尊敬と好きは違う2021年07月25日 14:50

尊敬と好きは違う
 数年前、「プロの声優200人が選んだスゴイと思う声優ランキング」という特番をテレ朝がやっていた。レジェンド野沢雅子を押さえて1位になったのは山寺宏一だった。ライバルからの評価はファンからの評価より貴重だ。絶対嬉しいはずなのだが、素直に喜べなくて引きつっていた。野沢といえば、ドラゴンボール悟空、悟飯、ゲゲゲの鬼太郎、999の鉄郎、怪物くん・・・。ヒット作の主役を務め続けてきた生けるアニメ史。専門の物まね芸人がいる唯一の声優(*1)ではないか。同じ道のプロが山寺を選んだのは、状況に応じていかなる声も音も出せるその技術力に対する素直な驚嘆からだろう。
 でも、これが、「凄い声優」ではなく「好きな声」だったら全く違う順位になったのではないか。山寺は器用に何でもこなす。だが、一度聞いたら忘れられない声ではない。どんな場面で聞いてもすぐ「あの声だ」とはならない。野沢に限らず、八奈見乗児(ヤッターマンのボヤッキー)など昔の声優はそんな声の持ち主ばかりだった。
 私にとってはボトムズのロッチナやザブングルのふざけた予告である銀河万丈の声と言ってもピンとこないだろうが、なんでも鑑定団のナレーションと言えば誰でも分かるだろう。同じくシスコ司令の声・玄田哲章はターミネーターなどの吹き替え。プリズン・ブレイクの小悪党ティーバックの声・若本規夫はすべらない話のナレーション。どこか壊れたイケメン(俳優で言えば忍成修吾)の声・石田彰。これらの声はどんな場面で出てきても「あ、あの声だ」と瞬時に分かる。
 女性ならエヴァの葛城ミサト(三石琴乃)のナレーション。地獄から来たサイコパスな殺し屋の声・能登麻美子。規範を無視する姫役・早見沙織。口より先に拳でツッコミを入れるバイオレンスなキャラなら追随を許さない戸松遥。
 山寺が役者で言えば「えっ、この役やってるのアレと同じ人?」と驚かせるカメレオン俳優なら、この人たちは、高倉健がどの映画に出ても高倉健でしかないような存在感のある声。ハスキーだったり、ローバリトンだったり、持って生まれた特徴ある声質に独特な発声法が加わって、他人が真似できない声なのだ。
 人気ナンバー1とかで最近よくバラエティーで見かける花澤香菜もかなり特徴的なのだが、上記の人たちほど決定的でない。若手声優に意図的に寄せてるんじゃないかと思うような似た声の持ち主が結構いる。あういう後輩声優たちが声物まねをしたら、「プロ」のマニア(*2)ならともかく私らには区別がつかないだろう。

*注
(1)ルパン三世の山田康雄逝去の後、本物になってしまった声まね芸人・栗田貫一はいるが。
(2)アイドルのマニア「ドルオタ」に対し、声豚(コエブタ)と呼ぶそうだ。