ニューステの大誤り JAL123便の急減圧はなかった 間違い指摘に反論はなかった2019年08月10日 11:15

 山の日の振り替え休日の8月12日。単独の機体によるものとしては史上最悪の航空機事故が起きた日だ。1985年、日本航空123便が御巣鷹山の尾根に墜落した。
 ニュースステーションという番組があった頃、この123便の事故で「急減圧はなかった」という特集をやったことがある。
 運輸省事故調査委員会による事故原因の概要はこうだ。飛行中、客室内より気圧の低い胴体後部と、気圧の高い客室とを隔てている後部圧力隔壁が破裂。客室から後部に空気が抜けて噴き出し、尾翼が破損。舵を動かす油圧の配管も壊れ、舵が利かなくなった。
 事故原因がそうであれば、空気が抜けた客室内に急減圧が起きたはず。だが、急減圧など起こっていなかった。だから、事故調の結論は間違っているというのだ。
 番組の中で、過去、急減圧を起こして最寄りの空港に緊急着陸した旅客機から降りてきた乗客の映像を流した。カメラを向けて話しかけると、乗客は声が聞こえないというジェスチャーをする。耳が痛くて聞こえないというのだ。過去の急減圧では乗客がみな耳の痛みを訴えているのに、JAL123便ではそんな報告がない。これが急減圧はなかったという根拠だった。
 航空ジャーナリストの鍛治壮一氏が雑誌でこの説は科学的に間違いだと指摘した。
彼は、パイロットなどが訓練を受ける施設を見学し、実際に急減圧の体験をしたことがある。実験室の仕組みを簡単に言うと、密閉された2つの部屋があり、一方の部屋で待機。もう一方の部屋の空気を抜いて薄くする。2つの部屋を隔てている仕切りを一気に開ければ、人のいる方の部屋の空気が抜けて、急減圧になる。
 彼はこれを実際にやってみた。温度と気圧が下がり、煙のような霧が発生する。空気に混じっていた水蒸気が水に戻る現象だ。耳は何ともなかった。
 そう、急減圧では耳は痛くならないのだ。ニューステは何を間違えたのか?
 私は割りに耳が気圧に敏感な方だ。この前、菅平まで車を運転して行った時、痛いとまでは言わないが耳にかなりの圧迫感と違和感を覚えた。車が高所から坂を一気に降りた時だ。耳の中、鼓膜より内側が低圧になっている時、外が高圧になると耳が痛くなる。潜水をする時と同じ。痛くなるのは、気圧の低い高所から気圧の高い低地に降りた時なのだ。
 航空機が急減圧になっても耳は痛くない。過去、急減圧が起きた航空機は高度を急激に下げ、緊急着陸している。急に気圧が上がるから、耳が痛くなるのだ。
 123便は尾翼が壊れて機体の安定が失われ、しかも、舵も利かなくなってよろよろと迷走し、高度1600mほどの地点に墜落した。急降下していないから耳が痛くならなくても不思議ではない。なお、機内の空気が霧のように白くなったという証言もある。
 この番組の問題点は、当時、タレント事務所も兼ねる制作会社が番組を作っていた事だ。テレビ局の報道部門のように事件の取材経験がある記者がいるわけではない。
 彼が雑誌に書いた記事にその番組制作者(おそらくディレクター)からクレームの電話があり、反論を書くと言っていたらしいが、結局、反論は載らなかった。
 ネタ元にはパイロットもいたらしい。その一団の関連はいまだに急減圧がなかったと主張している。さすがに耳が痛くないから説はとっくにやめているが。今度は急減圧の際はすぐ急降下する訓練を受けているのに、急降下してないから急減圧はなかったなどと言っている。機体のコントロールがまともにつく場合のマニュアル通りにできる状況だろうか。