HIVに不死身な能力は輸血でコピーされる(2) 感染が治癒する理由2019年03月06日 13:02

 骨髄移植でなぜHIV感染が治るのか。ニュースを見てもさっぱり分からなそうなので、一応、科学を標榜するここで詳しく説明する。
 世界で2例しかない治癒例ベルリン・ペイシェントとロンドン・ペイシェント。いずれもHIV感染者で白血病になった。HIV感染は免疫を担う白血球がウイルスで破壊される病気。白血病は白血球ががん化して無限に増える病気。白血球が壊される病気と増え続ける病気の両方にかかるとはなかなかだ。
 HIV感染はウイルスの増殖を強力に抑える治療薬を毎日飲むだけで普通に暮らせる病気になった。だが、血液中から全くウイルスが検出されなくなっても、薬を止めるとどこかに隠れていたウイルスが必ず増え出す。そのため、体内からのウイルス除去は無理とされ、感染者は天寿を全うするまで一生薬を飲み続けなければならない。
 薬を飲まなくてもウイルスが出てこない=完全に消失したと思われるのが、骨髄移植を受けたこの2人の元HIV感染者だ。実は提供を受けた骨髄の提供者には特殊な遺伝子変異を持つ人が意図的に選ばれている。
 この遺伝子はケモカインリセプターCCR5と呼ばれるたんぱく質をつくる。CCR5は白血球の膜表面のたんぱく質で、HIVが白血球の膜を通って、中に侵入する際、オートロックの解除システムのような役割を果たす。
 ところが、このまれな変異を持つ人では、CCR5が変形してその機能を果たせず、HIVが感染できないのだ。
骨髄には白血球や赤血球などの血液成分をつくる造血幹細胞と呼ばれるものがあり、この特殊な変異を持つ人の造血幹細胞はHIVが感染できない白血球を作る。
 この人から骨髄の提供を受けたHIV感染者の体内でもHIVが感染できない白血球が作られるようになる。ウイルス自体の寿命は非常に短く、白血球に感染して仲間を増やし続けない限り、消滅してしまうのだ。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/03/06/9043947/tb