続編嫌で殺したのに一生作らされる羽目に 男はつらいよ一挙放送(1)2020年06月20日 13:19

続編嫌で殺したのに一生作らされる羽目に 男はつらいよ一挙放送(1)  このところ、毎週土曜の夕方はBSテレ東の「男はつらいよ」全作品放映を第1作から見ている。有名な話だが、寅さんは映画よりもフジテレビのドラマの方が先。ドラマ版の最終回、寅さんは奄美大島でハブにかまれて死ぬ。学生時代、少人数で山田洋次の話を聞く機会があった。本音を言うと、続編を作るのが嫌で寅さんを殺してしまおうと決めたそうだ。この脚本にスタッフはもとよりバイトの事務員に至るまで「寅さんがかわいそうだ」とこぞって反対。「芸術にはこの終わり方が必要なんだ。監督命令は絶対だ」などと言って押し切り強行。  放送が終わると大変なことになった。視聴者からの抗議殺到はともかく、いましもフジテレビに火を付けて燃やしてやるといった尋常でない怒りの声(文字どおり炎上)に、山田監督はショックを受けたという。  「どんな人たちが、どんな思いで寅さんを見ているのか、自分はまったく考えてなかった」。まだ、サラリーマンが猛烈社員と呼ばれていたあの時代。疲れて帰ってきた中高年が晩酌をしながら、「今日は寅さんどうしてるかな」とテレビをつけ、ほっとするひととき。「番組が終わるのは仕方がない。でも、放送はなくなっても、見ていた人たちが、今日も寅さんはきっと日本のどこかを旅しているんだろうな、と思えるような終わらせ方をしなければいけなかった。そんな人たちの気持ちを裏切ってしまったことを後悔した」。  贖罪のためにいつか寅さんをよみがえらせたいという思いが、松竹映画につながった。ところが、松竹は寅さんがなければ社員のボーナスが出ないと言われるほど寅さん依存会社になってしまい、ひどいときは盆と正月の2回つくらされたことも。  ほかのことをやらせてくれないともうやめるとキレて生まれたのが、黄色いハンカチといううわさを聞いた。松竹で若い才能が伸びにくくなった一因でもあるし、山田監督自身がたそがれ清兵衛まで待たずに若いときに別の傑作をつくる機会をなくしたかも。ギネスに載った寅さんは偉大ですが、テレビで安易に葬ってしまったのが、後々までたたった。
 このところ、毎週土曜の夕方はBSテレ東の「男はつらいよ」全作品放映を第1作から見ている。有名な話だが、寅さんは映画よりもフジテレビのドラマの方が先。ドラマ版の最終回、寅さんは奄美大島でハブにかまれて死ぬ。学生時代、少人数で山田洋次の話を聞く機会があった。本音を言うと、続編を作るのが嫌で寅さんを殺してしまおうと決めたそうだ。この脚本にスタッフはもとよりバイトの事務員に至るまで「寅さんがかわいそうだ」とこぞって反対。「芸術にはこの終わり方が必要なんだ。監督命令は絶対だ」などと言って押し切り強行。
 放送が終わると大変なことになった。視聴者からの抗議殺到はともかく、いましもフジテレビに火を付けて燃やしてやるといった尋常でない怒りの声(文字どおり炎上)に、山田監督はショックを受けたという。
 「どんな人たちが、どんな思いで寅さんを見ているのか、自分はまったく考えてなかった」。まだ、サラリーマンが猛烈社員と呼ばれていたあの時代。疲れて帰ってきた中高年が晩酌をしながら、「今日は寅さんどうしてるかな」とテレビをつけ、ほっとするひととき。「番組が終わるのは仕方がない。でも、放送はなくなっても、見ていた人たちが、今日も寅さんはきっと日本のどこかを旅しているんだろうな、と思えるような終わらせ方をしなければいけなかった。そんな人たちの気持ちを裏切ってしまったことを後悔した」。
 贖罪のためにいつか寅さんをよみがえらせたいという思いが、松竹映画につながった。ところが、松竹は寅さんがなければ社員のボーナスが出ないと言われるほど寅さん依存会社になってしまい、ひどいときは盆と正月の2回つくらされたことも。
 ほかのことをやらせてくれないともうやめるとキレて生まれたのが、黄色いハンカチといううわさを聞いた。松竹で若い才能が伸びにくくなった一因でもあるし、山田監督自身がたそがれ清兵衛まで待たずに若いときに別の傑作をつくる機会をなくしたかも。ギネスに載った寅さんは偉大ですが、テレビで安易に葬ってしまったのが、後々までたたった。