エボラはコウモリと仲良し? ウイルスは病気を起こすためにいるのではない(2)2020年04月05日 15:00

 「ウイルスは宿主が死んだら自分も死ぬのに、なぜエボラのような人を死に至らしめるウイルスが生まれるのか?」。こんな質問を受ける。
 近年問題になっているHIV、エボラ、SARS、MERSなど人を殺す新興感染症のウイルスには共通点がある。もともと野生動物の自然宿主がいるとされ、最近、人類に感染したウイルスなのだ。HIVはアフリカのサルから、エボラはフルーツコウモリからと考えられている。これらのウイルスは、おそらく、本来の宿主を殺すことがほとんどなく、病気にもさせないのだろう。何しろ野生だから軽症でも病気なんかになったら直ちに命の危険がある。ウイルスの生存戦略として、宿主はなるべく元気でいて、子孫をたくさん作ってもらわねばならない。
 では、なぜ、これらのウイルスは人を殺してしまうのか。死因は主に2つある。
1)感染した細胞を破壊する、感染細胞を暴走させて周囲の組織が破壊されるなどウイルスそのものの作用。
2)ウイルスを排除、破壊しようとする免疫反応が過剰に働き過ぎて、その負担によって体が壊れてしまう
 HIVは免疫細胞を壊し、インフルやSARSは繊毛細胞を壊す。しかし、炎症は感染した細胞ごとウイルスを葬り去ろうという免疫の反応で起こる。エボラウイルスもそれ自体出血の原因になるが、意外にも下痢による脱水症状で死ぬ事が多いという。
 長年、自然宿主と共存共栄しているウイルスは、自分の増殖と宿主の免疫反応とのバランスをうまく取るよう進化しているのだと思う。感染細胞が壊れてしまうほど急激に増えすぎないようにし、免疫に目を付けられないよううまくごまかす方法も身につけているのだろう。ところが、不幸な事故で、快適なアパートから人間の体に引っ越しさせられる。すると、水道の蛇口の開け閉めが上下どっちなのかなどいちいち勝手が違う。つい増殖しすぎて、ウイルスを排除しようとする免疫の嵐(高熱、炎症、せき、くしゃみ、鼻水、下痢など)を引き起こしてしまう。

ウイルスは病気を起こすためにいるのではない(1) 風土病から学んだこと
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