命より本2020年12月10日 14:13

命より本
肺結核は、石川啄木がかかった当時、体力を温存する療養ぐらいしか対処法がなかった。上司の学芸部長が「何かいい物を食べて栄養をつけさせよう」と部内でカンパを募り、結構な額を渡したが、啄木はそれを全部、本代に使ってしまったそうだ。もらった金を何に使おうが自由だが、部長は「啄木らしい」と呆れ、苦笑いしたとか。私の祖父が曽祖父から「嫁にピアノを買いなさい」と渡された大金を黙って全額本につぎ込んだ事も以前に書いた。それぐらい本は貴重で、何としても手に入れたい物だった。
 そのことを思い出させてくれる「本好きの下克上」。主人公は盗まれた本を取り戻した時、見た目や重さだけででなく、においで本物と確信するほどの本マニア。これほど紙の本への渇望を描いた小説が、最初はネットの小説投稿サイトで連載されたというのが皮肉。私は今年の夏ごろに本で読み始め、既刊23冊を一月もかからず読み終わり、続きが気になって、残りをネットで最後まで読んでしまった。それでも新刊が出ると買ってまた読む。
◆本は貴重だった 慈悲の心が搾取の構造生む
http://kajiyan.asablo.jp/blog/2020/09/10/9294069