新型コロナはなぜ肺炎が多いか 高病原性鳥インフルが参考になるのでは2020年04月13日 08:13

 新型コロナウイルス、SARSは風邪のコロナウイルスに比べ、なぜ肺炎を起こしやすいのか。高病原性鳥インフルエンザと普通のインフルの違いの研究が参考になるのではないかと思う。
 HIVは免疫細胞に感染する、肝炎ウイルスは肝細胞に感染するなど、ウイルスの種類によって感染する細胞の種類が違い、起きる病気も変わる。ウイルスは細胞を自分の仲間を増やす部屋として使う。細胞を覆う細胞膜の表面には細胞の種類ごとに決まった鍵穴(リセプター)が突き出ていて、ウイルスも種類によって違った鍵を持っている。自分が鍵を持っている細胞にしか入れないのだ。
 インフルエンザもコロナウイルスも、のど(上気道)にある細胞に感染するが、使っている鍵穴が違う。インフルエンザはシアロ糖鎖という鍵穴、新型コロナウイルスやSARSはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という鍵穴に合う鍵を持っている。
 インフルエンザが使う鍵穴は同じシアロ糖鎖でも2種類あり、季節性インフルエンザと鳥インフルエンザウイルスで違う。季節性インフルエンザが使う鍵穴は人間ののど(上気道)の細胞に多くあり、鳥インフルエンザウイルスが使う鍵穴は鳥ではのどに多くあるが、人間ではのどの奥、肺の方に多くある。そのため、季節性インフルエンザは人間ののどの細胞に感染して増えやすく、くしゃみや咳の症状を起こし、大量のウイルスがばらまかれ、効率よく人から人へうつる。だが、鳥インフルエンザは、人ののどの細胞には感染しにくいので、人から人にうつりにくい。その代わり、のどの奥の方まで入って肺に達すると肺の細胞に感染し、肺炎を起こしやすい。季節性インフルエンザに比べて、高病原性鳥インフルエンザが人には非常に感染しにくいが、鳥との濃厚接触で感染した場合、重い肺炎を起こしやすい理由だ。
 これと同じような事が新型コロナウイルスやSARSでもあるのではないか。これらが感染する鍵穴にもいくつか種類があり、のどから肺にかけての分布が違うとすればどうか。SARSが使う鍵穴は高病原性鳥インフルエンザのように肺に多く、感染は起きにくいが、感染すると肺炎を起こしやすい。これに対し、通常の風邪のコロナウイルスが使う鍵穴はのどの細胞に多く、感染はしやすいが肺炎は起こしにくい。そして、新型コロナウイルスはこの中間の性質なのではないか。SARSほど肺炎を起こしやすいわけではないが、肺でも増え、のどでも増える。今後、新型コロナウイルスやSARSが使う鍵穴ACE2に関する詳しい研究が進めば、その理由がよりはっきりするのではないか。

http://jsv.umin.jp/journal/v56-1pdf/virus56-1_085-090.pdf