死にたい奴の運転でも安全な設計は不可能: かじヤンの科学する心

How can we make fail-safe for suicide ？
　確かイギリスのファンボローだったと思う。エアバスの広報と世間話をしていて、フェールセーフについて質問したらこんな答↑が。福島原発の放出処理水に含まれる放射性物質がトリチウム以外は環境基準以下と保証されるのであれば、おそらく安全性には問題ないが、東電の過去の行状からみて信用できないと書いたら、「問題は、確実な処理が行われるのかというオペレーションへの信頼性だとすると、実効性を担保するにはどういう仕組みが考えられるのか？」と質問された。それに対する答は、エアバスと同じ。自殺行為をしようとしている作業員に対してフェールセーフなオペレーションなんて実現不可能だ。
　上の言葉を聞いたのは、人間優先設計のボーイングに対し、エアバスは人間を信用しない機械優先設計の権化みたいに言われていた時代。そのエアバスの顔とも言えるべき人が「フェールセーフなんて不可能だ」と言うのだ。ちょうどその2週間ぐらい前に旅客機が山に突っ込む事故があり、調査委員会はパイロットが自殺を図ったと推定した。その事故を念頭に置いたであろう冒頭の言葉。どんな安全システムを作ろうと、作業者が乗客や周辺住人を巻き込むような文字どおり自殺行為となる手順・規則・法令違反を意図的に犯したら、安全ではない。1999年、茨城県東海村の民間ウラン加工施設JCO東海事業所の臨界事故。原子炉の外では臨界なんか絶対起きないようにJCOの手順は設計されていた。しかし、臨界の意味を知らない社員がバケツの中のウラニウム溶液を使ってはいけない大きなタンクに全部ぶち込んで混ぜるなんて設計者に予見できるわけがない。