災害時の閣僚交代に何の支障もない事の方が問題では 大臣なんていてもいなくても困らない国2019年09月26日 16:56

 千葉大停電発生の折に内閣改造をやった事に議論が起きている。ワイドショーでの非難と擁護の応酬を見ていてうんざり。双方の前提として、大きな災害が起きている最中に主要な閣僚のほとんどが入れ替わる事には何の支障もないという共通認識がある。被害で困っている人が大勢いるのに進次郎初入閣で浮かれている場合かという感情論だけなのだ。
 災害となれば、自衛隊の緊急出動が必要になるかもしれない。そんな時、自衛隊に関する専門的な知識も経験もない外務大臣が防衛大臣に横滑りする。でも、何も困らない。
 例えば、企業で部長が替わる時、新しい担当について全く未経験な部長が他の部から来る場合、引き継ぎは結構大変だ。異動前から濃い打ち合わせをするし、優秀な人材でも新しい部の業務になれるまでそれなりの日にちがかかる。そう簡単には解決しない大きな厄介事が起きた場合は異動発令日の延期もする。
 ところが、日本の内閣は、ほんの2、3日前に「やってください」と言われた大臣でも務まる。日本では長年やってきた事ですが、先進国の中ではかなり異常だ。アメリカやヨーロッパには、歴史に名が残るような国務長官、大臣などがいる。担当分野に専門知識と経験のある人材が選ばれ、長期務め、その名が冠されるような業績を残すからだ。首相が替わっても続けたり、それどころか政権与党が交代しても替わらない場合すらある(例 ロバート・ゲイツ国防長官 ブッシュ→オバマ政権)。それぐらい大臣の適材適所、職務の継続性は重要なのだ。
 日本のように同じ首相の在任中に閣僚の総取っ換えがしょっちゅうある、しかも、選考基準が派閥からの推薦で、その大臣の仕事にふさわしいかどうかはほとんど関係ないというのもどうかしている。国際会議に出て、就任前から名だたる実績を持つ各国の大臣たちと交渉しなければならないのに、その無能ぶりを遺憾なく発揮してしまう。
 欧米では、新たに選ばれた大統領や首相が特に力を入れたい懸案がある場合、その分野を担当する閣僚は自分の政策をともに実現するのに相応しい知識、経験、能力を持つ人間を連れてくる。あちらでは、閣僚が公然と首相や大統領の方針に異を唱える事があるから、そういう場合は交代させるが、そうでもなければ一度選んだ閣僚をそう簡単にころころ替えない。
 日本でも自民党が一時的に派閥均衡型を止め、相応しい人間を配して長期務めさせる方向に振れた事があるが、安倍政権ですっかり元通りになってしまった。昔に比べ、派閥均衡型がやや薄れ、お友達要因と人気取り要因が濃くなった程度で、その分野に知識と経験の豊富な人材が選ばれていない事は何も変わっていない。
 日本の大臣なんて、いてもいなくても誰も困らないから、内閣改造をいつ何時、何度やっても構わない。その事こそ問題だと指摘するコメンテーターがどこにもいない。
 新環境大臣の「私は先週、大臣になったばかり」は外国のメディア向けとしては最悪の言い訳。環境大臣になる事が決まるよりずっと前から環境大臣になるための勉強をしている、または、勉強するまでもなくよく知っている人材が選ばれるのが国際常識。王族や将軍が就任する非民主的な国家じゃあるまいし。