移植でHIV完治はなぜ応用できないか HIVに不死身な能力は輸血でコピーされる(3)2019年03月07日 17:30

 骨髄移植でHIV感染が完治したのは世界でたった2例しかない。
そう簡単にやるわけにはいかないからだ。
この2例は2人とも白血病患者だった。

 よくこういう説明がある。

「白血病の治療には大きく分けて、化学療法(抗がん剤治療)と移植がある」

 そのため、骨髄移植などの移植自体が治療だと思われがちだが、移植は白血病の治療「方法」ではない。
あえて言うなら、<強力化学療法(大量抗がん剤)+場合によっては放射線>療法と呼ぶべきだ。体中に広がった白血病細胞(がん化した白血球)を徹底的に死滅させるため、髪の毛が抜けてメチャメチャしんどくなるほど大量の抗がん剤を一気に投与する。
 その結果、赤血球や白血球などの血液を作る造血幹細胞まで死に絶えてしまう。そこで、造血幹細胞が含まれる骨髄などを健康な人から取って患者に移植する。血液を作る能力を回復させるための処置。
 血液型まで変わってしまうほどのきつい治療なのだ。
この治療を普通のHIV感染者に応用できないのは明らかだろう。抗がん剤自体に重い副作用がある。移植された造血幹細胞が働いて白血球が作られるまでの間、免疫力は著しく弱まるので、その間の感染症は致命的だ。それに加えて、拒絶反応を防ぐため、免疫抑制剤まで使う。
 さらに、新たに作られる白血球は元々他人の物なので、この白血球が患者の臓器を襲う恐ろしい副作用があり得る。これは移植片対宿主病(GVHD)と呼ばれる。起きると致死率が高く、移植やかつての輸血でもっとも怖い副作用だ。
 白血病という命に関わる病気だから選択肢になるリスクの高い治療法だ。薬さえ忘れずに飲んでいれば普通に生きていける一般のHIV感染者ではありえない。
 そこに、変革をもたらすかもしれないのが、ゲノム編集技術だ。

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