雫石事故の真犯人 犠牲者162人の空中衝突で裁かれるべきは誰だったか 最後の社会部記者鍛治壮一 ― 2020年03月15日 11:16
前回の「機関銃がない」
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/08/9222005
に続く雫石空中衝突事故の話
書けなかったこと書きたいこと(鍛治壮一)
雫石事故のショック(その2)
◆空中衝突を予告した報告書
雫石事故の起こる5ヶ月半前の71年(昭和46年)2月15日に航空幕僚監部の監察官、鈴木瞭五郎空将補は「飛行安全特定監察報告」を空幕長に提出した。ニアミス防止のため、その前の1年間をかけ、全国の航空部隊で実態調査をし、その対策をどうするかをまとめた分厚い報告書だった。空幕内で、さらに検討したあと、4月に中曽根康弘防衛庁長官に空幕長と監察官が説明した。いまのように資料をパソコンに入力して投影するわけにはいかないから、紙芝居の4倍ぐらいの大きなチャートを何枚も作って大臣に分かりやすく説明。その2週間後に、全く同じ内容を防衛庁記者クラブにも監察官がレクチャーした。
航空自衛隊のパイロットの多くが、ニアミスや、それに近い“ヒヤリ・ハット”を体験していること。ニアミス防止のため空域をもっと有効安全に使いたい。具体的には、空域を平面的に分けるだけでなく、時間差、高度差を設ける。訓練空域へ行くためのコリドー(回廊)を設置することなどが細かく報告されていた。「その実現のため空幕の防衛部などが運輸省航空局の担当者と折衝してきたが、進展しない。防衛庁と運輸省の事務担当者同士の話し合いのテーマではない。大臣同士とか、政府そのものの判断によって、ニアミス防止の具体的な方策をやっていただきたい」という趣旨である。報告書は「このままでは異常接近(ニアミス)にとどまらず、空中衝突の危険もある」と結んでいた。
しかし、鳴りもの入りで大臣に就任した中曽根長官は、何もしなかった。空幕長室の近くにあった空幕広報で取材していると、よく上田泰弘空幕長が顔を見せる。決まって言うことは「本当に心配なんです。空中衝突でもしたら、大変なことになると、気が気ではない」--、そして7月30日、F-86F戦闘機と全日空B.727の空中衝突が起きた。
◆「私も危ないと思った」防衛庁長官
中曽根長官は交替して増原恵吉長官になっていた。毎日新聞の政治部から防衛庁記者クラブ詰めをしているS記者が自民党の総務局長になっていた中曽根さんの話をきにいった。
「僕も危ないと思っていました」のひと言だった。
監察官や空幕幹部が、空域について航空局と話し合うのはかなり困難なことだった。とくに、管制官の組合は自衛隊に対しても厳しくて、事務当局レベルの交渉は不可能な時代だった。
その一方で、国・政府は航空自衛隊にスクランブルや訓練の任務を命じている。シビリアン、その長である防衛庁長官、自衛隊の最高指揮官である内閣総理大臣は「なんとか空域とその運用について“政治的”に考慮して欲しい」という航空自衛隊の声に、少しも耳を傾けようとしなかった。
雫石事故後まもなく、政府は運輸・防衛の関係者を集め、空中衝突防止のための「緊急対策要綱」を作って公表した。内容はなんと、「飛行安全特定監察報告」で、こうして欲しいと空幕が要望していたものと、ほとんど同じだった。
◆政治の怠慢こそ犯人
雫石事故は予測された事故だと言われる。だがそれだけではない。本当の被告席に座るのは、国であり、政府であり、行政である。監察報告の切実な願いに、一顧だにしなかった“政治”の責任である。自衛隊機がからんでいるというので、内閣総理府交通安全室が雫石事故を担当した。事故報告書に、こうした政治や行政の怠慢が記載されるはずもない。恒久的な航空事故調査委員会が発足したのは、さらに2年後の73年10月である。
●(かじ・そういち)筆者は元毎日新聞社会部編集委員、現航空評論家
専用ブログはこちら → https://kajisoichi.hatenablog.com/
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/08/9222005
に続く雫石空中衝突事故の話
書けなかったこと書きたいこと(鍛治壮一)
雫石事故のショック(その2)
◆空中衝突を予告した報告書
雫石事故の起こる5ヶ月半前の71年(昭和46年)2月15日に航空幕僚監部の監察官、鈴木瞭五郎空将補は「飛行安全特定監察報告」を空幕長に提出した。ニアミス防止のため、その前の1年間をかけ、全国の航空部隊で実態調査をし、その対策をどうするかをまとめた分厚い報告書だった。空幕内で、さらに検討したあと、4月に中曽根康弘防衛庁長官に空幕長と監察官が説明した。いまのように資料をパソコンに入力して投影するわけにはいかないから、紙芝居の4倍ぐらいの大きなチャートを何枚も作って大臣に分かりやすく説明。その2週間後に、全く同じ内容を防衛庁記者クラブにも監察官がレクチャーした。
航空自衛隊のパイロットの多くが、ニアミスや、それに近い“ヒヤリ・ハット”を体験していること。ニアミス防止のため空域をもっと有効安全に使いたい。具体的には、空域を平面的に分けるだけでなく、時間差、高度差を設ける。訓練空域へ行くためのコリドー(回廊)を設置することなどが細かく報告されていた。「その実現のため空幕の防衛部などが運輸省航空局の担当者と折衝してきたが、進展しない。防衛庁と運輸省の事務担当者同士の話し合いのテーマではない。大臣同士とか、政府そのものの判断によって、ニアミス防止の具体的な方策をやっていただきたい」という趣旨である。報告書は「このままでは異常接近(ニアミス)にとどまらず、空中衝突の危険もある」と結んでいた。
しかし、鳴りもの入りで大臣に就任した中曽根長官は、何もしなかった。空幕長室の近くにあった空幕広報で取材していると、よく上田泰弘空幕長が顔を見せる。決まって言うことは「本当に心配なんです。空中衝突でもしたら、大変なことになると、気が気ではない」--、そして7月30日、F-86F戦闘機と全日空B.727の空中衝突が起きた。
◆「私も危ないと思った」防衛庁長官
中曽根長官は交替して増原恵吉長官になっていた。毎日新聞の政治部から防衛庁記者クラブ詰めをしているS記者が自民党の総務局長になっていた中曽根さんの話をきにいった。
「僕も危ないと思っていました」のひと言だった。
監察官や空幕幹部が、空域について航空局と話し合うのはかなり困難なことだった。とくに、管制官の組合は自衛隊に対しても厳しくて、事務当局レベルの交渉は不可能な時代だった。
その一方で、国・政府は航空自衛隊にスクランブルや訓練の任務を命じている。シビリアン、その長である防衛庁長官、自衛隊の最高指揮官である内閣総理大臣は「なんとか空域とその運用について“政治的”に考慮して欲しい」という航空自衛隊の声に、少しも耳を傾けようとしなかった。
雫石事故後まもなく、政府は運輸・防衛の関係者を集め、空中衝突防止のための「緊急対策要綱」を作って公表した。内容はなんと、「飛行安全特定監察報告」で、こうして欲しいと空幕が要望していたものと、ほとんど同じだった。
◆政治の怠慢こそ犯人
雫石事故は予測された事故だと言われる。だがそれだけではない。本当の被告席に座るのは、国であり、政府であり、行政である。監察報告の切実な願いに、一顧だにしなかった“政治”の責任である。自衛隊機がからんでいるというので、内閣総理府交通安全室が雫石事故を担当した。事故報告書に、こうした政治や行政の怠慢が記載されるはずもない。恒久的な航空事故調査委員会が発足したのは、さらに2年後の73年10月である。
●(かじ・そういち)筆者は元毎日新聞社会部編集委員、現航空評論家
専用ブログはこちら → https://kajisoichi.hatenablog.com/
エイズ薬濃度200倍ならコロナに効く? ― 2020年03月16日 08:19
以前に、新型コロナウイルスにアビガンが効く濃度はかなり高めというデータについて書いたが、
<アビガン濃度20倍!にすれば効くかも コロナ 大丈夫か?>
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/07/9221674
同じ感染症学会の抗ウイルス薬使用指針に抗HIV薬のカレトラ(ロピナビル、リトナビル配合剤)についても書かれている。
>> 過去の流行時の報告では MERS ウイルスは EC50 8.0±1.5μM(in vitro)、SARS ウイルスは EC50 17.1±1.0μM(in vitro)であるため、HIV-1 と比較し、200 倍以上の EC50である。このため、MERS・SARS ウイルスの近縁種と捉えられる COVID-2019 についても、HIV-1 と比較して高濃度の EC50を示す可能性があり、用量については有害事象のモニターと合わせ今後の検討が必要である。
EC50(50%効果濃度)とは、ざっくり言うと、この薬をかけたらウイルスの活動(増殖など)が半分に抑えられる濃度。ロピナビルでは、8.0μM=(8.0*0.62881=)5.0μg/mL、17.1μM=10.8μg/mLになる。
カレトラの添付文書によると、(ヒト血清非存在下では)「HIV-1標準株に対するロピナビルの平均EC50は10-27nM(0.006-0.017μg/mL)であり」とあり、確かにMERSで300倍、SARSで600倍ぐらいだ。用法通り投与した場合の定常期血中濃度は最大約10μg/mL。最大でSARS、MERSのEC50とどっこいどっこい。しかも、HIV1に対してヒト血清存在下では7-11倍の効力低下がみられたとあるので、どうして効くのか不思議。
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_antiviral_drug_200227.pdf
<アビガン濃度20倍!にすれば効くかも コロナ 大丈夫か?>
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/07/9221674
同じ感染症学会の抗ウイルス薬使用指針に抗HIV薬のカレトラ(ロピナビル、リトナビル配合剤)についても書かれている。
>> 過去の流行時の報告では MERS ウイルスは EC50 8.0±1.5μM(in vitro)、SARS ウイルスは EC50 17.1±1.0μM(in vitro)であるため、HIV-1 と比較し、200 倍以上の EC50である。このため、MERS・SARS ウイルスの近縁種と捉えられる COVID-2019 についても、HIV-1 と比較して高濃度の EC50を示す可能性があり、用量については有害事象のモニターと合わせ今後の検討が必要である。
EC50(50%効果濃度)とは、ざっくり言うと、この薬をかけたらウイルスの活動(増殖など)が半分に抑えられる濃度。ロピナビルでは、8.0μM=(8.0*0.62881=)5.0μg/mL、17.1μM=10.8μg/mLになる。
カレトラの添付文書によると、(ヒト血清非存在下では)「HIV-1標準株に対するロピナビルの平均EC50は10-27nM(0.006-0.017μg/mL)であり」とあり、確かにMERSで300倍、SARSで600倍ぐらいだ。用法通り投与した場合の定常期血中濃度は最大約10μg/mL。最大でSARS、MERSのEC50とどっこいどっこい。しかも、HIV1に対してヒト血清存在下では7-11倍の効力低下がみられたとあるので、どうして効くのか不思議。
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_antiviral_drug_200227.pdf
コロナで変になってる人達に怒鳴られた(2)アビガンは効くのよ、ちゃんと調べなさい ― 2020年03月16日 21:51
外出できず、日がな一日、適当なコメントを垂れ流すワイドショーばかり見てるため、頭が変になっている人たち。厚労大臣がアビガンなどを検討していると会見するよりだいぶ前のこと。アビガンの開発者の教授がテレビで「アビガンは新型コロナウイルスに効く」と言ってるのを見たという年配の女性。厚労省がちゃんと調べるべきだと怒っていた。「感染研はアビガンも含めてちゃんと調べてます」となだめても納得せず。「いろいろ可能性のある薬があって日本でもちゃんと調べてます。逆に何でそんなにアビガンにこだわるんですか?」「開発者は大学教授。ちゃんとした根拠もなく、効くなんて言うはずないでしょう」「いや、あの、効くといってもそれは試験管内の話でしょうから、本当に効くかどうかは」「だったら、ちゃんと調べればいいでしょう」
開発者はおそらく薬学や酵素学の専門家で、臨床や感染症の専門家ではない。効くといっても、試験管内の話だろう。以前に書いた通り、アビガンやレムデシビルが(試験管内で)ウイルスに効くのは当たり前。
そりゃ効くよ コロナの治療法になるかは別問題 評価法の確立が必要
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/26/9218028
アビガン濃度20倍!にすれば効くかも コロナ 大丈夫か?
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/07/9221674
開発者はおそらく薬学や酵素学の専門家で、臨床や感染症の専門家ではない。効くといっても、試験管内の話だろう。以前に書いた通り、アビガンやレムデシビルが(試験管内で)ウイルスに効くのは当たり前。
そりゃ効くよ コロナの治療法になるかは別問題 評価法の確立が必要
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/26/9218028
アビガン濃度20倍!にすれば効くかも コロナ 大丈夫か?
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/03/07/9221674
国内致死率,クルーズ船の3.4倍 上級国民優先? 統計でウソをつく法 ― 2020年03月18日 12:07
厚労省の発表によると、3/17現在の国内の感染者累計は873人、死者29人。致死率は3.3%。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の感染者数累計は712人、死者7人。致死率は0.98%。国内の致死率はクルーズ船のなんと3.4倍。同じように国内で検査し、同じように国内で治療しているにも関わらず。
ワイドショーのいい加減なディレクターなら、「クルーズ船乗客は上級国民だから国内の平民より優先的に手厚い治療を受けている」特集にしちゃうのじゃないか。
さて、これぞ、このブログで何度も取り上げているまさに「統計でウソをつく法」。
どこにウソがあるのか。
クルーズ船は乗員乗客約3700人の全員調査。感染者の47%が無症状。これに対し、国内の調査は、症状が重い人や症状がはっきりしている人を優先した偏ったサンプル調査。無症状は11%しか含まれていない。のどが少し痛いとか微熱があるとか普通の風邪と区別がつかない感染者は対象外だ。当然、重症者の比率が実際よりも高くなり、致死率も高くなってしまう。クルーズ船の致死率約1%が高齢者比率が多い場合の実際の致死率に近いのではないか。若年、壮年、子どもも含めた日本人全体ではもっと低いだろう。
そもそも国別の感染者数比較などほとんど意味がない。無作為に選ばれた人を検査しているのではなく、たまたま目に付いた人を調べているのだ。各国で国全体がどうなっているのか全く分からない。うつされた自覚もうつした自覚もないステルス感染者からステルス感染者へバトンが渡される。たまに重い症状が出る人にバトンが渡った時だけ顕在化するから、バトンの広がりを追跡できないのだ。
ところで、クルーズ船を国内の感染者に含めてしまった方が、日本の致死率が下がり、日本の医療は優秀だと世界にアピールできる。混ぜるなとうるさい人がなぜ多いのか不思議だ。
新型コロナウイルスに関連した患者等の発生について(3月17日公表分)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10264.html
ワイドショーのいい加減なディレクターなら、「クルーズ船乗客は上級国民だから国内の平民より優先的に手厚い治療を受けている」特集にしちゃうのじゃないか。
さて、これぞ、このブログで何度も取り上げているまさに「統計でウソをつく法」。
どこにウソがあるのか。
クルーズ船は乗員乗客約3700人の全員調査。感染者の47%が無症状。これに対し、国内の調査は、症状が重い人や症状がはっきりしている人を優先した偏ったサンプル調査。無症状は11%しか含まれていない。のどが少し痛いとか微熱があるとか普通の風邪と区別がつかない感染者は対象外だ。当然、重症者の比率が実際よりも高くなり、致死率も高くなってしまう。クルーズ船の致死率約1%が高齢者比率が多い場合の実際の致死率に近いのではないか。若年、壮年、子どもも含めた日本人全体ではもっと低いだろう。
そもそも国別の感染者数比較などほとんど意味がない。無作為に選ばれた人を検査しているのではなく、たまたま目に付いた人を調べているのだ。各国で国全体がどうなっているのか全く分からない。うつされた自覚もうつした自覚もないステルス感染者からステルス感染者へバトンが渡される。たまに重い症状が出る人にバトンが渡った時だけ顕在化するから、バトンの広がりを追跡できないのだ。
ところで、クルーズ船を国内の感染者に含めてしまった方が、日本の致死率が下がり、日本の医療は優秀だと世界にアピールできる。混ぜるなとうるさい人がなぜ多いのか不思議だ。
新型コロナウイルスに関連した患者等の発生について(3月17日公表分)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10264.html
さすが中国 アビガン有効比較試験 日本ではできん ― 2020年03月18日 17:14
薬の効果を確かめる一番確かな方法は、患者を薬群と偽薬群に分け、死亡率の差が出るかどうか見る事だ。日本ではこういう(人命に関わる)比較試験は絶対出来ないが、さすがは中国、やったのね。欧米も昔はやっていたが、今は無理だろう。
ほかの報道では、被験者は武漢市と深セン市あわせて200人だそうだ。
死亡率の差は報道されてないが、これだけ自信を持って効くと断言するからには、死亡率に統計的に意味のある確かな差があったのではないか。
さて、ちゃんと偽薬を使っているかどうか、医者にも本人にもどちらが本物の薬か分からないブラインド試験になっているかなど科学的な作法通りの研究かどうかという疑問はある。また、インフルエンザ治療で使う通常の用量では効きそうにないのだが、どれぐらいの量を使ったのかも知りたい所だ。中国なら大胆な量を使っている気もする。
>>深センの病院で行われた臨床研究では、「アビガン」を投与しなかった場合、ウイルス検査で陽性から陰性になる日数の中央値が11日だったのに対し、投与した場合は4日だったとしています。
また、胸部のエックス線画像の解析では、症状が改善した人の割合は、投与しなかった場合は62%、投与した場合は91%だったという
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3932238.html
ほかの報道では、被験者は武漢市と深セン市あわせて200人だそうだ。
死亡率の差は報道されてないが、これだけ自信を持って効くと断言するからには、死亡率に統計的に意味のある確かな差があったのではないか。
さて、ちゃんと偽薬を使っているかどうか、医者にも本人にもどちらが本物の薬か分からないブラインド試験になっているかなど科学的な作法通りの研究かどうかという疑問はある。また、インフルエンザ治療で使う通常の用量では効きそうにないのだが、どれぐらいの量を使ったのかも知りたい所だ。中国なら大胆な量を使っている気もする。
>>深センの病院で行われた臨床研究では、「アビガン」を投与しなかった場合、ウイルス検査で陽性から陰性になる日数の中央値が11日だったのに対し、投与した場合は4日だったとしています。
また、胸部のエックス線画像の解析では、症状が改善した人の割合は、投与しなかった場合は62%、投与した場合は91%だったという
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3932238.html
2号格納庫に天井、LED点灯確認 サンダーバード秘密基地を組み立て ― 2020年03月19日 12:41

ちなみに上の方に写ってるのは今週号の少年ジャンプの裏表紙
専用ブログはこちら ↓
ヤシの木も倒れる‼ Tracy Islandサンダーバード秘密基地を組み立てるだけの部屋
https://tracy-island.hatenablog.com/
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コロナは飛沫感染するHIV 脳爆死の流言飛語の出処が分かった ― 2020年03月19日 17:22
「新型コロナは飛沫感染するエイズ」「新型コロナはHIV、SARS、MERSを組み合わせて作った」など、一体どうしたらそんなオカルトな事を思いつけるのかと不思議でしょうがない流言がネットに飛び交っている。その出処になった2つのサイトを見つけた。1が書いたデタラメを引用した2がさらにすごい事にしちゃっている。
1)https://indeep.jp/found-hiv-in-wuhan-coronavirus/
2)https://dailyrootsfinder.com/air-hiv/
最近には珍しいトンデモ理論。科学する心が欠片もない人間がここまで科学について語るとは。
順を追って説明しよう。
1)の主張
その1 中国が、一度感染し治癒した者も再感染のリスクがあると言っている。←事実かどうか分からないが可能性はある。
その2 ウイルスなどに感染すると血液中にウイルスを不活化する抗体が作られる ← まあ正しい
その3 HIVに感染すると、体の免疫機構が破壊される(免疫不全状態になる) ← 正しい。ただし、治療をしなければ。治療を続ければ免疫能力は破壊されない。
その4 インド工科大の研究で、「新型ウイルスには 4つの他のウイルスのタンパク質が挿入している」「そのたんぱく質はHIVのタンパク質と同じ」 ← 大間違い
その5 新型ウイルスから見つかった、このタンパク質(正式にはスパイクタンパク質と呼ばれるものです)は、「同じコロナウイルスである SARS や MERS には含まれない」ものだというのですね。 ← 大間違い
その6 この新型ウイルスには「エイズウイルス」の性質が含まれているのです。 ← オカルト的妄想に近い大間違い
その7 「自然進化的に偶然そうなったもの」でない場合、これは、人為的に操作されたことによるものということになってしまう。 ← 大間違い
1が引用している元の論文はまともな論文だ。しかし、1は英語と化学に弱いらしい。たんぱく質と、たんぱく質の構成部品であるアミノ酸の区別が付いていないのだ。ウイルスのたんぱく質1個1個は、大体100個から1000個ぐらいのアミノ酸がつながってできている。新型コロナウイルスのたんぱく質全体は数万個のアミノ酸からできている。「そのたんぱく質の4カ所でアミノ酸の並び方が6~8個、HIVと同じだった」というのが元の論文。つまり、4カ所あわせても30個ぐらいアミノ酸の並び方が一致しているだけなのだ。数個の並びが一致しても同じたんぱく質ではないし、同じ機能を持つ事は出来ない。
しかし、その5のような、これらの短いアミノ酸とたんぱく質全体を混同した内容が続く。このスパイクたんぱく質はコロナウイルスに特徴的なもので、SARSやMERSにもあり、HIVにはない。SARSやMERSになく、HIVと一致と書かれているのは、そのスパイクたんぱく質の中に差し込まれている6-8個のアミノ酸配列のことを指す。
この程度が一致していても、たんぱく質全体としての機能や性質が同じになる事はない。
また、その7で、「偶然でない=人為的操作」と思っているのも論文やそれへの講評が全く理解できてない。6~8個ぐらいならアミノ酸の配列がたまたま一致する事もある。もしも、偶然でなければ、ある種類のウイルスの遺伝子配列の一部が別な種類のウイルスに移って挿入されたという事だ。これは進化の過程で起きうる事で、別に人間の手が介する必要はない。
で、この1を引用した2が「新型コロナウイルスは空気感染するエイズ」というキャッチーな見出しを付けて、広めてしまった。勘違いの内容は基本、1と同じ。だが、2がさらに強調している点は、新型コロナウイルスが免疫不全を起こすというトンデモ説だ。HIVに感染した人がすぐに免疫不全になると思っているようだが、HIV感染症は10年ぐらいかかって免疫不全になる。早い人でも2、3年かかる。先月感染した人が今月免疫不全になるということはありえない。
そもそも新型コロナウイルスでは免疫不全は起こらない。HIVは免疫細胞(専門用語でCD4陽性リンパ球)に感染して、破壊するため、免疫不全が起きる。HIVは免疫細胞に感染するために必要なたんぱく質を持っているが、新型コロナウイルスにはこれがないのだ。
1)https://indeep.jp/found-hiv-in-wuhan-coronavirus/
2)https://dailyrootsfinder.com/air-hiv/
最近には珍しいトンデモ理論。科学する心が欠片もない人間がここまで科学について語るとは。
順を追って説明しよう。
1)の主張
その1 中国が、一度感染し治癒した者も再感染のリスクがあると言っている。←事実かどうか分からないが可能性はある。
その2 ウイルスなどに感染すると血液中にウイルスを不活化する抗体が作られる ← まあ正しい
その3 HIVに感染すると、体の免疫機構が破壊される(免疫不全状態になる) ← 正しい。ただし、治療をしなければ。治療を続ければ免疫能力は破壊されない。
その4 インド工科大の研究で、「新型ウイルスには 4つの他のウイルスのタンパク質が挿入している」「そのたんぱく質はHIVのタンパク質と同じ」 ← 大間違い
その5 新型ウイルスから見つかった、このタンパク質(正式にはスパイクタンパク質と呼ばれるものです)は、「同じコロナウイルスである SARS や MERS には含まれない」ものだというのですね。 ← 大間違い
その6 この新型ウイルスには「エイズウイルス」の性質が含まれているのです。 ← オカルト的妄想に近い大間違い
その7 「自然進化的に偶然そうなったもの」でない場合、これは、人為的に操作されたことによるものということになってしまう。 ← 大間違い
1が引用している元の論文はまともな論文だ。しかし、1は英語と化学に弱いらしい。たんぱく質と、たんぱく質の構成部品であるアミノ酸の区別が付いていないのだ。ウイルスのたんぱく質1個1個は、大体100個から1000個ぐらいのアミノ酸がつながってできている。新型コロナウイルスのたんぱく質全体は数万個のアミノ酸からできている。「そのたんぱく質の4カ所でアミノ酸の並び方が6~8個、HIVと同じだった」というのが元の論文。つまり、4カ所あわせても30個ぐらいアミノ酸の並び方が一致しているだけなのだ。数個の並びが一致しても同じたんぱく質ではないし、同じ機能を持つ事は出来ない。
しかし、その5のような、これらの短いアミノ酸とたんぱく質全体を混同した内容が続く。このスパイクたんぱく質はコロナウイルスに特徴的なもので、SARSやMERSにもあり、HIVにはない。SARSやMERSになく、HIVと一致と書かれているのは、そのスパイクたんぱく質の中に差し込まれている6-8個のアミノ酸配列のことを指す。
この程度が一致していても、たんぱく質全体としての機能や性質が同じになる事はない。
また、その7で、「偶然でない=人為的操作」と思っているのも論文やそれへの講評が全く理解できてない。6~8個ぐらいならアミノ酸の配列がたまたま一致する事もある。もしも、偶然でなければ、ある種類のウイルスの遺伝子配列の一部が別な種類のウイルスに移って挿入されたという事だ。これは進化の過程で起きうる事で、別に人間の手が介する必要はない。
で、この1を引用した2が「新型コロナウイルスは空気感染するエイズ」というキャッチーな見出しを付けて、広めてしまった。勘違いの内容は基本、1と同じ。だが、2がさらに強調している点は、新型コロナウイルスが免疫不全を起こすというトンデモ説だ。HIVに感染した人がすぐに免疫不全になると思っているようだが、HIV感染症は10年ぐらいかかって免疫不全になる。早い人でも2、3年かかる。先月感染した人が今月免疫不全になるということはありえない。
そもそも新型コロナウイルスでは免疫不全は起こらない。HIVは免疫細胞(専門用語でCD4陽性リンパ球)に感染して、破壊するため、免疫不全が起きる。HIVは免疫細胞に感染するために必要なたんぱく質を持っているが、新型コロナウイルスにはこれがないのだ。
1社員にくっついて騒ぐドルオタみたいな人たち どのアナか聞かないで 実在ではないので ― 2020年03月20日 19:16
一般にも馴染みのある職業、テレビ局のアナウンサーを例にしてちょっと例え話をしようと思う。
誰でも知っているというほどではないが、地下アイドルのように非常に熱心で強いファン(ドルオタというらしい)が付いているアナウンサーがいたとしよう。そのアナウンサーは、日頃、「出世は一切しなくていいので、一生、現場のアナウンサーをさせて下さい」と上司や周囲に言っていたという。ところが、定期異動でテレビに映るアナウンサーではなく、同じ放送局内の裏方的な仕事に移る事が決まった。
で、そのアナウンサーは実名と社名を名乗っているSNSに今回の人事への不満を書き込んだ。その投稿を見たファンたちが異動撤回の署名活動を開始。「左遷しないで」「○○ちゃんをテレビに出さないんだったら、もうおたくのテレビ番組は見ない」とテレビ局に嘆願や抗議の電話をかけ、メールを出した。集めた署名を送ってくるファンもいた。本人はファンたちをなだめるどころか、さらにあおるような動画やコメントで燃料投下。
さて、この「事件」。どこから突っ込んだらいいものやら。
1)将来、社長や重役になりたいと思ってテレビ局のアナウンサー試験を受ける人はいない。「部長にも社長にもならなくていいから、一生、テレビに映るアナウンサーをやりたい」。アナウンサーなら誰でも思っているような事を何か特別な事のように言われても困る。
2)局アナは会社員。会社員であれば必ず定期的に異動がある。特に、東京で全国ネットの番組のアナウンサーをしたいというのは希望者が多い人気の職。1人だけ特別扱いしてずっと同じ場所に居続けることなど出来ない。
3)組織の人事が、嘆願書や署名活動で変更されることはあり得ない。そんなことを1回でも受け入れたら、署名を10万人分集めたアナウンサーなら異動しないですむといった前例になり、組織が崩壊する。
4)表に出るアナウンサーの仕事に対し、それを支える裏方の仕事を左遷というのは異動先に失礼。表で華々しく見える仕事だけが重要な仕事というのは思い上がりも甚だしい。
5)組織の評価は、目に見える、華々しく目立つ仕事だけを採点するのではない。例えば、後輩をよく指導しているか、自分が目立てなくても新人がいい仕事をできるようにサポートしているかなども重要な評価の基準。自分ばかり視聴者受けのいい仕事をして、面倒でポイント稼ぎにつながらない仕事は後輩に行かせる(私の知人は「掛け捨て保険」と呼んでます)ような社員はどんなに本人が楽しく活躍していても、組織内での評価は低い。そういう思い違い(なぜ自分の評価は低いか)を自覚させるためにも裏方の仕事を経験する事は本人にとって重要な事。
さて、ファンたちに「これは左遷ではありません」と説明しても、「別に左遷だとは言っていない。別な地域、例えば関西に異動させてアナウンサーを続けさせる異動なら分かる。ファンが多くて視聴率を稼げるアナウンサーをアナウンサーからはずすのは勿体なくないか。なぜこういう人材を大事にしないのか」
「どうして、異動させる事が大事にしない事になるのか。左遷とは言ってないというが左遷だと言ったのと同じではないか。違う仕事を経験する事が本人の成長につながり、本人のためになる」
本人が一生、自分の好きな仕事だけ続け、それを支えている裏方の仕事について何も知らない事が本人のためになると本気で思っているのか。なんでも、弱者に寄り添う姿勢が人気だったそうだが、今回の件で、異動先の職場の人たちが傷ついている事には本人もファンも全く気づいていないし、気にもしていない。そういう人物がこのまま続けて、本当の意味で弱者に寄り添えるのだろうか。
そりゃあね、夏目漱石とか石川啄木とか、日本が誇るような天才が社員だったら、そりゃあ、自分の好きな事だけやらせておくかもしれない。会社にいるだけですごいんだから。でも、そこまでの天才だったら会社を辞めて仕事をする。
誰でも知っているというほどではないが、地下アイドルのように非常に熱心で強いファン(ドルオタというらしい)が付いているアナウンサーがいたとしよう。そのアナウンサーは、日頃、「出世は一切しなくていいので、一生、現場のアナウンサーをさせて下さい」と上司や周囲に言っていたという。ところが、定期異動でテレビに映るアナウンサーではなく、同じ放送局内の裏方的な仕事に移る事が決まった。
で、そのアナウンサーは実名と社名を名乗っているSNSに今回の人事への不満を書き込んだ。その投稿を見たファンたちが異動撤回の署名活動を開始。「左遷しないで」「○○ちゃんをテレビに出さないんだったら、もうおたくのテレビ番組は見ない」とテレビ局に嘆願や抗議の電話をかけ、メールを出した。集めた署名を送ってくるファンもいた。本人はファンたちをなだめるどころか、さらにあおるような動画やコメントで燃料投下。
さて、この「事件」。どこから突っ込んだらいいものやら。
1)将来、社長や重役になりたいと思ってテレビ局のアナウンサー試験を受ける人はいない。「部長にも社長にもならなくていいから、一生、テレビに映るアナウンサーをやりたい」。アナウンサーなら誰でも思っているような事を何か特別な事のように言われても困る。
2)局アナは会社員。会社員であれば必ず定期的に異動がある。特に、東京で全国ネットの番組のアナウンサーをしたいというのは希望者が多い人気の職。1人だけ特別扱いしてずっと同じ場所に居続けることなど出来ない。
3)組織の人事が、嘆願書や署名活動で変更されることはあり得ない。そんなことを1回でも受け入れたら、署名を10万人分集めたアナウンサーなら異動しないですむといった前例になり、組織が崩壊する。
4)表に出るアナウンサーの仕事に対し、それを支える裏方の仕事を左遷というのは異動先に失礼。表で華々しく見える仕事だけが重要な仕事というのは思い上がりも甚だしい。
5)組織の評価は、目に見える、華々しく目立つ仕事だけを採点するのではない。例えば、後輩をよく指導しているか、自分が目立てなくても新人がいい仕事をできるようにサポートしているかなども重要な評価の基準。自分ばかり視聴者受けのいい仕事をして、面倒でポイント稼ぎにつながらない仕事は後輩に行かせる(私の知人は「掛け捨て保険」と呼んでます)ような社員はどんなに本人が楽しく活躍していても、組織内での評価は低い。そういう思い違い(なぜ自分の評価は低いか)を自覚させるためにも裏方の仕事を経験する事は本人にとって重要な事。
さて、ファンたちに「これは左遷ではありません」と説明しても、「別に左遷だとは言っていない。別な地域、例えば関西に異動させてアナウンサーを続けさせる異動なら分かる。ファンが多くて視聴率を稼げるアナウンサーをアナウンサーからはずすのは勿体なくないか。なぜこういう人材を大事にしないのか」
「どうして、異動させる事が大事にしない事になるのか。左遷とは言ってないというが左遷だと言ったのと同じではないか。違う仕事を経験する事が本人の成長につながり、本人のためになる」
本人が一生、自分の好きな仕事だけ続け、それを支えている裏方の仕事について何も知らない事が本人のためになると本気で思っているのか。なんでも、弱者に寄り添う姿勢が人気だったそうだが、今回の件で、異動先の職場の人たちが傷ついている事には本人もファンも全く気づいていないし、気にもしていない。そういう人物がこのまま続けて、本当の意味で弱者に寄り添えるのだろうか。
そりゃあね、夏目漱石とか石川啄木とか、日本が誇るような天才が社員だったら、そりゃあ、自分の好きな事だけやらせておくかもしれない。会社にいるだけですごいんだから。でも、そこまでの天才だったら会社を辞めて仕事をする。
自衛隊機に追突したANAが悪いと未だに信じる人 雫石事故 最後の社会部記者鍛治壮一 ― 2020年03月22日 20:01
1971年7月30日、全日空の旅客機ボーイング727と航空自衛隊の戦闘機F-86が空中衝突した雫石事故。「速度の遅い自衛隊機に速度の速い旅客機が追突したのだから、旅客機の方が悪い」。いまだにこんなトンデモ説を信じて書いている人がいるのには驚きだ。ちゃんと事故の詳細を分かっている人がわざとそういう風に教えていた時期もあったが何十年も前の話だ。
まるで、時速80kmしか出ないバイクに、後ろからバスが時速100kmで衝突したかのように言っているが、そんな事故ではない。あえて、車の衝突に例えてみよう。
高速道路に、高速バス専用のレーンとバイクの訓練用レーンが並んで設けられていた。高速バスはそのレーンに沿ってただまっすぐ走るだけ。バイクの方は訓練をするので、レーンの中をジグザグに走ったり、右や左に急ハンドルを切って回ったりする。その日は、訓練生が教官と隊列を組んで走っていた。そこに、隣のレーンで、後ろから高速バスが近づいてきた。訓練生は教官の走りについていくのに必死で、隣のバス用のレーンに飛び出してしまった。教官が警告したが、間に合わず、急ハンドルで返って高速バスの進路をふさいでしまい、追突された。
これで、バスの方が悪いという論理がどうやって成り立つというのだ。空を飛んでいる航空機に急ブレーキはない。確かに最高速度はB727の方が速いが、速度の問題ではない。戦闘機は機体の安定性を下げて、運動性を上げているので、急旋回など小回りが利くが、旅客機は機体の安定性を高めているので、急旋回などをするようにできてない。
刑事裁判は最高裁まで争われたが、訓練生は無罪。教官だけ執行猶予付きの有罪になった。だが、この事故で一番悪いのは誰だろうか。それは、もちろんANAのパイロットではないし、訓練生でも教官でもない。教官よりも責めを負うべき存在があったから、執行猶予になったのだ。訓練生や教官のみが責められ、真に被告席に座るべき者が何の責任を感じていない。その無念さの亡霊がこのような都市伝説を生むのだろう。
次回、刑事裁判の一審判決の際、新聞の1面を飾った鍛治壮一の解説とそれに寄せられた航空自衛隊のある戦闘航空団副司令の切々とした思いを紹介する。
専用ブログはこちら → https://kajisoichi.hatenablog.com/
まるで、時速80kmしか出ないバイクに、後ろからバスが時速100kmで衝突したかのように言っているが、そんな事故ではない。あえて、車の衝突に例えてみよう。
高速道路に、高速バス専用のレーンとバイクの訓練用レーンが並んで設けられていた。高速バスはそのレーンに沿ってただまっすぐ走るだけ。バイクの方は訓練をするので、レーンの中をジグザグに走ったり、右や左に急ハンドルを切って回ったりする。その日は、訓練生が教官と隊列を組んで走っていた。そこに、隣のレーンで、後ろから高速バスが近づいてきた。訓練生は教官の走りについていくのに必死で、隣のバス用のレーンに飛び出してしまった。教官が警告したが、間に合わず、急ハンドルで返って高速バスの進路をふさいでしまい、追突された。
これで、バスの方が悪いという論理がどうやって成り立つというのだ。空を飛んでいる航空機に急ブレーキはない。確かに最高速度はB727の方が速いが、速度の問題ではない。戦闘機は機体の安定性を下げて、運動性を上げているので、急旋回など小回りが利くが、旅客機は機体の安定性を高めているので、急旋回などをするようにできてない。
刑事裁判は最高裁まで争われたが、訓練生は無罪。教官だけ執行猶予付きの有罪になった。だが、この事故で一番悪いのは誰だろうか。それは、もちろんANAのパイロットではないし、訓練生でも教官でもない。教官よりも責めを負うべき存在があったから、執行猶予になったのだ。訓練生や教官のみが責められ、真に被告席に座るべき者が何の責任を感じていない。その無念さの亡霊がこのような都市伝説を生むのだろう。
次回、刑事裁判の一審判決の際、新聞の1面を飾った鍛治壮一の解説とそれに寄せられた航空自衛隊のある戦闘航空団副司令の切々とした思いを紹介する。
専用ブログはこちら → https://kajisoichi.hatenablog.com/
抗ウイルス薬なぜ使い回すか 新型コロナウイルス治療法に関する話1 ― 2020年03月23日 20:43
新型コロナウイルスの患者に抗HIV薬やインフル薬をなぜ使い回すのか。こういう疑問を持つ人も結構いるようだ。本来、抗ウイルス薬はウイルスの種類ごとに特化し、ヒトの正常な細胞は傷つけにくい化合物を作って使うのが正しい。実際、新型コロナウイルスに対しても新規の抗ウイルス薬を開発するという話は聞く。だが、それに何年かかるのか、一般の人は分かっているのだろうか。それはこんな順番になる。
候補探し段階
(1)標的にするウイルスの部品(酵素など)を決め、その詳しい構造などを調べる。(2)標的(酵素など)にくっついてその機能を妨げる化合物をデータベースから探す。ない時は作る。(3)見つけた、もしくは、作った化合物を改良し、より強く標的に作用するようにし、薬の候補物質とする。
候補絞り込み段階
(4)試験管内の細胞を使った実験や動物実験で、候補物質にウイルスの増殖を抑える効果があるか試す。
実用に向けた試験
(5)2、3個の候補物質を決め、人間を対象にして、安全性試験、有効性試験をする。
(6)以上のデータをそろえて、政府機関に承認申請を出し、審査を受けて、販売承認を得る。
さて、(1)~(3)の候補探しは、合成化学とコンピューターによる解析の技術の発達により、かなり、素早くできるようになった。(4)の絞り込みもそんなに時間はかからない。だが、ここで毒性が出てしまい、せっかく努力が水の泡になる候補も多々ある。一番の難所は、(5)だ。試験に参加してくれる人をリクルートして、長期の試験をしなければならない。大変な予算と時間がかかる。しかも、副作用が強かったり、効果がなかったり、失敗に終わって、世界に冠たる巨大製薬企業の存亡に関わるような損失になる事もある。
全体で20年ぐらいかかる事もしばしば。半年から1年ぐらいで新型コロナウイルスが普通の風邪ウイルスになってしまい、開発中の薬が無用の産物になってしまう事もあり得る。そもそも、9割以上の人が放っといても治る病気に薬は必要ない。インフルエンザの治療薬が認められたのは極めて特殊な事情だ。
これを大幅に短縮できるのが使い回しだ。すでに安全性試験が済んでるので、効果さえ確かめられればいい。承認されている薬の適用拡大は承認手続きもゼロからより手間がずっと少ない。開発費もはるかに安上がりだ。専用の抗ウイルス薬に比べると切れ味は鈍い。試験管内の実験では、元々のインフルやHIVに効く濃度の何十倍や何百倍も濃くしないと新型コロナウイルスに効かないというデータもある。それでも使い回しが一番現実的なのだ。新規開発は、間に合わないのと、営利企業である製薬にとってリスクが高すぎるからだ。
20世紀の終わりに登場した抗HIV薬やC型肝炎の特効薬は画期的だ。これらは慢性化して体内に居座るウイルス。治療しないと命に関わる病気だ。だから、開発費を回収できるだけの利益を上げている。季節性インフルエンザの場合、毎年多数の患者が出るとはいえ、致死率が低く、治療薬がなければならない病気ではなかった。それでも承認されたのは、致死率は高いが人間にはまれにしか感染しない高病原性鳥インフルエンザが人間にも容易に感染するように変異し、大流行した場合、大きな被害が予想されたからだ。致死率の高い新型インフルエンザに備えるため承認された。最初は、発熱期間が1、2日短縮するぐらいの効果しかないのでは意味がないと懐疑的な医師もいた。だが、季節性インフルエンザで命の危険があるハイリスクな人たちや、高病原性鳥インフルエンザに感染した患者の救命率が上がるという報告が出ている。
候補探し段階
(1)標的にするウイルスの部品(酵素など)を決め、その詳しい構造などを調べる。(2)標的(酵素など)にくっついてその機能を妨げる化合物をデータベースから探す。ない時は作る。(3)見つけた、もしくは、作った化合物を改良し、より強く標的に作用するようにし、薬の候補物質とする。
候補絞り込み段階
(4)試験管内の細胞を使った実験や動物実験で、候補物質にウイルスの増殖を抑える効果があるか試す。
実用に向けた試験
(5)2、3個の候補物質を決め、人間を対象にして、安全性試験、有効性試験をする。
(6)以上のデータをそろえて、政府機関に承認申請を出し、審査を受けて、販売承認を得る。
さて、(1)~(3)の候補探しは、合成化学とコンピューターによる解析の技術の発達により、かなり、素早くできるようになった。(4)の絞り込みもそんなに時間はかからない。だが、ここで毒性が出てしまい、せっかく努力が水の泡になる候補も多々ある。一番の難所は、(5)だ。試験に参加してくれる人をリクルートして、長期の試験をしなければならない。大変な予算と時間がかかる。しかも、副作用が強かったり、効果がなかったり、失敗に終わって、世界に冠たる巨大製薬企業の存亡に関わるような損失になる事もある。
全体で20年ぐらいかかる事もしばしば。半年から1年ぐらいで新型コロナウイルスが普通の風邪ウイルスになってしまい、開発中の薬が無用の産物になってしまう事もあり得る。そもそも、9割以上の人が放っといても治る病気に薬は必要ない。インフルエンザの治療薬が認められたのは極めて特殊な事情だ。
これを大幅に短縮できるのが使い回しだ。すでに安全性試験が済んでるので、効果さえ確かめられればいい。承認されている薬の適用拡大は承認手続きもゼロからより手間がずっと少ない。開発費もはるかに安上がりだ。専用の抗ウイルス薬に比べると切れ味は鈍い。試験管内の実験では、元々のインフルやHIVに効く濃度の何十倍や何百倍も濃くしないと新型コロナウイルスに効かないというデータもある。それでも使い回しが一番現実的なのだ。新規開発は、間に合わないのと、営利企業である製薬にとってリスクが高すぎるからだ。
20世紀の終わりに登場した抗HIV薬やC型肝炎の特効薬は画期的だ。これらは慢性化して体内に居座るウイルス。治療しないと命に関わる病気だ。だから、開発費を回収できるだけの利益を上げている。季節性インフルエンザの場合、毎年多数の患者が出るとはいえ、致死率が低く、治療薬がなければならない病気ではなかった。それでも承認されたのは、致死率は高いが人間にはまれにしか感染しない高病原性鳥インフルエンザが人間にも容易に感染するように変異し、大流行した場合、大きな被害が予想されたからだ。致死率の高い新型インフルエンザに備えるため承認された。最初は、発熱期間が1、2日短縮するぐらいの効果しかないのでは意味がないと懐疑的な医師もいた。だが、季節性インフルエンザで命の危険があるハイリスクな人たちや、高病原性鳥インフルエンザに感染した患者の救命率が上がるという報告が出ている。
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