データ見逃しでノーベル逃した米国人 惑星発見の物理学賞2019年10月11日 16:13

 今年のノーベル物理学賞が決まったジュネーブ大と同じ頃に同じ方法の観測をしていたグループは他にもあった。ノーベル賞サイトの解説にも出てくるカリフォルニア州立大サンフランシスコ校やUCバークレーのグループ。観測している恒星数などはジュネーブ大より豊富だっただろうから、先入観を持たず、無心にデータと向き合っていたら、受賞者は変わっていたかも。
 惑星を直接見るのは難しいので、ジュネーブ大などの研究者は間接的な方法で探した。それはこんな方法。木星を凌ぐような巨大な惑星であれば、恒星の方も惑星からの引力の影響を受けるので、我々から見て、惑星が恒星の前に来た時と、後ろに来た時で、恒星がほんの少しだけ前後に動く。この前後のゆれの速度をドップラー効果という方法で測った。
 ちなみに当時、「数十光年離れたところにある超巨大なものがカール・ルイスぐらいの速さで前後に動くのを測るという超精密測定だ」と書いた。これは今となっては例えが古い。
 ただし、この方法は地球のような小さな惑星では軽すぎて恒星がほとんど動かないので測定は無理。また、惑星の軌道が我々視線方向に対して水平に近ければいいが、垂直に近いとほとんど観測できない。それでも、近場の恒星を手当たり次第に調べてればいつかは当たるだろうと。
 木星だと1周に12年もかかるので、どのグループも観測には何年もかかるだろうと気長にデータを貯めていた。そんな中、ノーベル賞に決まったジュネーブ大のグループが、ある時、地球から約40光年離れた恒星「ペガスス座51」のデータに小刻みなゆれがある事に気づいた。実は猛スピードで回っている惑星があって、何と4日で1周していたのだ。ジュネーブ大の発見を聞いて、カリフォルニア州立大サンフランシスコ校のグループが1987年から貯めていた自分たちのデータを調べたら同じように惑星が次々に見つかった。