬など動物の血を使っていたが。以前に、HIVや肝炎の蔓延が怖いと書いたが、少なくともUSAではウイルスチェックをしているようだ。通常の献血並みの安全性は確保されていると。ただ、野戦病院状態の地域で民間療法的に広まると怖い。
 武田が、患者の血液からポリクローナル免疫グロブリンを取り出した血漿分画製剤を開発すると言っている。モノクローナル抗体を開発すると言ってる所もあって、人間の血液を直接使うのではなく、工業的に生産するので、それが一番安全。でも、それをお手頃価格で供給したら、オプジーボなどの抗体医薬は製造コストが高いからどうしても高額になるという言い訳がウソだとバレテしまうから、製薬にとってはうれしくないのでは。

The plasma will be tested to make sure it is not carrying infections like hepatitis or H.I.V., or certain proteins that could set off immune reactions in the recipient.
https://www.nytimes.com/2020/03/26/health/plasma-coronavirus-treatment.html

感染者の血を使う 新型コロナウイルス治療法に関する話3
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/04/02/9230610

NBA選手も協力 新型コロナ回復者の血液、治療に?
asahi.com/articles/ASN474RP6N47UHBI018.html?iref=comtop_list_int_n02

エボラはコウモリと仲良し? ウイルスは病気を起こすためにいるのではない(2)2020年04月05日 15:00

 「ウイルスは宿主が死んだら自分も死ぬのに、なぜエボラのような人を死に至らしめるウイルスが生まれるのか?」。こんな質問を受ける。
 近年問題になっているHIV、エボラ、SARS、MERSなど人を殺す新興感染症のウイルスには共通点がある。もともと野生動物の自然宿主がいるとされ、最近、人類に感染したウイルスなのだ。HIVはアフリカのサルから、エボラはフルーツコウモリからと考えられている。これらのウイルスは、おそらく、本来の宿主を殺すことがほとんどなく、病気にもさせないのだろう。何しろ野生だから軽症でも病気なんかになったら直ちに命の危険がある。ウイルスの生存戦略として、宿主はなるべく元気でいて、子孫をたくさん作ってもらわねばならない。
 では、なぜ、これらのウイルスは人を殺してしまうのか。死因は主に2つある。
1)感染した細胞を破壊する、感染細胞を暴走させて周囲の組織が破壊されるなどウイルスそのものの作用。
2)ウイルスを排除、破壊しようとする免疫反応が過剰に働き過ぎて、その負担によって体が壊れてしまう
 HIVは免疫細胞を壊し、インフルやSARSは繊毛細胞を壊す。しかし、炎症は感染した細胞ごとウイルスを葬り去ろうという免疫の反応で起こる。エボラウイルスもそれ自体出血の原因になるが、意外にも下痢による脱水症状で死ぬ事が多いという。
 長年、自然宿主と共存共栄しているウイルスは、自分の増殖と宿主の免疫反応とのバランスをうまく取るよう進化しているのだと思う。感染細胞が壊れてしまうほど急激に増えすぎないようにし、免疫に目を付けられないよううまくごまかす方法も身につけているのだろう。ところが、不幸な事故で、快適なアパートから人間の体に引っ越しさせられる。すると、水道の蛇口の開け閉めが上下どっちなのかなどいちいち勝手が違う。つい増殖しすぎて、ウイルスを排除しようとする免疫の嵐(高熱、炎症、せき、くしゃみ、鼻水、下痢など)を引き起こしてしまう。

ウイルスは病気を起こすためにいるのではない(1) 風土病から学んだこと
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/04/04/9231410

感染者の血を使う 新型コロナウイルス治療法に関する話32020年04月02日 01:01

 中国では、新型コロナウイルスに感染して回復した人の血液から上澄みの血清を取って患者に投与するという治療法が使われている。これって、130年前に北里柴三郎がウサギやネズミで開発した方法だ。

◆血清にウイルスや毒を中和する成分

 人は、はしかなどのウイルスにかかって病気になると二度と同じ病気にはかからない。また、王家の跡継ぎなどは幼い頃から少しずつ毒を飲ませることで、毒への抵抗力を付けるという育て方がある。北里博士は、これらの現象は病原体や毒にさらされることで体内にそれらを中和する物質ができるからだと考えた。そして、破傷風の毒素を使ってそれを証明した。
 死なない程度に薄めた破傷風の毒素をウサギに注射する。徐々に濃度を濃くして、注射を繰り返す。すると、ウサギは致死量の毒素を注射しても死ななくなる。死ななくなったウサギの血清を取ってネズミに注射すると、ウサギの血清を注射されたネズミも毒素で死ななくなる。この毒を中和する物質を抗毒素と名付けた。現代の免疫学でいうところの抗体だ。抗毒素は血清の中にあり、血清をほかの動物に移すことで、抗毒素も移り、毒への抵抗力も伝わることを証明したのだ。この方法は蛇毒血清療法として、馬の血で作った血清がハブにかまれた人の治療などに現在でも使われている。

◆効果は期待できるが、ほかのウイルスに感染の危険

 新型コロナウイルスに感染し、回復した人の血清の中には、新型コロナウイルスを中和する抗体が含まれている。これを患者に注射すれば、新型コロナウイルスを倒せるかもしれない(理屈ではうまく行くはずでも臨床試験で調べないと分からないのが生きものや医療の常)。問題は、輸血と同じでウイルスチェックをしっかりやらないとHIVや肝炎ウイルスなどほかの感染症の蔓延につながる可能性があることだ。すべての病原体をチェックできるわけではないからリスクは必ずある。
 武田薬品が回復患者の血液から抗体(ポリクローナル免疫グロブリン)だけを取り出す血漿分画製剤の開発を進めている。こちらの方が血清そのままより安全性が高いが、万全ではない。
 新型コロナウイルスに強く効く抗体単体だけを作り出す方法もあるが、これはオプジーボなどのようにとんでもない高額になるので、実用化はありえない。

抗ウイルス薬なぜ使い回すか 新型コロナウイルス治療法に関する話1
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/23/9227548

ワクチン効果期待も,間に合わない 新型インフル如き迅速投入は無理 新型コロナウイルス治療法に関する話2
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/30/9229681