安倍政権の褒め所を教えてくれれば褒めるよ2020年09月30日 15:17

安倍政権の褒め所を教えてくれれば褒めるよ
 安倍首相が退陣を表明した日、「マスコミは何故けなすばかりで褒めないのだ」「良い点と悪い点、半々にするべきだ」と怒っている人が結構いた。そういう人たちに「褒めるべき所があるならそれを知らないだけ。どこが良かったのか具体的に教えて」と聞いてみた。「外国の首脳からすごく称賛され、惜しまれている」
? ほかの会社の社長から評判がいいというのは果たして社長の業績として数えられるのだろうか。たとえば、プーチンが安倍政権に感謝するのは当たり前。日本の歴代政権がずっと日本固有の領土と主張としてきた面倒な北方領土で、戦争によってソ連=ロシアの領土になったというロシアの主張を消極的とはいえ容認する政府見解を初めて出した。損して得取れで、2島返還の道筋など実が得られれば業績だが、ただただロシアの実効支配の根拠を強めただけだ。結局、欧米の各国首脳にとって都合のいい首相だっただけで、日本に実質利益をもたらしたのかどうか疑問があり、褒めにくい。
 またある人は「賃金が上がった」という。名目賃金が上がっても実質賃金が上がらなければ意味がないと反論すると「失業率が下がった」という。有効求人倍率がバブル期を超えたと政権は自慢するのだが、それは景気がよくて仕事が増えたのではなく、少子高齢化で労働人口が減った事が原因。と、指摘すると「そんな細かい事はどうでもいい」。世界的な好景気の中で、むしろ、日本の景気回復は世界に比べて鈍く、しかも、日本の経済成長は2018年時点ですでに止まっていた事をかなり最近ようやく政府が認めた。コロナで世界全体の景気が後退したため、うやむやだが、あのまま世界景気が順調ならアベノミクスの限界と破綻がもっとはっきり見えたはずなのだ。
 珍しく、天声人語が経済政策を褒めているというので読んだら、「景気対策に限れば、安倍政権は満点には遠いが及第点だったと筆者は考える」。どうして褒めている事になるのか。。落第にならないぎりぎりの合格点では褒められない。
 株価が上がった事は間違いなく業績。「1億円弱の投資資金がみるみる2倍以上」などアベノミクスでウハウハだった人たちを特集した記事もあったが、そもそも1億の投資資金がある時点で、少数の上澄み国民。国民の多くは恩恵都は無縁、むしろ、苦しくなった人が多い現状では褒めにくい。
 だが、産経新聞の社説ならきっと褒め所がわかるはず。そう思って見てみた。やはり、経済政策については触れていない。「憲法改正の是非を決める国民投票法を成立させ、国民の権利を実質的に広げた」「集団的自衛権の限定行使を容認する安全保障関連法を制定した」などを挙げている。賛否両論の国民の意見が真っ二つに分かれている事を褒めるというのはどうなのか。集団自衛権に関しては反対の方が多かったし、憲法学者も問題だという意見が多かった。
 コロナなどの問題で直近の内閣支持率は30%前後をウロウロしていたのに、辞めると決まったとたん、この7年余りを振り返ればよかったという。具体的に何がよかったのかよく分からないフワフワとした支持なのだ。そこを突き詰めて質問すると、「長期安定して続いた。変化がないから安心できた」という究極の答が返ってきた。