ロボットに人を殺させる方法2021年02月01日 14:01

ロボットに人を殺させる方法
SFミステリー史上の最高傑作と言われる「裸の太陽 THE NAKED SUN」(アシモフ)には、ロボット3原則があるのにどうやって戦争をするロボット兵器を作るかというアイデアが登場する。宇宙戦艦で戦争をする場合、ロボットを兵士として乗り込ませると、敵艦への攻撃命令を聞かない。それどころか攻撃を阻止しようとするだろう。人間が乗っている艦への攻撃を放置する不作為は、第1条「また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない」に反し、第1条は第2条(命令への服従)、第3条(自己防衛)より上位の規定だからだ。しかし、戦艦自体をロボット化すれば、ロボット戦艦は、敵艦も自分と同じロボット艦船だと認識し、敵艦内に人間がいるとは考えないであろう。戦争可能なロボットを作ることができる。ロボット労働に依存する宇宙社会の秩序を根底から破壊するため、このアイデアを実現しようとした科学者は大変な非難を受ける。

◆アシモフの傑作が映すコロナ隔離社会
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/08/10/9277225

コロナ調査場所非公開は都民の民度が低いから?2021年02月02日 14:01

コロナ調査場所非公開は都民の民度が低いから?
 厚労省が委託した都の新型コロナ抗体保有率疫学調査に親が当選したので行ってきた。ネット募集のみだから高齢者の当選確率は高いだろうという読みが当たったようだ。当然、自分ははずれた。この調査、統計的な意味は全くない。が、我々の税金を使って、民間より判定の信用性が高い検査をしているのだ。行かない手はない。
さて、当選メールの説明に「混乱を避けるため」会場は口外しないよう書いてあった。期間が終わったら、もうしゃべってもいいだろうと思って、問い合わせたら、「今後もショナイに」との事。期間中、人が押しかけたりしたら困るだろうが、終わったんだからもういいのでは。
「その期間にその場所でやっていた事が分かると風評被害が起きる恐れがあるので」
そういう発想はなかった。
「患者の収容施設じゃないんですよ。疫学調査の意味を理解してればそういう解釈はあり得ないけど、都民は民度が低いから疫学調査の意味が理解できないと思ってるって事ですか?」
あわてて、「いやそういう意図ではありません」
いや、そういう意味だろう。
 どうせ陰性だろうけど、まだ結果が来ない。

◆NiziU世論調査ネットで募集するような物 厚労省の抗体保有率調査: かじヤンの科学する心
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/12/04/9323419

都陽性率比較は無意味2021年02月05日 12:27

都陽性率比較は無意味
>>前回と比べていずれも陽性率は高まっていた
前回は、感染率のあまり高くない3区限定の無作為調査、今回は都全域の希望者から抽選調査。
地域もサンプリング法も全く違う調査を比較して、高まっているというのはどうかしているかと。
どうせ、厚労省の言った通り書いてるだけなんだろうけど。

◆東京は0.91%に抗体 5都府県で検査、半年で高まる
https://digital.asahi.com/articles/ASP253D7YP25ULBJ002.html

◆NiziU世論調査ネットで募集するような物 厚労省の抗体保有率調査
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/12/04/9323419

◆コロナ調査場所非公開は都民の民度が低いから?
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2021/02/02/9343403

男と女の長話に論点がずれ 会議は独断専行が好ましいと言ってる2021年02月06日 11:42

いつの間にか「女性は長話をする」という失言だったみたいな事になってますが。「空気を読まずに会議で積極的に発言するから邪魔だ」という失言だったはずです。「会議で積極的に自分の意見を述べる」という本来褒められるべき行為が欠点扱いされる日本社会がおかしいだろうという議論があまりないのが不思議。褒められるべきというか、そもそも理事の責務だろうと。ずっと黙っていて、「賛成」「承認」以外何も言わない理事の方をクビにするべきでしょう。
 幼少時からディベートを徹底的にたたき込まれ、自分独自の意見を持ってそれをアビールできない者はまともな人扱いされない欧米では「積極的に自分の意見を述べる事が欠陥である」という思想自体が理解の埒外の地球外生物なので、海外メディアでは特にこういう方向に解釈がずれてしまうのでしょう。
 森会長の言葉を解釈すれば、<男性理事は発言しないから会議がすぐ終わる。女性理事は競うように発言するから会議が長くなる>と言ってるわけです。できれば誰も発言しない会議が望ましい会議のあり方という意味です。この人も、独善的な支配者が専横で物事を決め、「王様は裸だ」と言う者が誰もいないような菅-杉田思想が理想的社会と思ってるのでしょうか。

◆森喜朗会長は100%間違い「本当は女より男のほうがベラベラしゃべる」世界中の研究で証明済
・男は権力を持つほど話が長くなる
https://president.jp/articles/-/43054?page=1

自前の頭で物を考えなくなるのはクイズ番組の罪2021年02月08日 17:42

自前の頭で物を考えなくなるのはクイズ番組の罪
もう20年ぐらい続いてる日本のテレビ番組のクイズブームが大っ嫌い。制作費が安い割に視聴率が稼げるからお手軽なんだろう。しかし、辞書を引けば、あるいは、ググれば分かるような事を、どれだけ覚えているか競う事に何の意味もない。答のある問題を繰り返し解いても何も生まれない。正解のない問題に向き合うのが人生であり、挑むに足る良い問題を見つける、時には自分で作る事が新たな価値を生む。
 さて、この問題。鳥肉の柏もそうだが、僧侶が仏教上の問題から動物を食べられないので植物の名前を隠語に使って食べていたと聞いた事がある(殺生を禁じているが、植物は生き物に数えてなかった)。一般人にとっても、動物の肉を食べる事は本来タブーだったのではないか。それで思い出すのは、白土三平の「カムイ伝」。支配階級である徳川政権は、被支配階級の分断を図るため、農民と今で言う被差別民の間の反目を利用した。その一つが家畜に対する立場の違い。農民にとって、牛や馬は生活や農業になくてはならない大切な道具。それが死ぬ事は痛手だ。死んだ場合、処理するのは被差別民の仕事だった。皮や脂などを製品として利用し、肉を食べる。つまり、農民にとっての痛手が彼らにとっての生活の糧になる社会構造になっていたわけだ。本来の仏教には死者を忌む思想はない。日本では、仏教に死や疫病を呪術的に恐れる迷信が混ざってしまい、それが死骸を扱う仕事への職業差別の元になった。こういった事情が絡まって、動物の肉は大っぴらに食べるものではないというタブーが生まれたのではないか。私だったらこういう想像を交えていろいろ持論を展開すると思う。この出題者たちは必ずしも正解や満点の解答を求めてなくて、むしろ、苦し紛れでも変なアイデアを展開してくれる方をおもしろがってる気がする。つまり、社会科だろうが理科だろうが、知識量の開示を求めているわけではないのだろうと。そして、そういう環境で自由に才能を開花させたのが、誰も答えを知らないが、知らなくても誰でも答えられるクイズを作る松丸亮吾なのではないかと。

◆麻布中学の入試問題が難しすぎて頭を悩ませる大人たち
https://togetter.com/li/1662109?fbclid=IwAR2jxzLpIFlHztcEtutqQ-acDzl5n0k_3Co2PKHMEVeKjwoakWxS-8QRZSM

人体実験は短縮できない 速かったのは運が良かっただけかもしれない2021年02月10日 14:56

 ワクチンや薬の開発(完成)には、物作りの段階と人体実験による有効性と安全性の検証の段階の2段階がある。物作りの段階は、mRNA医薬のような新技術の導入で大幅短縮が可能だが、人体実験はどんなに技術が発達しても短縮や省略はできない。
 今回、有効性の証明が非常に短期間でできたのは、予想以上にmRNAワクチンの効果が高かったという運の良さが働いている。2万1000人の参加者で数カ月間にわずか162人しか発症しないので、これがワクチンを打つと120人に減るとか微妙な効果では承認できないだろう。それが発症わずか8人、有効率95%というヒクほど強い免疫の誘導が起き、思いの外有効性が短期間で証明できてしまった。事前の研究でもmRNAは獲得免疫の誘導が強いと報告されていたようだが。しかし、安全性の方は急性の症状はほとんど問題ないようだが、これほど効果が強いと長期の安全性は想像がつかない。有効なワクチンであれば数百万回に1回ぐらいは重篤な健康被害のリスクがつきもの。それが数万回に1回ぐらい高率になってもしょうがないという事だろう。

◆(科学の扉)ワクチン、短期開発のわけ ウイルスのmRNA注射、変異にも即応可
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14792296.html

無意識の差別 CAと言えば2021年02月13日 13:36

◆客室乗務員、乗務中に機内トイレでビール飲む 日本航空
https://digital.asahi.com/articles/ASL6652PQL66UTIL03H.html

 当時、そんな客室乗務員がいるのかと驚いたが、本文を読んだら男性だった。その瞬間、二重の偏見が無意識のうちにある事を否応なく気づかされた。CAは女性に違いないという偏見と、勤務中にトイレで酒を飲むような奴は男に違いないという偏見。ちなみに、このニュースから数日後、今度は女性客室乗務員の飲酒がニュースになった。

新コロ致命率はインフルの100倍2021年02月14日 14:34

新コロ致命率はインフルの100倍 日経の新書
 初心者向けのウイルス学・免疫学の解説書としてはとても役に立つと思う。感染致命割合(IFR)の話は勉強になった。検査を受けてない無自覚の無症状感染者も含めた全感染者数に対する致命率の事だ。新型コロナウイルスの場合、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスのデータから1%未満、0.5%程度だろうと考えていたが、西村教授の推定値は0.3-0.6%、英グループがランセットに載せた値は0.657%だそうで大体あってる。ただ、これまで日本のインフルに関してよく言われている年間1000万人がかかって1万人が死ぬというのもIFRだと思っていたのだが、これは確定診断した患者における死亡率CFR(致命割合)だそうだ。西浦教授などの推定では季節性インフルのIFRは0.005-0.01%。ざっくり言って、新型コロナウイルスはインフルの100倍の致死率という事になる。さすがにこれだとインフルの推定感染者数は年間2億ー6億人。日本人口のほとんどが年に2回も3回もインフルにかかっている計算になるので、けっこう多めに鯖を読んでいると思うが。それにしてもインフルの数十倍の致死率である事は間違いないだろう。ちなみに、患者の死亡率CFR同士での比較では、インフルの0.02-0.03%に対し、新型コロナウイルスは2%程度だそうで、やはり100に近い数十倍。
 誤解があると困るが、インフルより凶悪という事ではない。単に人類の免疫が未経験な事による過剰反応が原因だろう。以前に書いた「おとなしい怪獣よりウルトラマンの方が迷惑な円谷特撮状態」だ。

◆コロナ重症化は円谷特撮状態 怪獣よりウルトラマンの迷惑の方が大きい
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2021/01/14/9337488

 一点気になったのは、<新型コロナウイルスによる病気(COVID-19)の症状の原因を考えていくと、細胞に侵入し、増殖したウイルスが細胞を壊すという部分も大きいんですけれども>と書いている点。これについては疑問がある。

ちなみに死亡率にはおおむね4つの意味があり、これらをごっちゃに議論すると変な事になる。
1)致命割合CFR(case fatality rate)=死者数 / 患者数(deaths / cases)
確定診断された患者に占める死亡者の割合 2%程度
2)無症状も含め、検査で陽性になった感染者に占める死亡者の割合
3)感染致命割合IFR(infection fatality rate)=死者数/推定感染者数
検査を受けていない、自覚のない感染者も含めた感染者全体に占める死亡者の割合
0.3-0.6% 0.5% 0.657%など
4)死亡率(mortality rate)=死者数 / 総人口(deaths / population)

ワクチンでファイザーが値上がりしない理由2021年02月15日 14:34

「ワクチンが承認されたのに、ファイザーの株価はどうして上がらないのか」と質問されるのだが、短期投資家なんて競輪や競艇好きのばくち打ちと大差ない人たちの考えてる事なんて分からない。なので、ワクチンで景気回復への期待感はあるのに、ファイザーの業績への期待には何故つながらないかについて科学的な観点からだけ答えておいた。

1)まず、抗がん剤のなどの治療薬に比べ、ワクチンは利益が少ない事。
ビオンテック・ファイザーのワクチンは最新技術のmRNA医薬で1回分19.50ドル。これが政府への引き渡しの原価とすれば、中国製コロナワクチンや日本のインフルワクチンなどのような不活化ワクチンに比べるとかなり高価。そうは言っても、抗がん剤のように1人分何十万、何百万というわけにいかない。

2)それでも、シェアを取れば、それなりに儲けが出るだろうが、中国製など安くて低技術なワクチンが増えれば、アフリカ、南アメリカなど低所得で人口が多い地域では太刀打ちできない。

3)さらに、いつまでワクチンの需要があるか分からない。
抗がん剤は一度使い始めると一生使い続ける物も多く、また、患者がどんどん増えるので、特許が切れるまで何十年もずっと利益が上がる。しかし、コロナウイルスはRNAウイルスとしては例外的に変異しにくいウイルスなので、一度ワクチンを使うと、インフルのように毎年接種する必要はないかもしれない。いま、新型コロナウイルスの致死率がインフルより高いのは、免疫の過剰反応で起きるサイトカインストーム症候群(おとなしい怪獣よりウルトラマンやウルトラ警備隊による街の破壊の方が迷惑な円谷特撮状態)が原因。これは人類が初めて経験するウイルスであるためと考えられ、多くの人が一度かかってしまえば風邪のコロナウイルスのようにありふれた常在ウイルスになってしまう可能性もある。すると、感染やワクチンが全人類に一巡してしまうともうワクチンが必須でなくなるかもしれない。そんな状況で、あんな扱いづらいワクチンは生き残れない。


◆コロナ重症化は円谷特撮状態 怪獣よりウルトラマンの迷惑の方が大きい
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2021/01/14/9337488

◆新コロ致命率はインフルの100倍
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2021/02/14/9347090

1回分廃棄 日本では当然 コロナワクチン2021年02月17日 13:22

1回分廃棄 日本では当然 コロナワクチン
 ファイザーのワクチン1瓶を無駄なく6回使える、アメリカでは普及している注射器が日本にはほとんどないと聞いて、当然だろうなと。ファイザーワクチン1回分は2000円ぐらいだが、日本は1瓶何十万円もする抗がん剤を余らして大量に捨てている先進国では稀な国だ。日本では治療薬1瓶は患者1人に使うのが原則。100mgの瓶で売っていて、ある患者に60mgしか必要なかったら残り40mgは捨てる。アメリカなら複数の患者で使い回し、極力余りが出ないようにする。日本の場合、実際は一部しか使ってなくて残りを捨てていても1瓶分保険請求できる。少しでも余りを出さないようにしても経営的なメリットはなく、そのためにわざわざ高い注射器に変えるのは余計な経費が増えるだけのマイナスだ。廃棄を減らすための体勢が整えられたのはつい最近。日本は誰でも標準治療が受けられ、薬の流通在庫はいつも豊富。アメリカのような先進国でも治療薬の在庫が切れて治療ができない事がある。国際会議で日本の現状を知った他国の医師が「捨てるならうちにくれ」と怒っていたそうだ。
 今から4年前の推定値で日本の抗がん剤年間廃棄額は740億円。
 さて、今回のワクチンのように1人分の用量がきっちり決まっているものもある。ポテトチップスの袋に内容量100gと書いてあっても110gぐらい入ってるのと同じで、薬の瓶も表示容量より必ず多めに入ってる。新人は注射器の扱いが下手で瓶から取る時にこぼしてしまってキリギリになったり、ベテランだとほぼぴったりで余りが多かったりと人によって違う。ファイザーの瓶は元々5人分で表示している。その余り分がもったいないから有効に使おうというのが、欧米では基本6人分という事になってしまったというわけだ。
 モノ余り廃棄大国日本の弱点が露呈したのではないかと。