財務次官突然反抗 人事で脅す手法はもう無理2021年10月12日 12:41

次官突然反抗 人事で脅す手法はもう無理
 ある会社のある有力部出身の元社長は、部長時代から相手がどんな小物でも自分の悪口を言った部下、後輩の事を絶対忘れず、後で必ず報復すると言われていた。菅氏が総務相、官房長官当時、自分が不在の会議で意に沿わない発言をした課長を更迭したり、肝いりのふるさと納税制度の欠陥を指摘した局長を自治大に飛ばしたりしたのとよく似ている。そんな社長が去った後、突然、その出身部の系統の中堅どころが勇ましく会社批判、社長批判を始めた。その批判対象の案件には前社長の負の遺産がかなり含まれていた。「おまえらさあ、何で前の社長の時に言わなかったんだよ。君らの部のボスだった人だろうが」と思ったものだ。
 さて、安倍・菅政権が終わったとたん、次官の反乱。安倍首相・菅官房長官で10兆円の財政出動を決めたときに言わず、なぜ今なのか。かつての栗栖防衛次官のように「もう辞めてもいい」と思って言いたいことを書いてるのか。それとも、今ここで更迭したら安倍・菅と何も変わってないと強烈に印象づけるので手が出せないと高をくくっているのか。どっちだろうか。
 いずれにせよ、霞が関の官僚を人事で脅して異論を封じ、言いなりにさせるという手法は、コロナの科学者反乱で破綻が見えてしまったので、もう無理だろう。

◆財務次官の寄稿、波紋 与野党の政策論争「バラマキ合戦」
https://digital.asahi.com/articles/ASPBC6GZVPBCULFA00H.html

砦のない自分を見つめてみたら 良記事書き過ぎ上司の嫉妬で左遷の天才記者達に(2)2020年03月26日 22:28

 故・野沢尚の「砦なき者」という小説がある。テレビ局という砦に守られているからこそ大きなことができる報道番組のディレクターに、砦なき者・無名の青年が殺人というゲームで挑戦する(ぜひ、読んでみてほしい)。
 新聞もテレビも砦としては同じようなものだ。400字詰め原稿用紙2枚分ぐらいの記事が何百万PVという数字をたたき出す。ネット企業と組んだ企画だと数十本の記事で、何千万PVも稼ぐ。こういった数字に社員ライターたちは麻痺してしまっている。この恐ろしいPVの99.9%は砦の力によるものだ。残りの0.1%は、実現は難しそうだがダメモトで頼んでみたら幸運にも取材できてしまったファクトの強さなどだろう。
 ネットにある小説で、「6万PV突破ありがとうございます」「20万PVありがとうございます」といった作者の書き込みを見かけることがある。内容は結構おもしろく、才能のある人たちだ。そんな彼らが新聞で言えば100行の原稿500本分ぐらいの文字数を書いて、ようやく稼げる数万PV、10数万PVなのだ。
 それを砦に支えられた記者は半年前に書いたわずか50行の記事でやすやすと超えてしまう。
 では、砦のない自分はどれほどのものなのか。
 私は夏休みに試してみたことがある。誰も知らないペンネームを使い、会社員であることによって得た知識をいっさい使わず、SFやマンガ、アニメなど子どもの頃からの趣味による知識のみを元手に、100行の原稿50本分ぐらいの字数を書いて、1カ月余りで稼げたPVはどれぐらいだったか。
 大体、5000PVぐらい。ブックマークに登録しているユーザーはおそらく7、8人、継続的に読んでいる人は十数人だろう。ネットでは全くアクセスのないケースだってあり、これは多い方だと思う。意図したわけではないのだが、ネットでは非常に注目されやすいネタだったからだ。
 しかし、砦の力を一切借りない、このたった十数人やわずか5000PVが実に重かったり、プレッシャーだったりする。
 「優良記事を書きすぎて、上司からの嫉妬で左遷させられた」天才記者さんの皆さんも、たまには「砦のない自分はどれほどのものなのか」と見つめてみないと何かを見失うのではないだろうか。

良記事書き過ぎ上司の嫉妬で左遷の天才記者達に一言
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/25/9228001

良記事書き過ぎ上司の嫉妬で左遷の天才記者達に一言2020年03月25日 12:26

 星新一賞が発表された。子どもの頃読みふけった星新一のショートショートを思い出す。おそらく当時手に入るほとんどすべてを読破したはず。いろいろな世代の人間を見ていてよみがえるのは「海のハープ」という作品。
<女性の主人公が海でハープを拾います。おそらくアフロディテのような女神の魔法のハープで、それを奏でると、周囲にいる男性がこぞって貢ぎ物を持ちプロポーズに訪れます。才能や魅力にあふれた世界中の男性が寄ってくるので、最初のうちは有頂天でした。しかし、演奏をやめるとみな何事もなかったかのように我に返り、
去っていきます。「ハープの魔法の力に誘われているだけで、この人たちは自分に何の魅力も感じてないんだ」と虚しくなります。そして、あるとき、ハープを止めても残っている男性が現れました。「なぜ帰らないのか」問うと、「ずっとそばにいたいから」と答えます。もう必要がないと2人でハープを海に返しに行きます>
(記憶なので、デテールはかなり違うかもしれない)。

 小学生のころの私にはこの隠喩がわからなかった。人はそれぞれ才能や地位や財産などいろいろな種類のハープを持っている。そして、しばしばハープの魔力を自分自身の魅力だとかんちがいしがちだと。
 大企業の部長だった人が定年になったとたん何百枚と来ていた年賀状が激減し、ショックを受けたというエピソードを何かで読んだことがある。これも部長の肩書というハープの魅力に吸い寄せられて年賀状が来ていることに気づかなかったと言える。
 さて、昔ほどの絶大な神通力は失せたといっても、大手マスメディアの名刺はいまだに相当に強力な魔力を持つハープ。
 右も左もわからない新人のころはあまりないかもしれないが、いつのまにか、このハープの力を自分自身の魅力とかんちがいしないよう、常にどこかで意識していてほしいものだ。また、ハープがなくても残ってくれる人が一体どれほどいるのかということも。

1社員にくっついて騒ぐドルオタみたいな人たち どのアナか聞かないで 実在ではないので2020年03月20日 19:16

 一般にも馴染みのある職業、テレビ局のアナウンサーを例にしてちょっと例え話をしようと思う。
 誰でも知っているというほどではないが、地下アイドルのように非常に熱心で強いファン(ドルオタというらしい)が付いているアナウンサーがいたとしよう。そのアナウンサーは、日頃、「出世は一切しなくていいので、一生、現場のアナウンサーをさせて下さい」と上司や周囲に言っていたという。ところが、定期異動でテレビに映るアナウンサーではなく、同じ放送局内の裏方的な仕事に移る事が決まった。
 で、そのアナウンサーは実名と社名を名乗っているSNSに今回の人事への不満を書き込んだ。その投稿を見たファンたちが異動撤回の署名活動を開始。「左遷しないで」「○○ちゃんをテレビに出さないんだったら、もうおたくのテレビ番組は見ない」とテレビ局に嘆願や抗議の電話をかけ、メールを出した。集めた署名を送ってくるファンもいた。本人はファンたちをなだめるどころか、さらにあおるような動画やコメントで燃料投下。
 さて、この「事件」。どこから突っ込んだらいいものやら。

1)将来、社長や重役になりたいと思ってテレビ局のアナウンサー試験を受ける人はいない。「部長にも社長にもならなくていいから、一生、テレビに映るアナウンサーをやりたい」。アナウンサーなら誰でも思っているような事を何か特別な事のように言われても困る。
2)局アナは会社員。会社員であれば必ず定期的に異動がある。特に、東京で全国ネットの番組のアナウンサーをしたいというのは希望者が多い人気の職。1人だけ特別扱いしてずっと同じ場所に居続けることなど出来ない。
3)組織の人事が、嘆願書や署名活動で変更されることはあり得ない。そんなことを1回でも受け入れたら、署名を10万人分集めたアナウンサーなら異動しないですむといった前例になり、組織が崩壊する。
4)表に出るアナウンサーの仕事に対し、それを支える裏方の仕事を左遷というのは異動先に失礼。表で華々しく見える仕事だけが重要な仕事というのは思い上がりも甚だしい。
5)組織の評価は、目に見える、華々しく目立つ仕事だけを採点するのではない。例えば、後輩をよく指導しているか、自分が目立てなくても新人がいい仕事をできるようにサポートしているかなども重要な評価の基準。自分ばかり視聴者受けのいい仕事をして、面倒でポイント稼ぎにつながらない仕事は後輩に行かせる(私の知人は「掛け捨て保険」と呼んでます)ような社員はどんなに本人が楽しく活躍していても、組織内での評価は低い。そういう思い違い(なぜ自分の評価は低いか)を自覚させるためにも裏方の仕事を経験する事は本人にとって重要な事。

 さて、ファンたちに「これは左遷ではありません」と説明しても、「別に左遷だとは言っていない。別な地域、例えば関西に異動させてアナウンサーを続けさせる異動なら分かる。ファンが多くて視聴率を稼げるアナウンサーをアナウンサーからはずすのは勿体なくないか。なぜこういう人材を大事にしないのか」
「どうして、異動させる事が大事にしない事になるのか。左遷とは言ってないというが左遷だと言ったのと同じではないか。違う仕事を経験する事が本人の成長につながり、本人のためになる」
 本人が一生、自分の好きな仕事だけ続け、それを支えている裏方の仕事について何も知らない事が本人のためになると本気で思っているのか。なんでも、弱者に寄り添う姿勢が人気だったそうだが、今回の件で、異動先の職場の人たちが傷ついている事には本人もファンも全く気づいていないし、気にもしていない。そういう人物がこのまま続けて、本当の意味で弱者に寄り添えるのだろうか。
 そりゃあね、夏目漱石とか石川啄木とか、日本が誇るような天才が社員だったら、そりゃあ、自分の好きな事だけやらせておくかもしれない。会社にいるだけですごいんだから。でも、そこまでの天才だったら会社を辞めて仕事をする。

同級生の死に許せなかった新聞記事2019年03月01日 12:26

 3月1日は同級生の命日です。高校3年のこの日、M君は教室で首を吊っているのを登校した生徒に発見されました。受験シーズン真っ最中の事もあり、新聞などが多く取り上げました。
 そんな中、社会面に大きく取り上げたある新聞記事に引っかかりました。

「昨年5月の文化祭では、引き受け手の少ない実行委員長に自ら立候補して選ばれた」

 一体、誰にどんな取材をしたら、こんなデタラメが書けるのか。新聞社に抗議の電話をかけようとしましたが、周囲に止められました。確かに餌食になるだけでしょう。

 文化祭は我が母校で多くの生徒が最も熱を入れる行事です。何年か前に不祥事で秋の運動会が中止になった際は、翌春の文化祭で「不祥事の歴史展」が開かれるほどの盛り上がりよう。
 
 実行委員長は前年に複数の高校1年が立候補し、中学生を含む全校投票で選ばれるのが慣例です。翌年高2になる実行委員長を中心に様々な委員会がつくられ、外部のスポンサーとの交渉、予算の執行などすべてを中高生だけでやります。
 さて、文実委員長は高1が立候補するのが慣例だったのですが、我々の学年の1、2年前から春に一度文化祭を終えた高2からも立候補が出るようになりました。また、我々の年には1学年下の中3からも出た気がします。ほかの学年が出てはいけないという規約はありません。で、我々の年は通常通り、同級生が当選し、翌年の高2の春の実行委員長になりました。
 そして、その高2の文化祭が終わり、次の文化祭の実行委員長選挙に、高1の候補2人とともに、高2で立候補したのがM君でした。
 そして、高1の票は真っ二つに割れたのに比べ、我々高2の票はほぼすべて同学年のM君に入り、史上初めて高2のM君が当選しました。おそらく初めて、高3になる生徒が実行委員長になるのです。
 母校にとって、全校投票は神聖なもので、ブレグジットと同じでやり直しはありません。文化祭に限らず、全校投票で決まったことは規約よりも優先するという決まりがあります。生徒の自由を奪う校則を作り、不正を働いた理事長を学園紛争で追放した歴史があり、生徒に無断で勝手な校則を作れないよう定められたルールです。
 その選挙が終わってからというのもの、毎日のように高1の一団が高2のM君の教室に押しかけ、M君をつるし上げていました。母校は良い意味でも悪い意味でも実力主義で、先に生まれた人間がエラいという考えは全くありません。結局、一学年下の候補だった1人が実行委員会室に乗り込んで実権を握ったと聞きました。
 とはいえ、文実の下部の各委員会の長は一部我々の学年も入るなど、翌年の文実は高2、高3の混成となりました。
 文化祭の時には結構金をかけたいい材質のプログラムを作るのですが、その中には1学年下の文実委員らによる恨みつらみが書き連ねてありました。「選挙結果を見た瞬間、俺たちの文化祭は終わったと思った」とか「文化祭実行委員長(M君のこと)が実行委員室のただの掃除係に過ぎない存在になってしまった」とか。
 彼らにとって、真の意味での自分らが担う文化祭が消失したことは、青春のトラウマになるほどの出来事だったのです。あまり、文実に興味のなかった私でもそれはわかります。

 それを「引き受け手の少ない実行委員長」と一言で片付けた記者は本当に取材したんでしょうか?
「進学校の文化祭実行委員長なんてどうせ誰も引き受けたがらないだろう」という先入観と勝手な思い込みだけで書いたんじゃなかろうかと。

天声人語が卑怯な技を使っていいのか2019年01月20日 11:47

 天声人語は大学受験をする高校生のための物で、大人の読むような物ではないと思っている。で、かなりしばらくぶりに読んだらひっかかった。
 テーマはJOC疑惑。「復讐は冷まして食べる料理だ」とフランスの諺を引き合いに出し、ゴーン疑惑の意趣返しかと続け、<一瞬、そんな疑念もよぎってしまったが、「江戸の敵を長崎で」式の単純な話ではあるまい>

 「意趣返しかもしれない」と思った人はたくさんいるだろう。私も思った。思うのは自由である。また、無責任なネットの書き込みなら、単なる思い込みを書き散らかすのも自由だ。
 だが、「意趣返しかもしれない」と思った時、頭に浮かんだのは、もし、そういう推測を書くとしたら、「フランスの司法当局が調査に着手したのはいつごろなのか」「竹田会長の聴取はいつごろから計画されていたのか」「ゴーン逮捕後に、捜査の方針変更などがあったのか」などの状況証拠をある程度確かめなければならないな、ということだ。
 社会人1年生だったころ、上司からよく叱られた。「コラムだからって、自分が思ったことを何でも書いていいということはないんだぞ」。たとえ、署名の入ったコラムであっても、調べた事実に基づいて書かなければならない。根拠のない推測や印象をそのまま書けばすむというものではない。
 諺まで使って「敵をとるならじっくり策を練ってからと教える」とあおるような事を書いておきながら、裏付けも取らず、「単純な話ではあるまい」と逃げるのはサボリだ。社内メールで、「(上司の)○○さんが◇◇という噂を聞いたけど、まさかそんなことはないですよね」と質問形式で悪口をばらまく手法があるが、それと同じ。
 天声人語は高校生の文章のお手本として入試に出る。新聞の表表紙を飾る看板として横綱相撲を見せる義務がある。高校生にこんな姑息な手法を教えてはいけない。

社内メールの上司の悪口で失敗しない法4 善意の天然君へのメールにジョークは禁物2018年12月03日 09:07

 前回の3で、同報メールに返信する際、元のメールに登場する人物(大抵、上司)を宛先に加えてしまう、しかも、元のメールを全文引用してしまう、天然君のエピソードを紹介した。以前にも同僚が別な天然君から同じ被害に遭っているのを見たことがある。別人だが、どちらも悪気という物がない、善意の塊のような人物という共通点がある。
 そして、善意の人ほど困るのだ。自分の中に悪意がないから、他人のメールの中などにはある悪意の存在に鈍感。同僚が上司についてあれこれ書いてきたメールをそのまま引用し、全員+上司を加えて返信してしまう。
 悪意のある人はそういうことをしない。悪意を持って告げ口をするような人間だと思われてしまうのは、自分にとってマイナスだとかそういう計算をするからだ。また、仮にする人がいたとしても、悪意のある人間のそのような返信や転送は何かよからぬ意図があるのだろうと相手を警戒させ、額面通りには受け取られない。
 ところが、悪気のない人とみんなから認められているような人間の天然返信は、その元メールで槍玉に挙がっている本人(大抵、上司)にショックを与える。それは部下たちの自然な本音に違いないからだ。

 さて、以前にこの天然返信被害にあった同僚、そのことに気づいていなかった。その引用返信されたメールは、ある次長にある提案をしたが、自分の出る幕ではないようなので、早々に引き下がりました、みたいな内容だった。その返信の宛先に当の次長が加えられていた。で、親切な私は「あの返信、そのまま次長にも行ってるけど大丈夫なの」と教えてあげたら、「えっ」と顔色が変わった。
「やばいことは書いてないと思うんですけど、あの内容なら大丈夫ですよね」
「ぼくから見たら全然問題のない内容だと思うけど。ただね、我々下々の者と、上の人間は感じ方が違うんだ。上司というものは、部下がふだん自分についてどんな噂をしているかに関して全く免疫がないから、その原文を目の当たりにすると、我々には信じられないぐらいショックを受けるもんなんだよ」
 ほんと、この程度でそんなにショックなら、もっとすごいことを言われているのに、あれを見たら死んじゃうんじゃないかってぐらいに。

 だから、人が良い天然君への業務メールにはジョークや誰かを揶揄するような余談を付け加えてはいけない。

社内メールの上司の悪口で失敗しない法3 悪意のないド天然ほど怖い物はない2018年12月03日 00:36

 1で、電子メールのカクテルパーティー効果、2で、その対策としての暗号化について書いた。これは、あくまでも悪気のある同僚間での意地悪なメールで成り立つ話だ。そこにうっかり悪意のない天然君が混ざってしまうと話はややこしい。

 これは最近のエピソードだ。
 私のいる大阪の事業所と東京で毎年分担してやっている、重要だが非常にややこしい面倒な業務がある。
今年、東京の方の担当は、T次長、若手のA君、新人のB君だった。今春の異動で来たばかりのB君は初めてやる仕事内容なので勝手が分かっていない。そんなB君から電話で問い合わせが来た。だが、なんか話がかみ合わない。
 話しているうちに、どうやらB君は毎年大阪が分担している分も自分がやると思い込んでいるようだと分かった。

 そして、B君の先輩のA君から「私の指示があやふやでB君に勘違いさせ、申し訳ありません」と謝罪のメールがB君など数人宛ての同報メールで来た。
 業務メールにも潤いやウィットが必要と常々思っているので、こう返信した。

「一瞬だけ、"今年は大阪の分も東京でやる方針なのか、ラッキー"とぬか喜びしかかりましたが、頼んでもいないのに、そんな自分たちの負担がめちゃめちゃ増えることを自ら進んで決めるはずがないかと。特にT次長は」

 すると、A君、重ねて同報メールで謝罪を返信してきたのだが、私のメールを全文引用したまま、その宛先に新たに当のT次長を加えてしまっていた。
関係部署にイニシャルTの次長は4人居るが、文脈から誰のことか明らか。

で、私は返信。

タイトル ・・・・
「T次長は」と書いてあるメールに、元文を残したまま返信する時に、宛先にT次長を加えちゃダメ

社内メールの上司の悪口で失敗しない法2 暗号化とカギ2018年12月02日 01:19

 前回、例えば、同僚の蒼井優(仮名)が離婚したことを「AOUがフリーラジカルになった」とメールすれば、万一、送り先の相手以外に見られても内容を隠せると書いた。しかし、暗号化し過ぎるとメールの送信相手にも意味が分からない。
 で、どうするか。
暗号にはカギがある。暗号を解くカギを共有すればいいのだ。
 カギとは暗号の用語集、対照表だ。これをあらかじめ送っておけばいい。言わずもがなだが、絶対に暗号本文とカギを一緒に送ってはいけない。別々に送ることで、2つのメールを同時に見られない限り、内容を悟られる心配はない。
 例えば、内田さん(仮名)という先輩がいた。この人、ドクターコースまで終了した高学歴(ただし、博士号は取れなかったらしい)で、U Ultmate Doctor(アルティメット・ドクター)の略でuudと暗号化した。それでも暗号化し足りなくて、uudはアップクオーク2個、ダウンクオーク1個からなる粒子「陽子」のことなので、陽子とかprotonと書いていた。で、なぜプロトンなのか理由を書いた対照表を共有しておき、新たなメンバー(何の結社じゃ)にも送った。プロトンがどうのと主語だけでなく、動詞も置き換えれば、もう物理や化学の議論をしているようにしか見えない。
 私も同僚たちも理系で何かそれ系の例えが多いが、まあ、共通の趣味に絡んだ暗号化すれば、なおさら第三者には解読しにくくなる。

社内メールの上司の悪口で失敗しない法1 カクテルパーティー効果2018年12月01日 13:43

 立食パーティーでいろいろなグループの話し声が重なっていると内容が分からない。だが、その雑音のような話題の中に「かじヤンがさあ」と自分の名前が混ざるとそこだけははっきり聞こえる。これを心理学用語で「カクテルパーティー効果」という。
 そして、このカクテルパーティー効果がメールでも起きることを私は発見した。
以前の上司に市川さん(仮名)という人がいた。この人、家族の正月旅行で安いからといって海水浴場の民宿に行くなど度を超した節約家で有名だった。また、デジタルマナーを身につけていない年配者にありがちで、他人の背後から他人のパソコン画面をのぞき込む癖があった。
 で、その市川さんがある同僚の後ろでパソコンをのぞき込んでいる時、その同僚が無意識に私から来たメールを開いた。
 そのメールの文面の中に「ケチ川さんが」というフレーズがあった。
その瞬間、市川さんは「このケチ川というのは俺のことか」。
 ほかに誰が居るんだと突っ込みたいが、往々にして人は周りから見れば当然のことをあり得ないぐらい自己認識できてない場合が多い。いつも自慢そうに自らのケチ話を吹聴して周り、自分がケチであることを誇りに思っているようにしか見えなかったのだが。
 と、このように、非常に長文なメールであっても、人は「自分の名前」や「自分の名前を意味すると明らかな文字列」が含まれていると直ちに見つけてしまう。視覚のカクテルパーティー効果だ。
 他人のパソコン画面をのぞき込むような無礼な人はあまりいないだろうが、起動しっぱなしで放置してあるパソコン画面がたまたま目に入ってしまうことはあるのだ。
 そこで、社内メールの上司の悪口で失敗しない法の第1歩は、個人名のマスキングだ。要するに名前の暗号化。
市川さんをケチ川さんに置き換えても誰にでも分かるので全く意味がない。
 有効で簡単なのはアルファベット化だ。例えば、原敬(仮名)という人がいたとする。おそらく、ハラケイと呼ばれているだろう。当然、ハラケイと書けばすぐ見つかる。そこで、HRKと書くのだ。
 この方法、私の同僚が使っていたものだが、このブログのせいで世の中に広まらないうちは相当効果があるだろう。
 この方法は、メールの送り先を間違えてしまった時や誤って転送してしまった時などの被害を防ぐのにも役に立つ。しかし、HRKなど主語を暗号にしても、「HRKが○○した」という動詞の方で内容を悟られてしまう可能性はある。
 そこで、動詞の方まで暗号化してみたことがある。
あびる優(仮名)という後輩が離婚したことを話題にするのに、「ABUがフリーラジカルになったって」と同僚に書いて送った。フリーラジカルというのは、原子2個からなる分子の結合の手が切れて、単体の原子になった状態だ。分子になっている原子に比べ、非常に肉食状態で、ほかの分子を襲って、無理やりパートナーとなる原子を奪い、結合したりする。ABUの略奪婚な体質も暗示していたのだ。
 だが、その同僚に会った時、「この間のメールは意味がまったくわかりません」と言われ、口頭で説明する羽目になった。暗号化し過ぎは第三者にバレない利点があるが、相手にも伝わらない欠点と諸刃の剣なのだ。
 そこで、どうするかは次回に続く。