インフルワクチン、効くようになるかも ― 2020年02月01日 14:46

以前、<インフルワクチンが効かない真の理由 製法に欠陥>という記事を書いた。
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/01/25/9028880
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/01/29/9030231
簡単に言うと、ワクチンの種に使う元々のインフルエンザウイルスは効果があるのだが、ウイルスを増やすために卵で培養しているうちに、ウイルスが変化してしまうため、製品になったワクチンは、一番タチが悪くて流行も激しいA香港型にはほとんど効果が期待できないということだ。
ウイルスの質の低下を防ぐには、培養に卵ではなく細胞を使う方法がある。だが、武田薬品は細胞培養季節性インフルエンザワクチンの日本での開発を中止した。おそらく、高い、細胞は品質のばらつきの管理がめんどう、品質を保つのが難しいなど大量生産に不向きなのだろう。
で、期待されているのはアメリカで実用化されている経鼻ワクチン。いわゆる鼻にシュッというやつだ。
今のワクチンだって、ほとんど意味がないくらいにしか効かないというだけで、全く効かないわけではない。そして、質の問題は量で補えるのだ。インフルワクチンを注射して体内にできる抗体が、流行中のインフルのウイルスに対して本来の力の64分の1、128分の1しか効果がないとしても、濃さが1000倍なら効く。擬人化すると、ワクチンでできた抗体1人1人がダメ兵士でもものすごい人数を投入できればウイルスに勝てるのだ。
インフルウイルスはのどや鼻の粘膜から感染する。経鼻ワクチンは、その粘膜にワクチンウイルスを直接吹きかけるのだ。しかもアメリカの製品は生ワクチンなので、非常に強く反応して抗体が大量にできる。強すぎて熱が出ちゃうぐらいだ。インフルウイルスが鼻や口から侵入しようとしても、そこにすごい数の抗体が集結して待ち構えている。流行しているウイルスとワクチンのウイルスで遺伝子が少々違っていても構わない。感染阻止の効果まであるという。
日本でも開発中で昨年辺りから承認申請のニュースがちらほら出ている。いままでの注射ワクチンよりはマシじゃないかと期待している。ただし、日本のはアメリカのような生ワクチンではなく、ウイルスを壊して使う不活化ワクチンなので、アメリカの物よりは効果が弱いかもしれない。こればっかりは使ってみない事にはなんとも言えないのが医学生物の世界だ。
補足① アメリカの製品フルミスト(インフルの霧?)は第一三共が日本でのライセンスを取って、承認申請中だそうだ。ウイルスを不活化した経鼻ワクチンは阪大微研が開発中。
補足② アメリカの製品を個人輸入して使う事はお勧めしない。何か起きても保証がないし、生ワクチンは保存の仕方が悪いと劣化しやすいので。
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/01/25/9028880
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/01/29/9030231
簡単に言うと、ワクチンの種に使う元々のインフルエンザウイルスは効果があるのだが、ウイルスを増やすために卵で培養しているうちに、ウイルスが変化してしまうため、製品になったワクチンは、一番タチが悪くて流行も激しいA香港型にはほとんど効果が期待できないということだ。
ウイルスの質の低下を防ぐには、培養に卵ではなく細胞を使う方法がある。だが、武田薬品は細胞培養季節性インフルエンザワクチンの日本での開発を中止した。おそらく、高い、細胞は品質のばらつきの管理がめんどう、品質を保つのが難しいなど大量生産に不向きなのだろう。
で、期待されているのはアメリカで実用化されている経鼻ワクチン。いわゆる鼻にシュッというやつだ。
今のワクチンだって、ほとんど意味がないくらいにしか効かないというだけで、全く効かないわけではない。そして、質の問題は量で補えるのだ。インフルワクチンを注射して体内にできる抗体が、流行中のインフルのウイルスに対して本来の力の64分の1、128分の1しか効果がないとしても、濃さが1000倍なら効く。擬人化すると、ワクチンでできた抗体1人1人がダメ兵士でもものすごい人数を投入できればウイルスに勝てるのだ。
インフルウイルスはのどや鼻の粘膜から感染する。経鼻ワクチンは、その粘膜にワクチンウイルスを直接吹きかけるのだ。しかもアメリカの製品は生ワクチンなので、非常に強く反応して抗体が大量にできる。強すぎて熱が出ちゃうぐらいだ。インフルウイルスが鼻や口から侵入しようとしても、そこにすごい数の抗体が集結して待ち構えている。流行しているウイルスとワクチンのウイルスで遺伝子が少々違っていても構わない。感染阻止の効果まであるという。
日本でも開発中で昨年辺りから承認申請のニュースがちらほら出ている。いままでの注射ワクチンよりはマシじゃないかと期待している。ただし、日本のはアメリカのような生ワクチンではなく、ウイルスを壊して使う不活化ワクチンなので、アメリカの物よりは効果が弱いかもしれない。こればっかりは使ってみない事にはなんとも言えないのが医学生物の世界だ。
補足① アメリカの製品フルミスト(インフルの霧?)は第一三共が日本でのライセンスを取って、承認申請中だそうだ。ウイルスを不活化した経鼻ワクチンは阪大微研が開発中。
補足② アメリカの製品を個人輸入して使う事はお勧めしない。何か起きても保証がないし、生ワクチンは保存の仕方が悪いと劣化しやすいので。
小野田寛郎・元日本兵の追悼記事 最後の社会部記者鍛治壮一第3回 ― 2020年02月02日 16:36

<3つの29年>
今回は鍛治壮一の一番最近の新聞記事を紹介する。6年前に亡くなった最後の日本兵・小野田寛郎元少尉の追悼文だ。小野田さんは上官の命令でフィリピンの孤島に赴き、1945年に日本が全面降伏した後も、ジャングルで29年間戦い続けた。新聞社に29年勤めた鍛治壮一は、定年退職後も航空ジャーナリストとして取材と執筆を続けていた。この記事を書いたのは奇しくもフリーになってから29年目だった。
(専用ブログはこちら→ https://kajisoichi.hatenablog.com/)
小野田寛郎さん 元日本兵 1月16日死去・91歳
◆大義名分離れた余生
小野田さんが説得に来た上官の指示で「残置諜者」の任務を離れ、ルバング島の比空軍基地で記者会見したのは1974年3月10日。特派員としてその場に立ち会った。眉ひとつ動かさず、不動の姿勢。同じように2年前、グアム島で会った元洋服仕立て職人の横井庄一さんとは異質なものを感じた。
将校らしく、質問に対して任務、命令、判断など簡潔に答える中、感情を示したのは3回。「29年間でうれしかったことは」との質問に「一度もありません」と怒りの表情。外国人記者が「軍刀を抜いてみせて」と頼むと、サビて刃こぼれしているさまを恥じる様子を見せた。そして何より、2年前に警察隊との銃撃で死亡した部下の小塚金七・元1等兵について聞かれると「警察はまだ来てないという私の判断ミス」と声を落とした。
何度にも渡る捜索で発見できず、2度も戦死公報が出た。捜索隊が置いていく新聞などで日本の状況を知っていたというのになぜ、60キロの「所帯道具」を背負って移動し隠れ続けたのか。帰国後、毎年末の自衛隊の懇親会で顔を合わせる中、当時について口が堅くなっていた小野田さんに改めて聞いたことがある。
その時語ったのが「死ぬのを避けるために戦い続けた」という言葉と、長く行動を共にした小塚さんを守れなかった悔いだった。「敵地で生き延び、友軍復帰を待つ」という任務の下、あらゆる情報戦を想定し、地元住民も敵と考えざるを得なかった。
戦後、もっと上の階級で責任逃れした軍人も多い中、古武士然としたたたずまいから実直さがにじみ出た小野田さん。22年後の96年に現地を再訪して和解と歓迎の行事に臨んだのは、何より幸せな出来事だっただろう。(元毎日新聞記者、鍛治壮一)
この記事を読んだライバル紙の追悼欄担当者が「参考にさせてもらいます」と言っていた。80歳を過ぎて新聞に記事を書いている元新聞記者は珍しいだろう。
さて、次回は、鍛治壮一が航空専門誌に書いたこの小野田さんの取材合戦の裏側。米ベル社の軍用ヘリ・UH-1イロコイが大活躍する。(鍛治信太郎)
今回は鍛治壮一の一番最近の新聞記事を紹介する。6年前に亡くなった最後の日本兵・小野田寛郎元少尉の追悼文だ。小野田さんは上官の命令でフィリピンの孤島に赴き、1945年に日本が全面降伏した後も、ジャングルで29年間戦い続けた。新聞社に29年勤めた鍛治壮一は、定年退職後も航空ジャーナリストとして取材と執筆を続けていた。この記事を書いたのは奇しくもフリーになってから29年目だった。
(専用ブログはこちら→ https://kajisoichi.hatenablog.com/)
小野田寛郎さん 元日本兵 1月16日死去・91歳
◆大義名分離れた余生
小野田さんが説得に来た上官の指示で「残置諜者」の任務を離れ、ルバング島の比空軍基地で記者会見したのは1974年3月10日。特派員としてその場に立ち会った。眉ひとつ動かさず、不動の姿勢。同じように2年前、グアム島で会った元洋服仕立て職人の横井庄一さんとは異質なものを感じた。
将校らしく、質問に対して任務、命令、判断など簡潔に答える中、感情を示したのは3回。「29年間でうれしかったことは」との質問に「一度もありません」と怒りの表情。外国人記者が「軍刀を抜いてみせて」と頼むと、サビて刃こぼれしているさまを恥じる様子を見せた。そして何より、2年前に警察隊との銃撃で死亡した部下の小塚金七・元1等兵について聞かれると「警察はまだ来てないという私の判断ミス」と声を落とした。
何度にも渡る捜索で発見できず、2度も戦死公報が出た。捜索隊が置いていく新聞などで日本の状況を知っていたというのになぜ、60キロの「所帯道具」を背負って移動し隠れ続けたのか。帰国後、毎年末の自衛隊の懇親会で顔を合わせる中、当時について口が堅くなっていた小野田さんに改めて聞いたことがある。
その時語ったのが「死ぬのを避けるために戦い続けた」という言葉と、長く行動を共にした小塚さんを守れなかった悔いだった。「敵地で生き延び、友軍復帰を待つ」という任務の下、あらゆる情報戦を想定し、地元住民も敵と考えざるを得なかった。
戦後、もっと上の階級で責任逃れした軍人も多い中、古武士然としたたたずまいから実直さがにじみ出た小野田さん。22年後の96年に現地を再訪して和解と歓迎の行事に臨んだのは、何より幸せな出来事だっただろう。(元毎日新聞記者、鍛治壮一)
この記事を読んだライバル紙の追悼欄担当者が「参考にさせてもらいます」と言っていた。80歳を過ぎて新聞に記事を書いている元新聞記者は珍しいだろう。
さて、次回は、鍛治壮一が航空専門誌に書いたこの小野田さんの取材合戦の裏側。米ベル社の軍用ヘリ・UH-1イロコイが大活躍する。(鍛治信太郎)
そりゃ効くかも 新コロナにエイズ薬 ― 2020年02月03日 12:17

タイ政府「新型肺炎、エイズ・インフル薬で症状改善」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55159240S0A200C2FF8000/
そりゃあ、効くかもしれない。
エイズ治療薬の方(ロピナビル・リトナビル合剤)は、プロテアーゼ阻害剤といって、ウイルスなら必ず持ってるはずの酵素に作用する。インフル薬のタミフルは、ウイルスの膜表面のノイラミニダーゼという酵素に作用する。コロナウイルスが、インフルと似たような細胞表面の膜たんぱくを利用して細胞に侵入していれば似たような酵素を利用しているはず。
ただし、機能が同じ酵素でも、ウイルスの種類が違えば、酵素の形がそれぞれ違う。その酵素に作用して働きを抑える阻害剤もウイルスごとに特化して作るのが本来だ。
異なるウイルスでもたまたま酵素の形が似ていて効くことがある。実際、エイズウイルス(HIV)用に作られた薬がB型肝炎ウイルス(HBV)にもよく効くのでB型肝炎治療に使われている。
ワクチンや新型コロナウイルス専用の抗ウイルス薬を作っている時間的余裕はないから、とりあえず既存の抗ウイルス薬を試してみるというのは賢いかもしれない。でも、患者に使う前に、まず、試験管の中で細胞にウイルスを感染させて実験するべきだ。試験管の中で効果があった薬剤を患者に試すという風にしないと、どの薬が本当に効いたのかよく分からなくなってしまう。まだ、そういうバイオアッセイ系がないのかもしれないが。満屋博明教授が世界で初めてエイズ治療薬を発見できたのも、HIVのアッセイを誰よりも早く作ったからだ。
さらには、新コロナウイルスから酵素を取りだせれば、候補の薬剤が酵素活性を抑えるかどうか直接確かめられる。そこまでやっているうちに騒ぎが収束してしまう気がするが。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55159240S0A200C2FF8000/
そりゃあ、効くかもしれない。
エイズ治療薬の方(ロピナビル・リトナビル合剤)は、プロテアーゼ阻害剤といって、ウイルスなら必ず持ってるはずの酵素に作用する。インフル薬のタミフルは、ウイルスの膜表面のノイラミニダーゼという酵素に作用する。コロナウイルスが、インフルと似たような細胞表面の膜たんぱくを利用して細胞に侵入していれば似たような酵素を利用しているはず。
ただし、機能が同じ酵素でも、ウイルスの種類が違えば、酵素の形がそれぞれ違う。その酵素に作用して働きを抑える阻害剤もウイルスごとに特化して作るのが本来だ。
異なるウイルスでもたまたま酵素の形が似ていて効くことがある。実際、エイズウイルス(HIV)用に作られた薬がB型肝炎ウイルス(HBV)にもよく効くのでB型肝炎治療に使われている。
ワクチンや新型コロナウイルス専用の抗ウイルス薬を作っている時間的余裕はないから、とりあえず既存の抗ウイルス薬を試してみるというのは賢いかもしれない。でも、患者に使う前に、まず、試験管の中で細胞にウイルスを感染させて実験するべきだ。試験管の中で効果があった薬剤を患者に試すという風にしないと、どの薬が本当に効いたのかよく分からなくなってしまう。まだ、そういうバイオアッセイ系がないのかもしれないが。満屋博明教授が世界で初めてエイズ治療薬を発見できたのも、HIVのアッセイを誰よりも早く作ったからだ。
さらには、新コロナウイルスから酵素を取りだせれば、候補の薬剤が酵素活性を抑えるかどうか直接確かめられる。そこまでやっているうちに騒ぎが収束してしまう気がするが。
3巻はヴィラがそれらしくなった サンダーバード秘密基地を組み立て ― 2020年02月03日 22:32

昨冬のインフルワクチンは壊滅的に効かなかった事をコソッと載せる国立感染研 ― 2020年02月04日 13:43

インフルエンザワクチンは、一番タチが悪く流行も激しいA香港型には効果がほとんどない事を以前に書いた。その時は2シーズン前、2018年度のデータを紹介した。最新のデータを見るため、久しぶりに国立感染症研究所のサイトをのぞいたら、昨年度のワクチンは近年でも稀にみるどうしようもなく効かないワクチンだったという実験結果がコッソリ載っていた。
なぜ効かないか。理由は簡単に言うとこうだ。WHOが推奨する、ワクチンの元になる種ウイルス自体は、もしも、それをそのまま注射したとすれば結構よく効く(図左の青が多い円グラフ)。この種ウイルスからワクチンを作る際、卵を使って培養するのだが、卵の中で増やすとウイルスが変化してしまう。結果、製造されたワクチンは流行しているA香港型にはほとんど効かない(図右の赤が多い円グラフ)。
流行しているウイルスとワクチンのウイルスが近いほどよく効く。この図の倍率はウイルス同士がどれぐらい遠いかを示しており、4倍以内であればおおむね効くとされるが、8倍以上で効きが悪くなり、32倍以上になるとほとんど効かないそうだ。
で、昨年度用の結果は、流行したウイルスを100種類ほど分離して実験したら、何と98%が16倍以上という壊滅的結果(残り2%も8倍以上)。ここ何年かでここまで真っ赤な円グラフは見た覚えがない。ずるいのは、16倍以上でくくっているので、32倍以上、64倍以上、・・・が何%ずつか分からない事。これでは気休めにもならないだろう。
昔から問題なのだが、ワクチンを製造した段階で、元の種ワクチンとどれぐらい違っているか実験で分かる事だ。効きそうにもない欠陥商品と分かっていても出荷せざる得ないのだ。ワクチンメーカーも生活かかってるので、もし、効かないなら売れないという事になると、大して利益のないワクチン製造をするメーカーがいなくなってしまう。
しかし、この結果を10月ぐらいにそっとHPに載せてだんまりの感染研て。
https://www.niid.go.jp/niid/images/flu/antigenic/20191001/2.jpg
インフルエンザウイルス流行株抗原性解析と遺伝子系統樹 2019年10月1日
https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-antigen-phylogeny/9139-2019-10-1.html
インフルワクチンが効かない真の理由 製法に欠陥
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/01/25/9028880
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/01/29/9030231
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/01/9209055
補足 倍率の意味
感染研の説明を見ただけではこの倍率がどういう事か分からないだろう。
フェレットにワクチン用のウイルスを注射すると、血液中にそのウイルスを専門的に攻撃する抗体ができる。その抗体が実際に流行したウイルスにどれぐらい効くかでワクチンの効果を判定しているのだ。
抗体ができているフェレットの血液から上澄みの血清を採る。この血清と元のウイルスを混ぜると抗体とウイルスが目で確認できる反応を起こす。そこで、血清を10倍、20倍、40倍、80倍、・・・と半分ずつに薄めていく。どこまで薄めても反応が確認できるかで抗体の強さをみる。
https://www.niid.go.jp/niid/images/flu/antigenic/explanation/1.jpg
結果の見方の図にあるように、例えば、2560倍まで薄めても反応が見られたとする。この同じ血清に対し、実際に流行したウイルスで同じテストをする。640倍までしか反応しなかったとしたら、その倍率は4倍。160倍までだったら16倍だ。この倍率が大きいほどワクチンによって作られた抗体は流行したウイルスに対する攻撃力が弱い。本来はワクチンウイルス専用である抗体が、流行ウイルスの事を自分の担当しているウイルスではないと認識しているのだ。ワクチンの元になった種ウイルスで作った抗体は、流行ウイルスを同じか非常に近いウイルスと思って攻撃するのに、卵で培養した後のワクチン製造用ウイルスで作った抗体は流行ウイルスをかなり遠い親戚と見ている。
ちなみに日本の季節性インフルエンザ用ワクチンは、A香港型、A新型、B型の3種類のウイルスを混合したもので、A新型とB型にはまあ効いてるかもしれない。
なぜ効かないか。理由は簡単に言うとこうだ。WHOが推奨する、ワクチンの元になる種ウイルス自体は、もしも、それをそのまま注射したとすれば結構よく効く(図左の青が多い円グラフ)。この種ウイルスからワクチンを作る際、卵を使って培養するのだが、卵の中で増やすとウイルスが変化してしまう。結果、製造されたワクチンは流行しているA香港型にはほとんど効かない(図右の赤が多い円グラフ)。
流行しているウイルスとワクチンのウイルスが近いほどよく効く。この図の倍率はウイルス同士がどれぐらい遠いかを示しており、4倍以内であればおおむね効くとされるが、8倍以上で効きが悪くなり、32倍以上になるとほとんど効かないそうだ。
で、昨年度用の結果は、流行したウイルスを100種類ほど分離して実験したら、何と98%が16倍以上という壊滅的結果(残り2%も8倍以上)。ここ何年かでここまで真っ赤な円グラフは見た覚えがない。ずるいのは、16倍以上でくくっているので、32倍以上、64倍以上、・・・が何%ずつか分からない事。これでは気休めにもならないだろう。
昔から問題なのだが、ワクチンを製造した段階で、元の種ワクチンとどれぐらい違っているか実験で分かる事だ。効きそうにもない欠陥商品と分かっていても出荷せざる得ないのだ。ワクチンメーカーも生活かかってるので、もし、効かないなら売れないという事になると、大して利益のないワクチン製造をするメーカーがいなくなってしまう。
しかし、この結果を10月ぐらいにそっとHPに載せてだんまりの感染研て。
https://www.niid.go.jp/niid/images/flu/antigenic/20191001/2.jpg
インフルエンザウイルス流行株抗原性解析と遺伝子系統樹 2019年10月1日
https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-antigen-phylogeny/9139-2019-10-1.html
インフルワクチンが効かない真の理由 製法に欠陥
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/01/25/9028880
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/01/29/9030231
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/02/01/9209055
補足 倍率の意味
感染研の説明を見ただけではこの倍率がどういう事か分からないだろう。
フェレットにワクチン用のウイルスを注射すると、血液中にそのウイルスを専門的に攻撃する抗体ができる。その抗体が実際に流行したウイルスにどれぐらい効くかでワクチンの効果を判定しているのだ。
抗体ができているフェレットの血液から上澄みの血清を採る。この血清と元のウイルスを混ぜると抗体とウイルスが目で確認できる反応を起こす。そこで、血清を10倍、20倍、40倍、80倍、・・・と半分ずつに薄めていく。どこまで薄めても反応が確認できるかで抗体の強さをみる。
https://www.niid.go.jp/niid/images/flu/antigenic/explanation/1.jpg
結果の見方の図にあるように、例えば、2560倍まで薄めても反応が見られたとする。この同じ血清に対し、実際に流行したウイルスで同じテストをする。640倍までしか反応しなかったとしたら、その倍率は4倍。160倍までだったら16倍だ。この倍率が大きいほどワクチンによって作られた抗体は流行したウイルスに対する攻撃力が弱い。本来はワクチンウイルス専用である抗体が、流行ウイルスの事を自分の担当しているウイルスではないと認識しているのだ。ワクチンの元になった種ウイルスで作った抗体は、流行ウイルスを同じか非常に近いウイルスと思って攻撃するのに、卵で培養した後のワクチン製造用ウイルスで作った抗体は流行ウイルスをかなり遠い親戚と見ている。
ちなみに日本の季節性インフルエンザ用ワクチンは、A香港型、A新型、B型の3種類のウイルスを混合したもので、A新型とB型にはまあ効いてるかもしれない。
女神の納豆,分厚い油揚げ 第2の故郷の物産展 ― 2020年02月06日 13:19

福島の物産展をやっていた。厚揚げかと思えば分厚い油揚げ。女神の納豆。喜多方ラーメン。ブロッコリーとカリフラワーのアイノコの変な野菜。最近はやりらしい。あんぽ柿もあった。
東京以外で初めて住んだのが福島。入社の時、初任地は忘れられないモノだと言われた。大学生に毛が生えたぐらいの社会人1年生がかます天然ボケを温かく見守ってくれた。
福島を離れてからも東北道や常磐道を運転して、スキー場や温泉、尾瀬、そして、馴染みの店を訪れた。盆も正月も東京の実家以外に帰る田舎のなかった自分にとっては第2の故郷のモノが売ってるとつい買ってしまう。
ところが、会社の冷蔵庫に入れたまま持って変えるのを忘れてしまった。
ちなみに祖父は兵庫県須磨の出身だが、幼少期に東京に丁稚奉公に出されて以来、ルーツの家系は絶えてしまった。母方のルーツは紀伊田辺だが、こちらも同様。大叔父(母方の祖父の弟)の一族が千葉にいるぐらい。親戚はみな都内にいて、法事なども麹町や四谷に集まる。就職するまでは年間330日ぐらい東京にいて、他県に出るのは部活の合宿で7泊、スキーで3泊など。10日以上連続で東京を離れた記憶がない。
「夏休みや正月に海や山にタダで泊まれる所がある人がうらやましい」なんて言ったら、苦労してる全国の長男の嫁に怒られるのだろうか?
東京以外で初めて住んだのが福島。入社の時、初任地は忘れられないモノだと言われた。大学生に毛が生えたぐらいの社会人1年生がかます天然ボケを温かく見守ってくれた。
福島を離れてからも東北道や常磐道を運転して、スキー場や温泉、尾瀬、そして、馴染みの店を訪れた。盆も正月も東京の実家以外に帰る田舎のなかった自分にとっては第2の故郷のモノが売ってるとつい買ってしまう。
ところが、会社の冷蔵庫に入れたまま持って変えるのを忘れてしまった。
ちなみに祖父は兵庫県須磨の出身だが、幼少期に東京に丁稚奉公に出されて以来、ルーツの家系は絶えてしまった。母方のルーツは紀伊田辺だが、こちらも同様。大叔父(母方の祖父の弟)の一族が千葉にいるぐらい。親戚はみな都内にいて、法事なども麹町や四谷に集まる。就職するまでは年間330日ぐらい東京にいて、他県に出るのは部活の合宿で7泊、スキーで3泊など。10日以上連続で東京を離れた記憶がない。
「夏休みや正月に海や山にタダで泊まれる所がある人がうらやましい」なんて言ったら、苦労してる全国の長男の嫁に怒られるのだろうか?
騒ぎすぎ,新インフル騒動を忘れたのか,が医師らの本音 ― 2020年02月07日 12:37

新型肺炎 「症状、少し重いインフル」「抗HIV薬使った」 国立国際医療研究センター・大曲貴夫医師
https://mainichi.jp/articles/20200206/ddm/041/040/073000c
この記事は医者の正直な本音を初めてメジャーなメディアで見た気がする。
先週、元記者のフリー科学ジャーナリストに会った。医師たちと話すと「新型コロナウイルスなんてそれほどでもないのに騒ぎすぎ。新型インフルの時の大騒動をもう忘れたのか」と口々に言ってるそうだ。
私もその意見に賛成で、自己責任のみで自由に書けるブログには本心を書く。では、大きな力と責任を伴うマスメディアでその通り書けるかと言われれば、無理。まだ証拠がないからだ。この記事の医師だって非常に遠回しに本音を言っている。
それに、マスメディアでは新人記者時代、「小さな事を騒ぎすぎて責められる事はないが、大きな事を騒がなかったらメチャメチャ怒られる」という習性をたたき込まれる。騒がないのは不可能。
現場の医師には長年の経験からの相場観がある。長年医師の話を聞いてきた科学ジャーナリストにもある。栄養状態のいい健康な大人にとってはほとんど脅威ではないだろう。無症状の不顕性感染も多く、症状が軽くて気づかないケースも結構あると思う。熱が出ても脱水状態にならないように水分をよく取って、暖かくして寝てれば治るだろう。
「喉の痛みと鼻水の症状が出た。2日後に悪寒、37.1度の微熱。6日間ほど微熱が続き、今は軽快」というのは、インフルで39度、40度の熱に苦しんだ経験からすると「少し重いインフル」はちょっと大げさではと思うが、そもそもインフルもごく軽いカゼのような症状が意外に多いのだろう。この医師は肺炎を起こす確率が若干インフルより高いと見ているのではないか。
もっとはっきり本音を報道するためには証拠集めが重要。例えば、例のクルーズ船でウイルス検査を徹底的にやって感染者の症状の内訳を出す。仮に、3700人中、1000人が感染していたとして、全く症状なし40%、ちょっとのどがはれる、微熱など軽微が35%、高熱や肺炎の兆候などはっきりした症状は25%、重症化例なし。とまあ、こんな具合に出れば、チョッとこわいカゼぐらいということになる。カゼは万病の元。肺炎で死ぬお年寄りもいるんだから、侮ってはいけないが。
フィリピンで死亡した男性は40代だし、セブ島に来るぐらいだから、食うや食わずって事はないだろう。抵抗力が弱くなるような持病がなかったかなどの情報がほしい。香港で亡くなった30代男性は糖尿病だったという情報がある。
https://mainichi.jp/articles/20200206/ddm/041/040/073000c
この記事は医者の正直な本音を初めてメジャーなメディアで見た気がする。
先週、元記者のフリー科学ジャーナリストに会った。医師たちと話すと「新型コロナウイルスなんてそれほどでもないのに騒ぎすぎ。新型インフルの時の大騒動をもう忘れたのか」と口々に言ってるそうだ。
私もその意見に賛成で、自己責任のみで自由に書けるブログには本心を書く。では、大きな力と責任を伴うマスメディアでその通り書けるかと言われれば、無理。まだ証拠がないからだ。この記事の医師だって非常に遠回しに本音を言っている。
それに、マスメディアでは新人記者時代、「小さな事を騒ぎすぎて責められる事はないが、大きな事を騒がなかったらメチャメチャ怒られる」という習性をたたき込まれる。騒がないのは不可能。
現場の医師には長年の経験からの相場観がある。長年医師の話を聞いてきた科学ジャーナリストにもある。栄養状態のいい健康な大人にとってはほとんど脅威ではないだろう。無症状の不顕性感染も多く、症状が軽くて気づかないケースも結構あると思う。熱が出ても脱水状態にならないように水分をよく取って、暖かくして寝てれば治るだろう。
「喉の痛みと鼻水の症状が出た。2日後に悪寒、37.1度の微熱。6日間ほど微熱が続き、今は軽快」というのは、インフルで39度、40度の熱に苦しんだ経験からすると「少し重いインフル」はちょっと大げさではと思うが、そもそもインフルもごく軽いカゼのような症状が意外に多いのだろう。この医師は肺炎を起こす確率が若干インフルより高いと見ているのではないか。
もっとはっきり本音を報道するためには証拠集めが重要。例えば、例のクルーズ船でウイルス検査を徹底的にやって感染者の症状の内訳を出す。仮に、3700人中、1000人が感染していたとして、全く症状なし40%、ちょっとのどがはれる、微熱など軽微が35%、高熱や肺炎の兆候などはっきりした症状は25%、重症化例なし。とまあ、こんな具合に出れば、チョッとこわいカゼぐらいということになる。カゼは万病の元。肺炎で死ぬお年寄りもいるんだから、侮ってはいけないが。
フィリピンで死亡した男性は40代だし、セブ島に来るぐらいだから、食うや食わずって事はないだろう。抵抗力が弱くなるような持病がなかったかなどの情報がほしい。香港で亡くなった30代男性は糖尿病だったという情報がある。
大阪人かっ!! (写真で一言) ― 2020年02月08日 10:20

営業の人が軽い接待に使うような老舗のちょっとコジャレた洋食屋。そもそも大阪人なら「高っ!」と言って入らないだろうけどね。
↓街中華には、焼飯(チャーハン付)というメニューがあるそうだが。
https://rocketnews24.com/2019/09/28/1270926/
↓街中華には、焼飯(チャーハン付)というメニューがあるそうだが。
https://rocketnews24.com/2019/09/28/1270926/
クイズ:今後民間人が最新鋭戦闘機に乗る事はない ナゼ? 最後の社会部記者鍛治壮一 ― 2020年02月09日 09:19

突然だが、クイズ。日本の民間人で初めて、当時の最新鋭戦闘機F15に乗った鍛治壮一はその体験記を航空専門誌や一般の雑誌などに書いた。それを見たどこかの雑誌だかテレビ局だかが企画をパクって米空軍に申し込んだ。もちろん断られた。航空と防衛の専門記者として相当な実績がある鍛治壮一でさえ乗せてもらえたのは幸運なのだ。悔し紛れに「鍛治壮一はCIAなんじゃないか」とウワサしたと聞いた。
その後、年月が経ってF15も最先端機密ではなくなってからは割りに認められるようになったらしい。軍はどうしてもマイナスイメージがあるので、意外に広報活動に熱心なのだ。
だが、今後、米軍や航空自衛隊の最新鋭戦闘機に民間人が体験搭乗できる可能性はほぼない。せいぜいシミュレーターの体験をさせてもらえるぐらいまでだろう。一般民間人はおろか、国防長官や防衛大臣でも無理。それはなぜか?
答えはこちらの専用ブログ→ https://kajisoichi.hatenablog.com/
その後、年月が経ってF15も最先端機密ではなくなってからは割りに認められるようになったらしい。軍はどうしてもマイナスイメージがあるので、意外に広報活動に熱心なのだ。
だが、今後、米軍や航空自衛隊の最新鋭戦闘機に民間人が体験搭乗できる可能性はほぼない。せいぜいシミュレーターの体験をさせてもらえるぐらいまでだろう。一般民間人はおろか、国防長官や防衛大臣でも無理。それはなぜか?
答えはこちらの専用ブログ→ https://kajisoichi.hatenablog.com/
マスク効果無し論文を有効論文だと言い張る困った人 ― 2020年02月09日 17:28

研究者の間ではマスクにインフルなどの感染症の予防効果がない事は常識だ。
で、これもマスクに効果が見られなかったという論文なのだが、この論文の図を見て「マスクは有効だ」という論文だと強行に言い張る人がいて手を焼いた。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20088690
http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.325.7396&rep=rep1&type=pdf
冒頭のアブストラクト(要旨)に
Face mask use alone showed a similar reduction in ILI compared with the control group, but adjusted estimates were not statistically significant.
と書いてある。マスクの使用だけではインフルへの有効性は見られなかったという趣旨だ。その人はstatistically significantの意味が分からないのだろうか? 「有意差はなかった」の意味が分からない人がなぜこの論文を読もうと思ったのか。図だけ見て、本文を読まないとかあるのだろうか。
この論文の内容をざっくり説明するとこうだ。
約1400人を、1)マスクを着けるだけの人、2)マスクを着け、手を洗う人、3)何もしない人、の3つに分け、インフルエンザの発生率を見た。
すると、マスク+手洗いのグループ(2)は、何もしないグループ(3)よりインフルの発生が少なかった。だが、マスクだけ(1)だと効果がなかったという結果だ。困るのは、この実験では、手を洗うだけでマスクをしないグループがない。だから、マスクだけでは効果がないと言えるが、(a)手を洗うだけで十分効果があってマスクは無関係なのか、(b)手洗いとマスクが合わさって初めて効果が出るのか、(c)手洗いだけでも効果があるがマスクで上乗せがあるのか、この実験では区別がつかない。
図を見ると、マスクだけでも少し発生が下がっているように見えるが、要旨にあるように、統計的な処理(例えば、年齢の偏りを調整するなど)を加えると有意差がなかったという結論だ。
で、これもマスクに効果が見られなかったという論文なのだが、この論文の図を見て「マスクは有効だ」という論文だと強行に言い張る人がいて手を焼いた。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20088690
http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.325.7396&rep=rep1&type=pdf
冒頭のアブストラクト(要旨)に
Face mask use alone showed a similar reduction in ILI compared with the control group, but adjusted estimates were not statistically significant.
と書いてある。マスクの使用だけではインフルへの有効性は見られなかったという趣旨だ。その人はstatistically significantの意味が分からないのだろうか? 「有意差はなかった」の意味が分からない人がなぜこの論文を読もうと思ったのか。図だけ見て、本文を読まないとかあるのだろうか。
この論文の内容をざっくり説明するとこうだ。
約1400人を、1)マスクを着けるだけの人、2)マスクを着け、手を洗う人、3)何もしない人、の3つに分け、インフルエンザの発生率を見た。
すると、マスク+手洗いのグループ(2)は、何もしないグループ(3)よりインフルの発生が少なかった。だが、マスクだけ(1)だと効果がなかったという結果だ。困るのは、この実験では、手を洗うだけでマスクをしないグループがない。だから、マスクだけでは効果がないと言えるが、(a)手を洗うだけで十分効果があってマスクは無関係なのか、(b)手洗いとマスクが合わさって初めて効果が出るのか、(c)手洗いだけでも効果があるがマスクで上乗せがあるのか、この実験では区別がつかない。
図を見ると、マスクだけでも少し発生が下がっているように見えるが、要旨にあるように、統計的な処理(例えば、年齢の偏りを調整するなど)を加えると有意差がなかったという結論だ。
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