凄まじい反響だった「宝くじの高額当選確率 バラは連番の2.5倍」(1)2.5倍説の最初の発見者は私2018年11月19日 19:50

 まもなく年末ジャンボ宝くじが発売される(11/21)。ので、このブログの最初のテーマは、今から8年前に私が書いた「宝くじの高額当選の確率はバラで買った方が連番より2.5倍高い」という話を取り上げようと思う。
 宝くじに詳しくない人のために説明すると、10枚買う場合、バラは番号がバラバラ、連番は190000番から190009番までのように番号が続いている買い方だ。
 なぜ2.5倍になるのか、内容は小学生にもわかるような理屈だが、それまでこの2.5倍を指摘した人がいなかったせいか、経験したことがないような反響を呼んだ。具体的な数値は言えないんだけど。中には、半年もかけて私の書いた内容を検証した個人サイトもあった。そのサイトも大変なアクセスを稼いだらしい(小学生でもわかることになのになぜ検証に半年もかかるのか不思議なんですが)。このサイトは大変興味深いので後に詳しく取り上げようと思う。
 私が書いて以降は、この知識が急速に広まり、いろいろなサイトにも書かれるようになったようだが、困った面もある。
 2.5倍という数字だけ一人歩きしてしまったのだ。これはこのブログで何度も取り上げることになるだろう「倍率のトリック」の典型例。
 2.5倍って結構大きい印象がある。だが、実際は、「100万分の1」の確率がたかだか「40万分の1」になるぐらいのこと。数学的には意味のある違いでも、日常生活で考えればどっちもほぼゼロみたいなもんだ。
 そこで、ここで改めてなぜ2.5倍になるのかを取り上げ、さらにはなぜ、この小学生でもわかるような理屈を指摘する人がそれまでいなかったのか、という謎にも迫りたい。私は8年前に書くに当たっていろいろなサイトや文献を探したが、2.5倍という数字を書いているものが見つからなかった。もしも、2010年の11月より前にこれ(バラの方が2.5倍)を書いていた本なり、サイトなりを知っている人がいたら、ぜひ教えてほしい。

 まずはきっかけから。たぶん、小学校低学年のころ。身近な大人が「宝くじを買おう」と盛り上がった。そのとき、「バラよりも連番で買った方が1等と前後賞総取りできるから得だ」と言っていたのだ。
 これはおかしい。子供心に思った。買い方によって結果の損得があるはずがない。だが、当時の私はまだ確率について知識がほとんどなく、どうおかしいのか、具体的に説明や証明ができなかった。
 なぜそれがあり得ないのか、明確な論理を組み立てることはできないが、そんなことがあったら数学的、科学的におかしい。そう思う心が「科学する心」である。
 そして、科学する心は予見する。狭い範囲だけを覗いていると一方が得しているように見えるが、その分、どこか別な場所で損していて、広い範囲を眺めると結局全体でバランスが取れているはずだ、と。

(2)に続く
凄まじい反響だった「宝くじの高額当選確率 バラは連番の2.5倍」(2)私の解説以前、ネットには確率は同じと書かれていた
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2018/11/19/9000872

凄まじい反響だった「宝くじの高額当選確率 バラは連番の2.5倍」(2)私の解説以前、ネットには確率は同じと書かれていた2018年11月19日 20:57

 前回、「バラの方が高額当選確率2.5倍というのを初めて指摘したのは8年前の私だ」と書きました。しつこいようですが、その私の2010年11月より前に指摘したものがあるという情報をお持ちの方、ぜひ、お知らせください。
 それを書くより数カ月前のある日、ある質問サイトを見ていたら、「連番とバラで高額当選確率はどちらが高いか」という質問があった。で、その回答の中に「どちらでも確率は同じです」という間違った答えを書いている人がたくさんいた。
 また、確率が違うと書いてる人もどれぐらい違うのかは書いてない。つまり、まともな回答は一つもなかった。
 それが、8年前にこのことを書こうと思った動機だ。
書く時の常套手段だが、そのことに詳しい専門家を見つけ、その人に話を聞いて書く。ところが、いろいろな本やネットなどでいくら探しても連番とバラの高額当選確率について書いたり、言ったりしている専門家がいない。
 そこで、方針変更。まず、自分で答えを出し、その答えが正しいかどうか専門家に検証してもらうという方法を取ることに。
 さて、いきなり年末ジャンボ宝くじで計算するのはあまり賢くない。年末ジャンボは、当時で、100組×10万通り=1000万種類の番号がある。いまは200組に倍増したので、なんと2000万種類。
 こういう時、科学する心は、最小のモデルをつくって答えを出し、後で数をデカくして確かめるというのが割と定番だ。
 そこで、私が1枚100円で、0-99の100枚の宝くじという例を考えた。総額1万円。1等は5000円、前賞、後賞は1500円ずつ。
 さて、連番かバラで10枚買ってみよう。
連番は50~59の10枚。バラは9の倍数(9、18、27、・・・、90)で10枚とした。
 1等の抽選をする。
 連番の場合。もし、1等が51から58までになれば、連番君が1等前後賞総取りで8000円の賞金。その確率は8/100=0.08。1等が50か59なら1等と前か後どちらかの2賞独り占めで、6500円の賞金。確率は2/100=0.02。1等が49か60なら前、後どちらかで、1500円の賞金。確率は同じく0.02。どれかしらに当たる確率は、これら三つの和で、0.12になる。
 バラの場合。1等が9の倍数なら1等あたり。5000円の賞金。確率は10/100=0.1。1等が9の倍数より1多い時(10、19、28など)、前賞あたりで1500円の賞金。確率は同じく0.1。1等が9の倍数より1少ない時も同様で、2000円の賞金、確率0.1。
 バラの場合、絶対、1等と前後賞は重ね取りできないので、どれかしら当たる確率はこれら三つの和で0.3。
 連番の0.12のちょうど2.5倍の確率だ。
9の倍数でなくても、5の倍数でも7の倍数でも変わらない。11、13、15、17、19・・・みたいな複数の賞が重なる可能性のある買い方でない限り、バラがどれかにあたる確率は0.3だ。
 連番は賞を独占して大もうけできる可能性があるが、どれかにひっかかる確率は低い。バラは総取りや二重取りは絶対できないがどれかに当たる確率は連番よりいい。
 幼い日の科学する心が予想した通り、損得のバランスが取れているのだ。
 これを確率の用語では期待値が同じと言う。期待値とは買った額に対して、確率的にいくら戻ってくると期待できるかという値だ。このミニくじでは1枚100円で期待値は80円、10枚1000円なら800円。すべて買い占めた時、1万円の購入額に対して、もらえる賞金総額は8000円で、この比率0.8を還元率や払い戻し率という。期待値は買った額に還元率をかけた額になり、どんな買い方をしても同じなのだ。

さて、(3)では、いよいよこれを実際の年末ジャンボにあてはめてみる。
凄まじい反響だった「宝くじの高額当選確率 バラは連番の2.5倍」(3)年末ジャンボに当てはめると
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2018/11/19/9000881

凄まじい反響だった「宝くじの高額当選確率 バラは連番の2.5倍」(3)年末ジャンボに当てはめると2018年11月19日 21:23

 では、前回の結果を11月21日に発売になる実際の年末ジャンボ宝くじにあてはめてみよう。

 まず、高額当選っていくらなのか決めておこう。10枚買うと出費は3000円。元手3000円なら、3、4等の10万円、100万円でも十分高額だって人もいるかもしれない。しかし、一応、1億を超える1等(7億円)と前後賞(各1億5000万円)を高額当選としよう。
 年末ジャンボは200組×10万枚で、2000万通りの番号がある。この2000万の番号のうち、1等の番号は1つだけ。なので、バラで10枚買うと、1等の当選確率は200万分の1。前後賞も1つずつしかなく、当選確率は同じ。従って、1等前後賞どれかに当たる確率は200万分の3。約67万分の1になる。
 連番の場合、前回とまったく同じような計算手法になり、1等前後賞総額10億円独り占めは、確率2000万分の8。250万分の1だ。1等と前後どちらか二重取りは2000万分の2で、1000万分の1、前後賞どちらか一つも同じく1000万分の1。どれかに当たる確率は3つの和で、500万分の3。約167万分の1。
 バラの方が2.5倍になっていることがわかる。
ところで、年末ジャンボの期待値や還元率はどれぐらいか。1枚300円買って期待値は148円ほど、還元率は49%ほどだ。なんと法律で宝くじの上限が50%と決まっている。

 次回は、8年前の私の指摘を取り上げたあるサイトについて話題にする。なぜ、こんな小学生もわかる簡単な理屈なのに「バラは2.5倍」を私以前に指摘する人がいなかったのか。その謎解きのいいヒントが隠されている。
凄まじい反響だった「宝くじの高額当選確率 バラは連番の2.5倍」(4)他人(私)のふんどしでアクセス集めたブログ
https://kajiyan.asablo.jp/blog/2018/11/19/9000911

凄まじい反響だった「宝くじの高額当選確率 バラは連番の2.5倍」(4)他人(私)のふんどしでアクセス集めたブログ2018年11月19日 22:50

 (1)でも書いたが、8年前の2010年11月、私がこの2.5倍というおそらく初の指摘をすると、即座(ほぼその日のうち)に、ある個人のサイト(ようするにブログだけど)がこれについて取り上げた。
 「宝くじの買い方、連番よりバラの方が当選確率が高い」というタイトル。このブログ主は私が書いたことは「間違いだ」と思って、その誤りを証明するためにブログでその検証を始めたらしい。

 さて、この彼だか彼女だかわからないブログ主は最初の方で「高額当選という言葉」「そもそも、普通の人が日常的にこんな言葉を使うことは少ないはず」と書いている。私も普通の人は「高額当選という言葉」を使わない気がするが、宝くじが好きな人、宝くじへの関心が強い人は高額当選という言葉を使う。実際、そういう質問をQ&Aサイトで見たし。
 このことから、この人は、宝くじにあまり詳しくないらしいとわかる。ただし、確率に変化が起きるみたいな不思議なことを書いているので、確率に関しても生半可にかじっているだけで、確率の専門家ではないようだ。
 そして、この人が最もひっかかっていたのは、私がこれまでの(1)~(3)であえて詳しく解説しなかった「バラだと2つ以上同時にあたることはない」という点だ。
 この2つ以上とは1等、前後賞の3つのうち、どれか2つもしくは全部のこと。
 確かに8年前、私はなぜ同時に当たらないのか説明をしてなかったが、断定する以上は確かな根拠があることを行間から読み取ってほしかった。
 で、結局、この人、その疑問について確定的な答えも得られず、約半年後の2011年6月、ブログに続編を書き、私の2.5倍説について、厳密な証明はできないが正しそうと曖昧な軍配を上げている。そんな曖昧さにもかかわらず、このネタでものすごいアクセス数だったらしい。当時は一般的ではなかった今風の言い方にするとPV荒稼ぎしたようだ(他人のふんどしで)。
 私もこの人よりは確率について正しい知識を持っていると思うが、専門家ではない。だから、私の導いた答えを確率の専門家に検証してもらった上で書いているのだ。
 さて、バラで同時当選はないことを、この人は半年もかけて結局突き止められなかった。私ならそれを確かめるのにおそらく1週間もかからない。それは能力の差の問題ではない。この人と私のやり方に決定的な違いがあるからだ。
 この人はバラについて、ネットだけで答えを探そうとしていた。だが、それはあまり賢いやり方ではない。必要とする答えを得るという目的に照らして、ネットには良質な情報がない場合が多い。
 もしも私なら、どっかヒマそうな宝くじの売り場に行ってそこのおばちゃんかおじちゃんに「バラって、1等と前後賞一緒に当たらないの?」ときく。そうすればすぐ教えてくれるだろう。
 宝くじを買わなければならなくなるのがイヤというなら、気持ちは分かる。それなら宝くじの発売元に電話して聞いてみればいい。彼らはサービス業だからそういう問い合わせに親切に答えてくれるはずだ。電話代の数十円が惜しい? それとも、ブログではあんなに饒舌なネット弁慶だが、知らない人とは会話できない人見知りさんなのだろうか。
 では、種明かしをしよう。バラは本当にバラバラで、でたらめな数字の10枚ではない。いくつかの規則性があるバラバラなのだ。
 まず、バラ10枚の番号で末尾の数字は0から9の10個がそろっている。だから、連番と同じで7等300円が必ず1枚当たる。
 そして、ポイントだ。バラ10枚はすべて組が違う。1等と前後賞は同じ組だから絶対同時には当たらないのだ。
 それ以外にも何か規則性があるらしいが、面倒なので省略。
以上のバラの仕組みについては私も知らなかった。知らなかったから宝くじの専門家に教えてもらったのだ。
 おもしろいことに、確率の方の専門家に私の100枚くじのミニモデルを検証してもらった時、やはり、バラは同時当選がないことを知らずに最初は計算していた。バラは完全にランダムに選ばれた10枚で、その中にたまたま連続する数字が含まれる場合もあると考えてしまいがちなのだ。

 さて、初回(1)の疑問に戻ろう。バラは2.5倍という小学生にもわかるような理屈を2010年11月の私以前に指摘した人がなぜいなかったのか。賢明な人はもうお気づきだと思う。
 答えは簡単だ。
確率を知っていたら宝くじなんて買わない。
そして、宝くじを買う人は確率なんか知らない。
だから、宝くじと確率の両方のことをよく知っている人がいないのだ。
 前回に書いたが、年末ジャンボなどの宝くじの払い戻し率は50%未満。10枚3000円買って期待できる賞金額は1480円ぐらいなのだ。競馬、競艇、パチンコなどあらゆるギャンブルと比べて、もっとも割に合わない。確率を知ってたらもうバカらしくて。
 確率の専門家はそもそも宝くじに興味ないし、バラの仕組みとかよくわからないから、検証してみようなんて思わない。これが意外にロトとかだとそのシステムが数学や確率論の対象として面白いらしい。つまり、「バラは2.5倍」は誰でもわかるようなことだが、誰も考えてみようとしなかったのだ。