工技院長様に政治力などない 「上級国民無罪」のデマに踊らされる人民裁判官な人々2019年04月28日 16:02

 母娘が亡くなった池袋の交通事故で、加害者の通産省工業技術院・元院長87歳が逮捕されない事に正義の使徒なネット住民の怒りが爆発しているらしい。
 翌日に起きた神戸の市バス事故で、同じような事故なのに運転手が即逮捕されると、ネットで騒ぎに。池袋の加害者は「上級国民」だから逮捕されないというデマが拡散した。
 「上級国民って何だ」とツッコミたいのは置いといて、これまで「中級国民」の同様な事故で、加害者が大けがをして入院した場合、逮捕しない例はいくらでもある。また、業務上過失致死よりずっと罪が重い殺人でも、加害者が犯行直後に自殺を図り、入院中は逮捕しなかった例もいくらでもある。これらの加害者の職業は無職、一般会社員、アルバイト、大学生などだ。
 「逮捕しろ」「人殺しが罰を受けないのはおかしい」と叫ぶ人民裁判官のような人たちは逮捕を何か刑罰の一種と勘違いしている。とりあえず手っ取り早いから逮捕という事が多いのは確かだが、本来なら逮捕は捜査の必要上するもの。「神戸の運転手だって証拠隠滅の恐れはない」という主張も見たが、一般論として、単独犯と言える個人の私有車と、市の交通局が刑事責任を追求されるかもしれないバスでは事情が違う。仮定だが、上司が病気や体調不良なのを知っていながら乗務を命じていた場合、運転手を他人と自由に話せる状態に置いたら、「家族や再就職の面倒は見るから」などと言って、運転手に口止めや圧力をかけ証拠隠滅を図る可能性が捨てきれない。
 怒りに燃える人々に「東名高速のあおり運転事故のように悪意を持って故意に人を傷つけようとして重大な事故を誘発した人と、本人にその意図はなかった過失は全然違うでしょう」と言ったら、「そんな事を言うとは信じられない」と叱られた。
 また、実務的に、重症の骨折を負って入院している人間を逮捕して拘留なんてできるのだろうか。後期高齢者ともなると入院で環境が変わったストレスだけでぽっくり逝ってしまう人もいる。無理に逮捕して、もしも、何かあったら、今度は手のひらを返して無理な逮捕を非難するのも人民裁判官な人たちだ。
 大まじめに、これも安倍政権への忖度だろうなどと言ったり、ケガや入院もウソだなどと言い出す始末。病院や警察がウソをついているというのだろうか? 今は終戦直後の混乱期でない。
 そりゃあ、これがもしも、元警察庁長官だったり、元国会議員だったり、財務相の息子だったりしたら、「本当にケガしてるのか」と自分でも思う。
 ワイドショーなどを見ていると、キャスターやアナウンサー達も工技院が何なのかよく分かっていないらしく、説明ができなくて、何だかものすごくエラそーに見えてしまっている。
 今はない工業技術院は、片田舎だったつくば市にある電総研や計量研など15の研究所の元締。現役当時だって大した権力はない。
 東大出の高級官僚と言うが、日本を牛耳って来たのは法学部や経済学部の国家公務員上級職。この人、工学博士とどこかに書いてあったからおそらく工学部出身だろう。
 理系を卑下しているのではない。むしろ、日本は何でこんなに理系の地位が低いのか頭にきている。文系の学生が遊び呆けている間、彼らには理解できないような難しい授業を受けて単位を取り、実験もまじめにしているのに。
 ただ、この怒りの怒濤の背景にあるものを感じる。霞が関の身分の高い役人は、隠れて悪事を働き、ばれてもウソをつき、裏で手を回して罪を免れている。そんな不信感が今の日本に蔓延してしまっているのだ。