新なコロナ薬 なぜ抗体薬ばかりか2021年09月07日 13:09

新なコロナ薬 なぜ抗体薬ばかりか
 英グラクソの「ソトロビマブ」。また抗体医薬かという感じだが、抗インフル薬・タミフルのような工業的な化合物より抗体の方が安易なのだ。

1)抗体医薬は開発が簡単
コロナウイルスのスパイクたんぱく質などターゲットを決め、これに反応して無力化させるような抗体をつくるのは機械的に誰でもできる(*)。いろいろできた中から、特に効き目のいいものを選別するだけ。タミフルのような人工的化合物を設計するのは大変で、最適化にも時間と手間がかかる。

2)抗体は人体とのなじみがよく、効果が確実でほとんど副作用がない
 抗体はもともと人体の中を無数に回遊しているたんぱく質だから、人体にほとんど害はない(ただし、リウマチやがんに対する抗体医薬のように人の細胞に作用するものは主作用が強すぎて支障が起きる事はある)。また、もともと人体内で働いているものだから確実な効果が期待できる。マウスなどで抗体を作った場合、拒絶反応が起きる事があるが、今はほぼ完全に人間と同じ抗体がつくれる。また、コロナウイルスのたんぱく質など攻撃目標のみに反応する特異性が非常に高く、余計な所に働かない。タミフルなどの人工的な化合物は生体内でどんな挙動をするか予想がつかず、まったく効かないかもしれない。また、全く予想もしなかった臓器や組織、細胞などに作用して問題を起こすこともある。人工的な化合物なので、腎臓や肝臓への負担もある。

3)抗体医薬はバカ高い価格設定が可能
 抗体医薬は純粋な工業的な化合物と違い、大腸菌や動物に作らせるたんぱく質なので原価が高いというイメージからプレミア価格をつけられる。がん免疫療法の抗体医薬オプジーボやキイトルーダのように年間薬価1000万円というのは莫大な開発費を上乗せした価格だろう。比較的古い乳がんや胃がんの治療薬ハーセプチンでも週1の点滴で年間200万円ぐらいかかる。コロナの抗体医薬はそんなに何度も点滴しないが、それでも数万円、場合によって数十万円の値を付けてるだろう。

 つまり、抗体医薬は、治療薬候補探しや開発の手間をあまりかけずに、確実で副作用が少なく、儲けの多い治療薬を作れる方法なのだが、こればかりになると治療費が高額になり、医療費が大変な事になる。

*原始的なものでは、北里柴三郎のころに、蛇の毒を馬やウサギに注射して作っていた血清が抗体医薬。コロナの回復患者の血清を輸血するのも抗体医薬。

◆英GSK、治療薬を承認申請
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15035359.html