ゲノム編集のノーベル受賞 3人目は? チャンをあえて外す2019年10月07日 07:35

 今日は、ノーベル賞発表の初日。生理学(と医学)賞の日だ。
 今年のノーベル賞予想、どのサイトを見ても、最有力にゲノム編集技術「CRISPR Cas9」の生みの親、シャルパンティエとダウドナを推している。何年も前から強い候補だが、めぼしい候補がはけてしまったので、いよいよダントツの1番人気になった。さて、この2人は誰でも当たるに決まっているので、三連複の3人目が誰になるか、また、授賞理由の業績タイトルが何になるかまで当ててこそ、真の予想屋だと思う。
 ほとんどの識者や科学記者が3人目として中国系アメリカ人のフェン・チャンを挙げている。シャルパンティエ、ダウドナがCRISPR Cas9のゲノム編集技術を発表した翌年、これが人間の遺伝子編集にも使える事を2人よりちょっとだけ早く発表した。
 だが、私は以前に書いたとおり、別な3人目と違うタイトルを候補を推す。生理学と化学のどちらで授賞するかにもよるが

生理学賞であれば、

3人目は食品会社Danisco社のRodolphe Barrangou
3人の授賞タイトルは「細菌の防御機構の解明(とゲノム編集への応用)」
(「Immune System of Bacteria」、「Bacteria's defense system」といったワードが入る)

 細菌が持つ免疫のような防御機構を発見、解明した事への業績だ。
詳しい事は前回、「ノーベル予想 ゲノム編集名目では出ない タイトルを変えてくるのでは」
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/10/03/9160738
に書いた。CRISPRを最初に見つけた九州大の石野良純教授が3人目というのも期待したいのだが、なかなか厳しい。これが、石野教授とシャルパンティエらの役割が逆で、最初に見つけたのがヨーロッパ人、それをゲノム編集に結びつけたのが日本人なら授賞もありな気がするが。

化学賞であれば、

3人目は第1世代のゲノム編集技術を開発したSrinivasan Chandrasegaran
こちらはずばり「ゲノム編集技術の開発」でいいと思う。

3人目といっても、仕事をした順番から言ったら、どちらも1人目になるはずだ。

 さて、多くの予想屋が3人目をフェン・チャンとする一つの根拠はガードナー国際賞という大きな賞を3人で共同授賞したからだ。予想屋さんたちは、昨年、同じようにラスカー賞がアリソン単独だったからノーベル賞もアリソン単独で本庶さんは外れるだろうと予想した大失敗を忘れてしまったのだろうか。
 生理学賞は、カロリンスカ研究所の教授会で選ばれる。医者や医学研究者たちがかなり癖のある選択をする。お金はすでに十分持っている彼らは名誉が大好きなはずで、さすがノーベルは独自の見識で賞を出すと褒められたいだろう。ガードナーやラスカーの後追いと言われたくなくて、あえて違う組み合わせやタイトルを選ぶ。そんな事はないとどうして言えるだろうか。

アリソン単独に反対した理由は以下

本庶さんノーベル受賞はなかったはずに大反対 アリソン単独が本来というプロの人たち
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2018/12/09/9010083

本庶さん受賞はオプジーボのおかげにも大反対 ノーベル賞はやはりオリジナリティー重視だ
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2018/12/10/9010683


もしも、授賞業績のタイトルがゲノム編集メインではなく、「細菌の防御システムの解明」メインだった場合、科学ニュースのサイトは、ただちにその背景の解説を出してほしいものだ。
 私だったらこんな風に書く。
(続く)

こんなノーベル賞解説がほしい ゲノム編集の背景2019年10月07日 17:49

「ゲノム編集でノーベル」予想シリーズの3回目。授賞業績のタイトルがゲノム編集メインではなく、「細菌の防御システムの解明」メインだった場合、ただちにその背景の解説をニュースサイトに出してほしいものだ。
 私だったらこんな風に書く。

(以下は発表前の仮なので本気にしないでほしい)

 今年の生理学賞は、最有力とされたゲノム編集技術「CRISPR Cas9」を開発したシャルパンティエとダウドナに授賞されると決まった。だが、3人目は大方の予想だったフェン・チャンではなかった。チャンはシャルパンティエらがこの技術に関する論文を発表した翌年、この技術が人間の細胞でも遺伝子の改変に使えることを2人よりやや早く論文にした。
 特許争いではチャンが勝ったが、科学と特許は別だ。日本国際賞などが科学の業績としてはシャルパンティエらの方が先に確立したと評価している。
 しかし、シャルパンティエらの技術も第3世代のゲノム編集技術と呼ばれ、アイデアとしては三番煎じだ。ゲノム編集技術のツールは、特定の遺伝子にくっつく装置と、くっついた場所でその遺伝子を切るはさみからなる。この考え方はは基本的に第1世代から変わっていない。
 同じアイデアでも後から作られた方が使いやすく、世界に広まった。そんな場合、あまり使われてなくても最初に思いついた人のオリジナリティを重視する。それがノーベル賞だ。
 第3世代のシャルパンティエらと第1世代、第2世代をどう組み合わせるかは難問だ。特に第1世代のツールは特許を持つ企業が法外な作成料を取ったことも普及を妨げた。人類と科学の発展に貢献してないではないかと非難する研究者もいる。
 3世代で、特定の遺伝子にくっつく仕組みが違い、シャルパンティエらのCRISPR Cas9は、細菌が細菌に寄生するウイルスの遺伝子を記憶してバラバラにする防御システムだ。これ自体、生物学上の大発見だから、そのくくりにすれば、第1、第2世代のゲノム編集技術は考えなくていい。
 また、ノーベル賞の前哨戦のように言われている有名な賞との違いを際立たせ、独自の見識を示せる。そんな思惑も見える組み合わせだ。

 とまあ、こんな解説をぱっとネットに載せれば、単なる発表待ちでない科学ジャーナリズムの見識も示せるのではないか。
 発表はいよいよ6時半ごろに迫った。