女50歳からの東京 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(11) ― 2025年09月06日 17:40
広島生まれ、大学から大阪在住のジャーナリスト石野伸子さんの連載をまとめた著書「女50歳からの東京ぐらし」は、東京の大阪寿司を2回取り上げている。
連載はタイトルどおり、ずっと大阪で働いていた石野さんが2005年に転勤を命じられ、夫やすでに成人している子どもを置いて単身赴任、初めて東京に住むという内容だ。
「神楽坂の大阪寿司」は、知人たちとの小さな食事会で、大阪寿司の老舗「大〆」の大将夫婦に出会ったという話。
そして、「やっぱり絶滅品種?」は「神楽坂の大阪寿司」に対する読者からの反響を取り上げている。
ほぼ純粋な関西人であった石野さんがいつから「大阪寿司」という言葉を知っていたのか、興味がわく。なにしろ、2010年ごろ、関西厚焼工業組合なる組織が9月15日を「大阪寿司の日」と定め、何年かイベントを開いていたにもかかわらず、いまだ大阪寿司なる用語を知っている関西人に会ったことがない。
たまたま行きつけのカフェの店長が石野さんと同じ会社にいたことがあったので、同期など知人の知人のつてをたどって、連絡先を調べてもらった。
そして、石野さんに問い合わせると、とても丁寧なご返事をいただいた。
<神楽坂の「大〆」さんを知ったとき、「大阪ずし」という言い方はごく自然に受け止めました。そのとき初めて知った言葉、というような印象、あるいは違和感はなかったように思います。だからといって、その前の大阪時代に、「大阪ずし」という言葉を使っていたかとなると、あいまいです>
<とくに東京で、特徴をあらわすために使われてきた、というのは十分理解できます。では地元大阪ではどうだったか。吉野ずしの元会長のインタビュー記事などから、近年、大阪の寿司店自体がブランディングとして「大阪ずし」という言葉をひとつの看板として使い始めたのではないか、という鍛治さんの指摘は、なるほどと思いました。ただ、その時期がいつだったか、は気になるところです。
何かヒントはないか、と手元の本などを見てみましたが、よく分かりません。我が家にある広辞苑(第2版補訂版1977)に「大阪ずし」はありました。古い大阪ことばを調べるのによく使う牧村史陽「大阪ことば事典」(1979)に「大阪ずし」はなく、「箱ずし」はあり、この項目の説明に「大阪ずしの代表」というように登場しています。「小林カツ代のおいしい大阪」(文春文庫2008)には、「大阪のおいしいもん」の思い出として箱寿司、蒸し寿司、節分の太巻きなどが登場しますが、「大阪ずし」という言葉は使っていません>
結局分からないわけだが、それは自分に投影してみれば当然そうだろうと思う。
自分は東京生まれの東京育ち、就職するまで東京以外に住んだことがないどころか、父方母方双方の祖父母、叔父叔母、いとこすべてが東京在住だから、正月も麹町の本家に集まるだけ。年350日東京暮らしだから他府県の文化に接する機会はほぼなかった。
にもかかわらず、「あかん」、「ほかす」など関西の言葉を知っていたし、何なら「しんどい」を使うこともあった。それをいつ、なんで知ったのかなんて全く記憶にない。
明確に覚えているのは「体がえらい」ぐらい。小学生の時に読んだ小林信彦のエッセーにお笑い番組「スチャラカ社員」のミヤコ蝶々のセリフとして出てきた。
あかんなども本やあるいはテレビで放映された藤山寛美の松竹新喜劇などで覚えたのかもしれない。
これら全国区の関西弁に比べると、大阪寿司はかなりマイナーな東京方言だが、それでも本当に東京でしか通じなかったのは明治、大正、昭和初期ぐらいまでだろう。
ちなみに、「大阪寿司の日」は、日本記念日協会に問い合わせたところ、確かに一時期、記念日として登録されていたが、今は登録からはずれたそうだ。
◆インド名物はインドカレーと言われたような違和感 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(1)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/19/9776452
◆大阪のお寿司との違いは? 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(2)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/21/9777055
◆いつから使われ出した?「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(3)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/23/9777235
◆残る老舗3店 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(4)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/25/9777405
◆茶巾は東京生まれ 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(5)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/26/9778091
◆リトル大阪があった 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(6)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/30/9778999
◆ 消えた名店 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(7)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/06/03/9779832
◆確かにあった 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(8)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/07/13/9788348
本物の箱寿司は卵焼きが甘かった 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(9)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/08/02/9793037
半世紀前から辞書に掲載 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(10)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/08/18/9796765
連載はタイトルどおり、ずっと大阪で働いていた石野さんが2005年に転勤を命じられ、夫やすでに成人している子どもを置いて単身赴任、初めて東京に住むという内容だ。
「神楽坂の大阪寿司」は、知人たちとの小さな食事会で、大阪寿司の老舗「大〆」の大将夫婦に出会ったという話。
そして、「やっぱり絶滅品種?」は「神楽坂の大阪寿司」に対する読者からの反響を取り上げている。
ほぼ純粋な関西人であった石野さんがいつから「大阪寿司」という言葉を知っていたのか、興味がわく。なにしろ、2010年ごろ、関西厚焼工業組合なる組織が9月15日を「大阪寿司の日」と定め、何年かイベントを開いていたにもかかわらず、いまだ大阪寿司なる用語を知っている関西人に会ったことがない。
たまたま行きつけのカフェの店長が石野さんと同じ会社にいたことがあったので、同期など知人の知人のつてをたどって、連絡先を調べてもらった。
そして、石野さんに問い合わせると、とても丁寧なご返事をいただいた。
<神楽坂の「大〆」さんを知ったとき、「大阪ずし」という言い方はごく自然に受け止めました。そのとき初めて知った言葉、というような印象、あるいは違和感はなかったように思います。だからといって、その前の大阪時代に、「大阪ずし」という言葉を使っていたかとなると、あいまいです>
<とくに東京で、特徴をあらわすために使われてきた、というのは十分理解できます。では地元大阪ではどうだったか。吉野ずしの元会長のインタビュー記事などから、近年、大阪の寿司店自体がブランディングとして「大阪ずし」という言葉をひとつの看板として使い始めたのではないか、という鍛治さんの指摘は、なるほどと思いました。ただ、その時期がいつだったか、は気になるところです。
何かヒントはないか、と手元の本などを見てみましたが、よく分かりません。我が家にある広辞苑(第2版補訂版1977)に「大阪ずし」はありました。古い大阪ことばを調べるのによく使う牧村史陽「大阪ことば事典」(1979)に「大阪ずし」はなく、「箱ずし」はあり、この項目の説明に「大阪ずしの代表」というように登場しています。「小林カツ代のおいしい大阪」(文春文庫2008)には、「大阪のおいしいもん」の思い出として箱寿司、蒸し寿司、節分の太巻きなどが登場しますが、「大阪ずし」という言葉は使っていません>
結局分からないわけだが、それは自分に投影してみれば当然そうだろうと思う。
自分は東京生まれの東京育ち、就職するまで東京以外に住んだことがないどころか、父方母方双方の祖父母、叔父叔母、いとこすべてが東京在住だから、正月も麹町の本家に集まるだけ。年350日東京暮らしだから他府県の文化に接する機会はほぼなかった。
にもかかわらず、「あかん」、「ほかす」など関西の言葉を知っていたし、何なら「しんどい」を使うこともあった。それをいつ、なんで知ったのかなんて全く記憶にない。
明確に覚えているのは「体がえらい」ぐらい。小学生の時に読んだ小林信彦のエッセーにお笑い番組「スチャラカ社員」のミヤコ蝶々のセリフとして出てきた。
あかんなども本やあるいはテレビで放映された藤山寛美の松竹新喜劇などで覚えたのかもしれない。
これら全国区の関西弁に比べると、大阪寿司はかなりマイナーな東京方言だが、それでも本当に東京でしか通じなかったのは明治、大正、昭和初期ぐらいまでだろう。
ちなみに、「大阪寿司の日」は、日本記念日協会に問い合わせたところ、確かに一時期、記念日として登録されていたが、今は登録からはずれたそうだ。
◆インド名物はインドカレーと言われたような違和感 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(1)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/19/9776452
◆大阪のお寿司との違いは? 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(2)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/21/9777055
◆いつから使われ出した?「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(3)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/23/9777235
◆残る老舗3店 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(4)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/25/9777405
◆茶巾は東京生まれ 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(5)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/26/9778091
◆リトル大阪があった 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(6)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/05/30/9778999
◆ 消えた名店 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(7)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/06/03/9779832
◆確かにあった 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(8)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/07/13/9788348
本物の箱寿司は卵焼きが甘かった 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(9)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/08/02/9793037
半世紀前から辞書に掲載 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(10)
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2025/08/18/9796765

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