大学を言えないのは女子東大生だけ? 東京人は男子も同じ 上野千鶴子氏入学祝辞2019年06月02日 17:46

 上野千鶴子東大名誉教授の入学式での祝辞がかなり話題になったが、しょうもない所に「それは違うのでは」と引っかかった。男子の東大生は大学名を言えるのに、女子の東大生は言えないと。本当にそう?
 私が知っている東大生は男子もみんな大学名を言いたがらない。訊かれれば、渋々答えるが、出身大学の話題になるのを嫌い、避けている。訊かれもしないのに自分から言ったりそれらしい単語(赤門、安田講堂など)であざとく「東大生だよ」アピールをするヤツなんてマンガやドラマでしか見たことない。
 例えば、身近で家庭教師を頼んでいた東大在学生は「こんなに大学名を言いにくい所だと思っていなかった」と言っていた。また、ある東大OBは、知人に「早稲田ですよね」と質問され、仕方なく「東大です」と答えたら、意外な顔をされ、そう訊くんだから多分と思って、「あなたは早稲田なんですか?」と訊き返したら、早稲田とだいぶ違う大学で、気まずかったと言う。
 試しに、東大卒だと分かっている人たちのSNSのプロフィールを覗いてみたが、大学教授をやっている極少数を除き、大学名を書いている人はいなかった。
 さて、スピリッツで連載している「二月の勝者」という塾講師のマンガで、飲み会のシーンにこんな会話があった。
「碧山さんってもしかして」
「ああ僕一応東大卒」
 みんな啞然とした顔をする。
こんなバカそうな人が、という理由で驚いているのではないことは、主人公の心の声で分かる。
「チャラそうに見えて頭脳派! 会話の腰を折らずに気配りもできる切れ者・・・ それでいてこのイケメンっぷり なんだかモヤモヤしてきた」
 裏を返せば、この主人公、ひいてはこの漫画家の東大生のイメージは「理屈っぽそうに見えて天然 人の話を聞かず気配りができない フツメンかブサイク」ということだ。
 躊躇いもなく東大生だと言いそうな知人を脳内検索してみた。パッと思い浮かんだのは、毎年、大量の東大生を排出するので有名な県の出身者だった。
 ハタと思い当たった。私の知る大学名を言いたがらない東大生はみな東京人(横浜、千葉など首都圏含む)だった。
 東京人は東京にある大学に対して、特定のイメージ、固定観念、偏見がある。
その東大のイメージは「ファッションセンスがない」「暗くて、オタク」「まじめ過ぎておもしろくない」という感じだろう。将来出世するだろうというブランド力はあっても、イメージは慶応や一橋、早稲田などの方がずっと良かったのだ。
 上に上げた例で言えば、大学名を言いにくいという在学生は背が高くシュッとしたイケメン。服装も洒脱で、見た目は早稲田か慶応。「早稲田ですよね」と質問されたOBもまあイケメン。陽気でどこに顔を出しても老若男女問わず人気者だった。
 まさか東大とは思われないいいイメージで人付き合いしていたのに、知られるとドン引きされる。それがイヤなんじゃないか。
 もし、最近の現役東大生は平気で大学名を言えるんだとしたら、近年、東大のブランド力の低下が激しいから、むしろイメージが良くなっているのかもしれない。

新井氏絶賛のJD ホントにタダ者?2019年06月05日 17:55

新井紀子氏が新聞に載った大学生の投書「巻き髪のJKは全力で走った」を「すごい。巧い。可愛い!」と絶賛している。
https://twitter.com/noricoco/status/1134612345202700289
私も土曜にある人がすごく誉めていたので読んだが、打ちのめされた。
 本当にただの大学生なのか。流れるような名文。こんなものをスラッと書ける才能に目眩すら覚える。
もしも、自分にこんな才能があったなら、きっと小説家を目指していただろう。
 ある人に、「これはすごい」と勧めたら、「これくらい余裕で書ける。レベッカか岡村孝子かアリアナグランデの歌詞のパクリか」みたいなことをうそぶいていた。そんなの何億円も稼ぐユーチューバーを見て、ガキンチョが俺にもできそうとか、プロのお笑いを見て俺の方が面白いとか言ってるのと同じ。実際に書けるわけない。このJD少なくとも西野カナより筆力ははるか上。うそぶいてた奴は悪いけど大した才能のない私にも及ばないだろう。
 中学生ぐらいで早々と自分には作家の才能がないと諦めてしまった。
しかし、今になって、「簡単に諦めるべきじゃなかったのでは」と思う事がある。
超絶的に面白い作品の数々に出会い、自分にはこのような物を生み出す創作能力(特に、オリジナリティの高いアイデアを思いつく力)がないと感じたわけなのだが。確かに、アマデウス・モーツァルトが頭の中からわき出す音符をただ書きとめていただけなように、スラスラと文字が浮かんで来る天才作家には成れないだろう。私は、自分に才能のない事には一切努力しない子どもだった。得意でないことで他人の何倍も努力したって、せいぜい「中の下」ぐらいにしか行けない。だったら、元々平均より出来てることで努力するべきだと。しかし、天賦の才があるわけでもないのに、必死の努力で血と汗の塊のような小説を書いている作家もたくさんいる。成ろうとする努力もせず、たかだかローティーンで見切ってしまってよかったのか。つい最近、今さらそんなことを考えるようになった。

家族は殺人に手を染めかねない犯罪予備軍 これぞ統計でウソをつく法の本物2019年06月09日 08:07


 以前、大新聞の論説委員は「統計でウソをつく法」の正しい意味が分かってないと書いた。
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/02/06/9033036
 分かっている人もいる。先週、川崎殺傷事件を取り上げた天声人語の冒頭にこんな1節が。
<最近の統計によれば、日本の殺人事件の約5割は、親子間や夫婦間など親族のなかで起きている。そんな事実から、以下のような結論を導けるだろうか。「家族は、殺人に手を染めかねない犯罪予備軍である」 何をばかな、と思われるか。いやいや案外まともな議論かもしれない。たった1人の容疑者のイメージから、犯罪とひきこもりを結び付けることに比べれば>
 これが本当の統計でウソをつく方法だ。「日本の殺人事件の約5割は親子間や夫婦間などで起きている」。これは正しい統計の方法によって正しく求められた数値だ。そして、この正しい統計から「家族は殺人に手を染めかねない犯罪予備軍である」というウソに導く。これぞ統計でつくウソの神髄だ。
 5割という割合だけを示し、絶対数を隠す。だまし方としては最も古典的。家族持ちの日本人はたぶん1億人ぐらいいるが、家族に殺される日本人はその1億人の10万分の1程度だろう。
 わずか1例(2例でも3例でも同じである)の事件によって70万人とされる引きこもり人口全体が危険であるかのような言説へのアイロニー。逆説の手法としては極めて王道、オーソドックスであり、中高生が文章技法のお手本に使う天声人語としてちょうどいいと思う。
 ところが、信じがたい経験をした。ある高齢者がこれを読んで「家族は殺人に手を染めかねない犯罪予備軍であるという意見は何事だ」と激高していたのだ。「いやいや、これは意見ではなく、導けるだろうかという問いかけですよ」と説明したら「あなたのような頭のいい人にはそう読めるのかもしれないが、普通の人はこれが筆者の意見だと受け取る」とさらに怒った。いろんな意味でそんな訳ないと思うけど。10代の読解力低下に警鐘が鳴らされているが、日本人の読解力低下は半世紀前から始まっているのでは。

元警察庁長官は逮捕されない 後藤田氏をもてはやしたマスコミの罪は大きい2019年06月10日 07:58

 池袋事故の元工技院院長が逮捕されないのは上級国民だからというあり得ないデマが流れている事を以前に書いた。事務次官にだって大した権力はないのに、たかが工技院にそんな権力があるわけない。しかし、これがもしも元警察庁長官や財務大臣の息子とかだったら、ケガもウソなのに逮捕されないという噂を信じる気になる。
 6/9(日)の日経新聞のコラム風見鶏「後藤田恩赦再び」。恩赦の対象があからさまに選挙違反に偏っている事。そのため、自民党の運動員が「すぐ許される」とたかをくくっていたから日本の選挙が、長らく買収・供応やり放題だった事。衆院選前の1993年、後藤田正晴副総理が対象となる犯罪を明らかにしない特別恩赦を実施。衆院選後にその4分の3が選挙違反だったと分かったという。
 後藤田氏の晩年、新聞を初めとする多くのマスコミが政治改革の旗手ともてはやした。死去の際も、「国会のご意見番」などと持ち上げている。それにうんざりしていた身としては、このコラムにめっちゃいいね100個ぐらい付けたい。
 それらの評伝に書かれていなかった歴史的事実がある。落選した最初の参院選で、史上最悪と言われる選挙違反をしながら逮捕されなかったのが、後藤田氏である。そりゃあ、県警が、ついこの間まで警察庁長官だった人を逮捕できるはずがない。そんな人を清い政治のシンボルのように祭り上げた罪は大きい。その頃の政治部社会部記者は選挙違反の件を知らなかったのか。
 歴史を知らない人間が今を書いちゃいけないですな。
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/04/28/9065552

求人倍率高水準だから景気がいい 統計でウソをつく正しい見本 自覚的なの?マジなの?2019年06月12日 18:44

 新聞の大論説委員や大編集委員でも、統計でウソをつく方法の正しい意味を分かっていない人もいれば分かっている人もいる。
 もう一つ、「正しい」統計でウソをつく法を紹介した記事を見つけた。
「有効求人倍率がバブル期を超える高水準になったのは、アベノミクスの成果」というウソを編集委員が取り上げていた。有効求人倍率は、働き手を求めている数÷職探しをしている人数。これが大きくなるほど人手不足。バブルの頃より人手不足になっているという統計データは正しいとしても、だから、景気が良くなったと主張するのはアベノミクスのウソだという。これも割合を使ったウソだ。その記事によると、有効求人倍率の上昇は、少子高齢化で労働人口が減っている事が主因。分子の求人が増えたのではなく、分母が減ったせいなのだ。このウソを意図的に使いこなせているなら意外に賢いが、本気なら末期的だ。

家族は殺人に手を染めかねない犯罪予備軍 これぞ統計でウソをつく法の本物
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/06/09/9083286

大論説委員も統計のウソの意味が分かってない
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/02/06/9033036

家族は殺人予備軍 本当かもしれないと、2019年06月14日 18:35

 夕刊の社会面を開いたら、セブ島で妻射殺依頼、長岡市職員の母が生後3カ月の娘を床に何度も落として殺害、町田の高齢者施設入居の妻を殺害。
 1日には元農水次官が長男を殺害。
昨年の堺市で姉が弟を自殺偽装殺害や、一昨年の富岡八幡宮の宮司を弟が殺害もあった。
内縁関係の殺人や虐待による傷害致死なんかもある。
 こういうのを見てると、「家族は殺人に手を染めかねない犯罪予備軍である」は逆説じゃなくて正しい気もしてきた。これも報道による心理的効果かと。

(家族は殺人に手を染めかねない犯罪予備軍 これぞ統計でウソをつく法の本物)
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/06/09/9083286

銀座街中居眠り運転手 外交官特権で違法駐車OKは違うと思う2019年06月21日 20:29

夜、銀座和光の裏を歩いていたら、見かけた風景。
外交官特権があるから違法駐車しても良いってのは違うと思う。
日本では外交官は国家公務員試験とは別に特別な試験があった。大使の子どもなど二世枠があったが、そのような背景を持たずガチで受かるのはおそらく日本で最も難しい試験だ。
 この外交官試験、あまりにもエリート意識を助長しているというので廃止されたが、国によらず外交官には庶民が従う法は自分とは関係ないという貴族意識のようなものがあるのだろうか。

ロスの坂で全力坂はダメっしょ2019年06月22日 17:36

 全力坂がアマゾンプライムで全米配信されるというニュースが載っていたのだが。担当者が「これを機に、例えばロサンゼルスの坂をアメリカの人が走るというような、全力坂のフォーマットが世界で広がっても面白い」。
 いやいや、ロンドン、パリならともかく、ロスの坂を全力で走っちゃダメでしょ。いきなり撃たれるよ。日本みたいに学校や会社に遅刻しそうだからって走ってる人なんていないんだから。全力で走るのは逃げている犯罪者と追いかけてる警官だけ。
 アメリカのロッカーのPVみたいに金があって、道路を封鎖して撮影できるんなら別だけど。

男の強さ重視社会は紛争頻度増す 統計によるウソの好例2019年06月24日 19:04

 福岡大学によるマサイ族などの研究。攻撃的で強い男性ほど尊敬され、復讐がよい事とされる文化が濃いほど、敵を倒した男性に与えられる名誉や報酬などの特権が大きく、この特権が大きいほど他の集団との紛争が多かった。
 このことから「男の強さを重視する社会では戦士が特権を与えられやすく、結果として紛争の頻度が増す」と結論づけている。
 いままで統計でウソをつく法の正しい実例を紹介してきたが、大体が比率を利用したウソ。今回のウソは、比率と並んで古典的な相関関係を使う方法だ。
 統計では、相関関係が見られても、そこからただちに因果関係を導く事は出来ない。
喫煙者の肺がん発生率は非喫煙者よりはっきりと高いという調査結果がある。タバコを長年吸っていた人が肺がんになりやすいのであって、肺がんになった人がタバコを吸い始めるのではない事は常識で分かる。とはいえ、因果関係がはっきりするのは、長期の追跡調査で、1日の喫煙量が多く、喫煙期間が長くなるほど肺がんの発生率が高まるという時間変化を見られるからだ。
 上記の例は、「紛争の多い集団で、結果的に男の強さを重視されるようになった」という説も成り立つ。論文を引用した記事だけではどちらが先かは分からない。相関関係を利用したテクニックは、結論が本当かもしれないし、ウソかもしれない点が比率を使う方法と違う。
 さて、これまでの比率を使うウソと、この相関関係を使うウソを理解できれば、統計でウソをつく法も見破る法も8割方身に付いたようなものだ。

がんと診断後、1年以内の自殺20倍 本当に大問題なのか 倍率で人をだます方法
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2018/11/24/9002774

求人倍率高水準だから景気がいい 統計でウソをつく正しい見本 自覚的なの?マジなの?
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/06/12/9085695

家族は殺人に手を染めかねない犯罪予備軍 これぞ統計でウソをつく法
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/06/09/9083286

大論説委員も統計のウソの意味が分かってない
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/02/06/9033036