人間優先のボーイングじゃなかったの? 737MAX墜落に起きた争い2019年03月29日 07:24

 ボーイングの最新鋭小型旅客機737MAXの事故原因は、離陸上昇中、機首の上がり過ぎを防ぐシステムMCASが機首を下げようとしたのに対し、そのままにしようと機首を上げたパイロットとけんかになったことだ。
 実際には機首は上がっていないのにセンサーの不具合でMCASは上がりすぎだと誤認したらしい。
 これを聞いての感想。「これまで言われていたボーイングの人間優先のキャッチフレーズと違うじゃん」。

 そして、ボーイングが27日に記者会見し、MCASの修正を発表した。その改善点として、

>>パイロットとシステムの判断が異なる場合、パイロットの操縦を優先する。

>>システムによる機体制御よりパイロットの操縦を常に優先するよう設定を変更する。
>>パイロットが操縦かんを引いて機首を上げようとした場合、機首を下げようとする自動制御が無効になる仕様に変更した。

などと報道されている。一言で言えば、人間優先でなかったのを人間優先にするという事だ。


●ボーイングはパイロット優先 vs.エアバスはコンピューター優先のはずが

 実は同様に、自動制御のコンピューターとパイロットがけんかしてしまった有名な事故が日本で起きている。中華航空のエアバスA300-600Rの墜落事故だ。こちらは737MAXと逆で、着陸の際、着陸を止めて急上昇(ゴーアラウンド)しようとするコンピューターと、着陸させようとするパイロットがけんかになった。上に行こうとしたのがコンピューターで、下に行こうとしたのがパイロットと、737MAXの事故と上下が反対だが、よく似た出来事だ。
 中華航空機事故の後、日本に多いボーイング信者(特にJAL)のパイロットから、「ボーイングは人間(パイロット)優先だが、エアバスはコンピューター優先だから危ない」という非難をよく聞かされた。
 中華航空機のような場合、ボーイング機だったら、パイロットが着陸を続けようと操縦桿を押せば、コンピューターによる自動制御が無効になって、パイロットの意思が優先される。だから、けんかは起きない。ところが、エアバス機の設計思想はコンピューターの方が優先でパイロットの言うことを聞かないというわけだ。
 こういうボーイングのようにパイロットの操縦桿などの操作でコンピューターへの命令が上書きされることをオーバーライドという。
 このオーバーライドできるボーイング方式が737MAXのMCASにも採用されていれば、今回のような人と機械のけんかは起きなかったはず。ボーイングは人間優先からいつの間にエアバス寄りの設計になったのだろうか。
 結局、27日の会見で発表された修正はオーバーライド不可からオーバーライド可能への変更だ。
会見に出る人たちにはなぜMCASを最初からオーバーライドできるようにしなかったのかボーイングに質問して欲しい。
 想像だが、前回の「737墜落原因は経済性と引き換えに安全をソフトに任せたから」(http://kajiyan.asablo.jp/blog/2019/03/27/9052200)で書いた737の前の型から737MAXへの機体の設計変更による不安定性(機首が上向きになり過ぎる傾向)がかなりヤバイ問題で、それを補うMCASがパイロットの操縦桿操作だけで簡単にはずれるようにすると危険だとボーイングの技術者は判断したのではないか。

●パイロットを混乱させる設計思想の転向

 737MAX事故機のパイロットがCMAXをOFFにする手順を知らなかったのではないかという可能性も言われている。これも中華航空機事故との共通点だ。中華航空エアバス機のパイロットはかなり直近までボーイング機のパイロットをしていて、操縦桿の操作で自動制御がはずれるボーイングのオーバーライドに慣れていた。エアバス機ではオーバーライドは利かず、ちゃんとスイッチを切らないとOFFにならないことを知らなかった、もしくは、ボーイング機を飛ばしていた時の癖でオーバーライドできると勘違いしたのではないかというのだ。
 これと同様に、737MAX事故機のパイロットはそれまでのボーイング機に慣れていたとすれば、やはりオーバーライドでOFFになると思ってしまったのではないか。

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