ウイルスは病気を起こすためにいるのではない(1) 風土病から学んだこと2020年04月04日 12:27

 米大学の予言は面白いが、安藤さんのウイルス観が古くさいのが気になった。
「新型コロナ感染症の致死率はSARSなどよりもはるかに低いとみられるが、次にパンデミックを引き起こすウイルスも同じとは限らない。もっとずる賢く、より多くの命を襲うかもしれない」
 「もっとずる賢く」。これではまるでウイルスがより多くの人を殺すことを存在意義として目標に掲げているかのようだ。ウイルス学は病気の研究から始まり、病気を起こすウイルスばかり注目される。だが、本当は病気を起こさないウイルスの方が多いはずなのだ。
 福島にいた時、野兎病(やとびょう)という耳慣れない細菌性感染症の研究者に会った。ダニを介して、野ウサギやネズミなどの動物に感染する病気だ。感染力が強く、ダニにかまれたり、ウサギを捌いたりすることで人間にもうつる。研究者はこんな事を言った。「野兎病菌はダニの中で平穏に暮らしている。ダニが人間をかむことで、ダニから人間にうつることは野兎病菌にとっても不幸な交通事故のようなものなんです」。目から鱗だった。
 そして、京都大ウイルス研でも同じような話を聞いた。例えば、日本脳炎のウイルスは蚊の中でうまく暮らしているが、蚊が人間を刺して人間の中に入ってしまうと、ウイルスにとってもバッドエンド。仲間を増やすことも出来ないまま、人間もろとも共倒れで死滅する。ウイルスは細胞に感染しないと仲間を増やせない。間借りしている家を何も好き好んで壊して回る理由はないのだ。

コロナの「予言」生きず 米大学が2年前に報告書
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57137930T20C20A3EA1000/