オプジーボを免疫療法と呼ぶのはやめよう2018年12月27日 08:12

 オプジーボが夢のがん特効薬のように持てはやされ、便乗した怪しい民間療法が「ノーベル記念割引」などと「がん免疫療法」をPRしている。
 これらほとんど詐欺と言える、科学的には効果があると思えない昔からのがん免疫療法と、患者の2、3割だけとはいえ劇的に効く本庶さんのオプジーボやキイトルーダは根本的に仕組みが違う。
 それを同じ名前で呼んでいることで、詐欺的商法がつけ込む余地が生まれるのだ。
従来の効かない免疫療法と区別するため、オプジーボなどをがん免疫療法と呼ぶのは止めるべきだと思う。

 どう違うか。

 従来のがん免疫療法は基本的にはワクチンだ。人の体は、天然痘やはしかなどのウイルスが体の中に入ってくると、そのウイルスを専門に倒す抗体を作って対抗する。抗体の増産が間に合わず、ウイルスの攻勢が勝ってしまうと命を落とすことになる。
 そこで、あらかじめ体内に抗体を作っておいて、外敵との戦に備えさせるのがワクチンだ。毒性を弱めた天然痘やはしかなどのウイルスやウイルスの断片などをワクチンとして使う。これらを注射しておくと、そのウイルスに対する抗体が体内に生じ、本物のウイルスが外から入ってきた時、ただちに抗体が増産され、撃退する。
 この仕組みをがんに応用するのががん免疫療法だ。がん細胞に対する抗体を人為的に作る方法だが、あまりうまく行かない。

 その理由は、主に2つ。

 免疫の仕組みでは、抗体が自分の臓器や組織を攻撃しないよう、自分の細胞を見分けて、それに対する抗体は作られないようになっている。がん細胞に対してもある程度、抗体は作られるが、がん細胞は元々自分の細胞だったものが変化したものなので、免疫の力が働きにくい。
 そして、体の中で増えているがん細胞は免疫の攻撃をうまくかわすよう変異することで生き残っており、ワクチンで抗体を作ってもそれでは倒せないのだ。
 それでも、体内でそのがん細胞に特化した抗体が大量に作られるようにしたり、外から大量に入れればある程度の効果は期待できるが、そう簡単ではなく、民間療法レベルでは実現できていない。
 これに対し、本庶さんのオプジーボは、そのような特定のがん細胞に特化した免疫の使い方ではない。がん細胞が免疫をだましたり、すり抜けたりするために共通に使っている仕組みそのものを無効化するという全く新しい方法なのだ。その効き方のメカニズムから、免疫チェックポイント阻害剤、免疫のブレーキを外す治療などと言われている。
 免疫を強化してがん細胞と戦うという点では確かに同じなのだが、これを従来のがん免疫療法といっしょの分類に入れるのは害が多いと思う。