1社員にくっついて騒ぐドルオタみたいな人たち どのアナか聞かないで 実在ではないので2020年03月20日 19:16

 一般にも馴染みのある職業、テレビ局のアナウンサーを例にしてちょっと例え話をしようと思う。
 誰でも知っているというほどではないが、地下アイドルのように非常に熱心で強いファン(ドルオタというらしい)が付いているアナウンサーがいたとしよう。そのアナウンサーは、日頃、「出世は一切しなくていいので、一生、現場のアナウンサーをさせて下さい」と上司や周囲に言っていたという。ところが、定期異動でテレビに映るアナウンサーではなく、同じ放送局内の裏方的な仕事に移る事が決まった。
 で、そのアナウンサーは実名と社名を名乗っているSNSに今回の人事への不満を書き込んだ。その投稿を見たファンたちが異動撤回の署名活動を開始。「左遷しないで」「○○ちゃんをテレビに出さないんだったら、もうおたくのテレビ番組は見ない」とテレビ局に嘆願や抗議の電話をかけ、メールを出した。集めた署名を送ってくるファンもいた。本人はファンたちをなだめるどころか、さらにあおるような動画やコメントで燃料投下。
 さて、この「事件」。どこから突っ込んだらいいものやら。

1)将来、社長や重役になりたいと思ってテレビ局のアナウンサー試験を受ける人はいない。「部長にも社長にもならなくていいから、一生、テレビに映るアナウンサーをやりたい」。アナウンサーなら誰でも思っているような事を何か特別な事のように言われても困る。
2)局アナは会社員。会社員であれば必ず定期的に異動がある。特に、東京で全国ネットの番組のアナウンサーをしたいというのは希望者が多い人気の職。1人だけ特別扱いしてずっと同じ場所に居続けることなど出来ない。
3)組織の人事が、嘆願書や署名活動で変更されることはあり得ない。そんなことを1回でも受け入れたら、署名を10万人分集めたアナウンサーなら異動しないですむといった前例になり、組織が崩壊する。
4)表に出るアナウンサーの仕事に対し、それを支える裏方の仕事を左遷というのは異動先に失礼。表で華々しく見える仕事だけが重要な仕事というのは思い上がりも甚だしい。
5)組織の評価は、目に見える、華々しく目立つ仕事だけを採点するのではない。例えば、後輩をよく指導しているか、自分が目立てなくても新人がいい仕事をできるようにサポートしているかなども重要な評価の基準。自分ばかり視聴者受けのいい仕事をして、面倒でポイント稼ぎにつながらない仕事は後輩に行かせる(私の知人は「掛け捨て保険」と呼んでます)ような社員はどんなに本人が楽しく活躍していても、組織内での評価は低い。そういう思い違い(なぜ自分の評価は低いか)を自覚させるためにも裏方の仕事を経験する事は本人にとって重要な事。

 さて、ファンたちに「これは左遷ではありません」と説明しても、「別に左遷だとは言っていない。別な地域、例えば関西に異動させてアナウンサーを続けさせる異動なら分かる。ファンが多くて視聴率を稼げるアナウンサーをアナウンサーからはずすのは勿体なくないか。なぜこういう人材を大事にしないのか」
「どうして、異動させる事が大事にしない事になるのか。左遷とは言ってないというが左遷だと言ったのと同じではないか。違う仕事を経験する事が本人の成長につながり、本人のためになる」
 本人が一生、自分の好きな仕事だけ続け、それを支えている裏方の仕事について何も知らない事が本人のためになると本気で思っているのか。なんでも、弱者に寄り添う姿勢が人気だったそうだが、今回の件で、異動先の職場の人たちが傷ついている事には本人もファンも全く気づいていないし、気にもしていない。そういう人物がこのまま続けて、本当の意味で弱者に寄り添えるのだろうか。
 そりゃあね、夏目漱石とか石川啄木とか、日本が誇るような天才が社員だったら、そりゃあ、自分の好きな事だけやらせておくかもしれない。会社にいるだけですごいんだから。でも、そこまでの天才だったら会社を辞めて仕事をする。