伝統でもヒトは食べちゃダメ ブラック校則2021年02月26日 13:16

伝統でもヒトは食べちゃダメ ブラック校則
東京を離れて初めて住んだのが福島だった。当時、福島県は240数校ある中学のうち、例外の2、3校を除いてすべて男子生徒は丸刈りという校則。普通の県だと、郡部は丸刈りだが、人口の多い市部は違うというのが多かった。郡山市、いわき市、福島市という東北では仙台を除けばまあまあ大きい市でも公立中は全員坊主という異様な光景。福島では中学男子は丸坊主が当たり前で、ほとんど誰もそれに疑問を覚えず、街で見かけてもすぐ中学生と分かるので指導がしやすいといった有り様。
この中学生の丸刈り問題を5回の連載にした。郡山の新設市立中は、丸刈りを強制しない校則を導入しようとしたが、親などの反対にあって挫折した。そこの校長は本音は守旧派。教頭が進歩派。「いずれは親も変わる」と。なぜなら、制服に詰め襟ではなくブレザーを採用したから。丸刈りとブレザーは極めつけに相性が悪く、いずれその違和感が変える力になると期待していた。「福島では中学生は丸坊主と昔から決まっているから急に変えろと言ってもは無理なんです」。
 短いコラムにその言葉を引用し、<首狩り族の保護地域に行ったら、「ここの住人は昔から人間を食べているので急にやめろと言っても無理なんです」と言われた気がした>と書いたのだが、先輩が没に。それぐらいショックを与えないと教育者に分からないと思ったんだが。慣例であろうが昔から受け入れられていようが、間違った事は間違っていると。

◆(池上彰の新聞ななめ読み)身近で論議呼ぶ記事 校則裁判、小さすぎる扱い
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14813156.html

髪形は脱げない 中3女子の凄み2021年02月26日 18:03

髪形は脱げない 中3女子の凄み
 当時、県内のほぼ全中学生男子が坊主という福島県の丸刈り校則連載の第1回は「矢祭中の挑戦」。後に、「合併しない宣言」などユニークな町長、町民で全国的に有名になった矢祭町だ。県内で見たら南のはずれの矢祭中学で、丸刈り校則廃止を公約にした生徒会長が当選し、生徒らによる校則改正が動き出しました。そのクライマックスは、生徒会内部の改正最終案の議論。丸刈り、おかっぱ強制廃止については一致しているが、「髪形は自由とするべき」という生徒会長ら3年生と「長さなどに一定の規則は必要だ」という次期生徒会長ら2年生が激しく対立した。「もし、自由放任で長髪などまで認めてしまって非行に走る生徒が出たらどうするんだ」という2年生(中2でそんな教育委員会寄りみたいなのがいるのかと上司が呆れていた)。
最後に、おもむろに口を開いたのが知性派の3年生女子。
「私たちには学校生活と私生活という2つの生活がある。制服であれば、学校生活で着用し、私生活で私服に着替えることができる。だが、髪形は脱ぐことができない。学校生活における校則で私生活における髪形まで規制されるのはおかしい」(中3ですよ!)。
 校則改正生徒会案は「髪形は自由」で提出された。その中3、中2がいる間は改正が間に合わず、高校生になっていた生徒会長らに会いに行った。
「自分たちの時に間に合わないのは分かっていたけど、後輩たちのためにやったんです」。
また、議論で負けた次期生徒会長は「あの時は反論できなくて悔しい気持ちでしたが、今では心から彼女の意見に賛成しています」。
 連載終了後、新年度から矢祭中は丸刈りが廃止された。校長も相当悩んだようだが、改正校則には髪形について長さなどの規定が入った。教育のプロセスとして、丸刈りが廃止されるかどうか、自由になるかどうか、結果はさほど重要ではない。生徒たちが何かを変えようと動く時、誰か大人からの借り物の頭ではなく、自分たちの脳を使って物事の是非を判断し、決めていく。それが教育なんだと。
 矢祭中の校則改正がニュースになると、「あんな田舎の中学が」と県の教育者に衝撃を与え、その後、雪崩を打つように丸刈り校則は次々と廃止になる。多くがおかしいとは思っていたけど、先頭を切りたくない。学校が荒れたり、何かあるとそのせいにされ、責任を取りたくない。といういかにも日本の公務員的な思考だ。

◆伝統でもヒトは食べちゃダメ ブラック校則
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2021/02/26/9350961

◆くせ毛や栗毛色「地毛証明」都立高の4割 生徒に届け出求める
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210225/k10012885111000.html?fbclid=IwAR0LxZCJOOgjPkEFAzs2jKnZrzeJP6ASOAy202LvzEgCCTynqnmx-LVVHOA