実名拒否理由が「職業アニメを知られたくない」だったら悲しい2019年09月11日 21:00

京アニ事件で犠牲になった人の60%で家族が実名公表を拒んでいたという。その理由を、公表されるとマスコミの取材が殺到し、2次被害を受けるからだと思っていた。従って、メディアスクラムを起こさない対策を万全にすればいいのではないかと。だが、違う意見も聞いた。
 先日、松尾貴史が名古屋の本格的ウイスキーバーに行った経験を書いていた。オペラが流れ、ブレードランナーの映像をモニターに映している。本物志向のマスターはウイスキーと芸術に一家言あり、アニメやマンガの類いは芸術と認めていないという。「鳥獣戯画は?」と問うと、「あういうものは別枠」だそうだ。
 今時、こんな化石みたいな人が本当にいるのかと疑った。
さて3年前、萩尾望都が司馬遼太郎や藤沢周平、ノーベル賞科学者らが取っている朝日賞の授賞式で、マンガなんか読んでいたら頭が悪くなる、ろくな人間にならないと言われ続けて育ったが、まさかこんな日が来るとは思わなかった、と切々と訴えていた。
 50年以上も前、萩尾さんが子どもの頃は、確かに「マンガ禁止」「マンガなんか読んでいるのはダメ人間」という親が大多数だった。それでも隠れるようにしてマンガを読み続けた世代が社会の中枢を占め、それらの世代も引退して、いまや大人でもマンガを読むのが当たり前の日本になった。と思っていた。
 京アニの実名拒否理由の中に、親戚や友人に知られたくないというのがあった。誰かが言った言葉にハッとした。「せっかく大学まで出たのにアニメの会社に勤めてたのか」って言われたくないんだよ。
 そんな事はないと思いたい。「子どもが漫画家やアニメーターになるなんて恥ずかしくて他人に言えない」。そんな時代はもうとっくに終わったと。
 昨年、ヴァイオレット・エヴァーガーデンのテレビ放送はずっと見ていた。聲の形も映画館に行った。深夜に再放送していた「けいおん!」 も「フルメタル・パニック? ふもっふ」も。
 劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンが公開中だ。見もしないで芸術じゃないとか言わずに、見に行って欲しい。志半ばで倒れてしまったが、世界中の他の誰にも作れない物をつくっていた人たちの作品に触れて欲しい。これが誰にも恥じることのない誇り高き仕事であったことを目の当たりにして欲しい。

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