コロナ[パキロビッドが優れた薬]その訳は ― 2023年02月03日 12:57
>>高齢者や持病がある人は、もし新型コロナウイルス感染症にかかったら、抗ウイルス薬、特に「パキロビッド」という飲み薬をもらえないか、医師に聞いてみてください――。東京都で発熱患者などへの訪問診療を続ける医師が、インターネットでこう呼びかけています。
https://mainichi.jp/premier/health/articles/20230106/med/00m/100/018000c
●パキロビッド以外は弱い抗がん剤みたいな薬
最初に出たメルク(MSD)の飲み薬ラゲブリオ(モルヌピラビル)、2番目のファイザーのパキロビッド(ニルマトレルビル合剤)、点滴薬ベクルリー(レムデシビル)。承認されなかったアビガン。このうち、パキロビッド以外はみな同じ効き方の薬だ。まあ、抗がん剤の親戚のようなもので、RNAの部品(ヌクレオチド)によく似た薬剤。似ているので、ウイルスや細胞が間違えて取り込み、RNAを作れなくなる。そのため、コロナだけでなく、インフルにもエボラにも効き、細胞やがん細胞にも効いて傷害を与える。結局、何にでも効く薬というのは毒性も出てしまうので、毒性を抑えるため効き目はよくない。パキロビッド以外が今一なのはたぶんこのせいだろう。抗インフル薬のタミフルやC型肝炎の特効薬ハーボニーは、20年ぐらいかけて特定の種類のウイルスのみに害を与えるよう選りすぐられたものだ。結局、ウイルスごとに特化した薬でなければダメなのではないかと抗ウイルス薬のプロは言っている。パキロビッドは、たんぱく質分解酵素という酵素にくっついてその機能を妨げる薬。この酵素が分解するたんぱく質はウイルスの種類によって千差万別だ。そのため、酵素自体の形もウイルスの種類によって違うし、人間の細胞の酵素とも形が違う。なので、薬剤の流用は効かず、ウイルスの種類ごとに専用に作る必要がある。新型コロナウイルスに特化した薬剤を探すのは普通なら何年も何十年もかかる。
●なぜこれほど早く作れたのか
実は、新型コロナウイルスはSARSコロナウイルスと同種で、これら2つのウイルスは、この酵素の薬剤がくっつく場所の構造が全く同じなのだ。そのため、SARSコロナウイルスに効果があることが分かった化合物からSARS治療薬として開発されていた薬剤がそのまま使えた。新型コロナとSARSコロナという特定のウイルスのみに強いダメージを与えられるので、当然、効き目はよくなる。この記事では、臨床試験の結果からパキロビッドが優れているとしているが、それ以前の段階から優れているであろう事が予想できる。東大によるこれらの薬剤のオミクロン変異株に関する効果の試験では、対オミクロンの効果だけを書いていて、それだとラゲブリオ>ベクルリー>パキロビッドかのように見えてしまう。しかし、優れているかどうかは、ウイルスを壊す破壊力そのものではなく、ウイルスに大打撃を与えるのに十分な濃度と細胞を傷つける濃度の比。オミクロン株と細胞をそれぞれ「半殺し」にする濃度の比を比較すると、ラゲブリオは14倍超、ベクルリーは16倍超程度なのに対し、パキロビッドは140倍超。つまり、ラゲブリオなどはウイルスに強烈なダメージを与えるためにウイルス半殺しの10倍ぐらいの濃度にすると細胞も無事では済まない。これに対し、パキロビッドは100倍以上の差があるので、10倍ぐらいは大丈夫ということになる。ただし、パキロビッドはこの仕組みの薬にありがちな欠点があって、体内への吸収が非常に悪く、血中濃度を上げるため大量に飲まなければならず、それもあって肝臓に負担をかけやすいのがネックだ。それで現場から敬遠されるという話もあったが、評価が変わってきたようだ。
https://mainichi.jp/premier/health/articles/20230106/med/00m/100/018000c
●パキロビッド以外は弱い抗がん剤みたいな薬
最初に出たメルク(MSD)の飲み薬ラゲブリオ(モルヌピラビル)、2番目のファイザーのパキロビッド(ニルマトレルビル合剤)、点滴薬ベクルリー(レムデシビル)。承認されなかったアビガン。このうち、パキロビッド以外はみな同じ効き方の薬だ。まあ、抗がん剤の親戚のようなもので、RNAの部品(ヌクレオチド)によく似た薬剤。似ているので、ウイルスや細胞が間違えて取り込み、RNAを作れなくなる。そのため、コロナだけでなく、インフルにもエボラにも効き、細胞やがん細胞にも効いて傷害を与える。結局、何にでも効く薬というのは毒性も出てしまうので、毒性を抑えるため効き目はよくない。パキロビッド以外が今一なのはたぶんこのせいだろう。抗インフル薬のタミフルやC型肝炎の特効薬ハーボニーは、20年ぐらいかけて特定の種類のウイルスのみに害を与えるよう選りすぐられたものだ。結局、ウイルスごとに特化した薬でなければダメなのではないかと抗ウイルス薬のプロは言っている。パキロビッドは、たんぱく質分解酵素という酵素にくっついてその機能を妨げる薬。この酵素が分解するたんぱく質はウイルスの種類によって千差万別だ。そのため、酵素自体の形もウイルスの種類によって違うし、人間の細胞の酵素とも形が違う。なので、薬剤の流用は効かず、ウイルスの種類ごとに専用に作る必要がある。新型コロナウイルスに特化した薬剤を探すのは普通なら何年も何十年もかかる。
●なぜこれほど早く作れたのか
実は、新型コロナウイルスはSARSコロナウイルスと同種で、これら2つのウイルスは、この酵素の薬剤がくっつく場所の構造が全く同じなのだ。そのため、SARSコロナウイルスに効果があることが分かった化合物からSARS治療薬として開発されていた薬剤がそのまま使えた。新型コロナとSARSコロナという特定のウイルスのみに強いダメージを与えられるので、当然、効き目はよくなる。この記事では、臨床試験の結果からパキロビッドが優れているとしているが、それ以前の段階から優れているであろう事が予想できる。東大によるこれらの薬剤のオミクロン変異株に関する効果の試験では、対オミクロンの効果だけを書いていて、それだとラゲブリオ>ベクルリー>パキロビッドかのように見えてしまう。しかし、優れているかどうかは、ウイルスを壊す破壊力そのものではなく、ウイルスに大打撃を与えるのに十分な濃度と細胞を傷つける濃度の比。オミクロン株と細胞をそれぞれ「半殺し」にする濃度の比を比較すると、ラゲブリオは14倍超、ベクルリーは16倍超程度なのに対し、パキロビッドは140倍超。つまり、ラゲブリオなどはウイルスに強烈なダメージを与えるためにウイルス半殺しの10倍ぐらいの濃度にすると細胞も無事では済まない。これに対し、パキロビッドは100倍以上の差があるので、10倍ぐらいは大丈夫ということになる。ただし、パキロビッドはこの仕組みの薬にありがちな欠点があって、体内への吸収が非常に悪く、血中濃度を上げるため大量に飲まなければならず、それもあって肝臓に負担をかけやすいのがネックだ。それで現場から敬遠されるという話もあったが、評価が変わってきたようだ。
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