宝くじのバラは高額当選確率が連番の2.5倍になるのはなぜか④ バラが本当にバラバラだったら2.5でなくなる(高校の数学がトラウマな人は読まないで)2018年12月14日 22:15

 さて、宝くじのバラは適当に選んだ本当のバラバラな数字ではない。もし本当にバラバラだと、中にはたまたま数字が並んでいるバラもできる。例えば、1、2、5、6、9、10、13、14、17、18とか、10、11、12、13、14、15、34、35、36、37、38とか。だが、実際のバラは10個の数字で同じ組がないなど規則性が仕組まれている。
 8年前、バラと連番の高額当選確率の違いを書く際、私以前にこの違いを指摘した人が誰もいなかったから自分で計算して求めるしかなかった。その時、「バラが本当のバラバラではなく、規則性があってよかった」と心底思った。ジャンボ宝くじのバラでは絶対に1等前後賞の同時当選が起きないから小学生でも分かるような計算で確率が求まる。
 数字の選び方がランダムな本当のバラバラだと、連番が混じっているバラも存在し、そうなると、バラでも1等と前後賞の同時当選が低い確率とはいえ起き、その確率計算はかなり複雑になる。
 小学生でもわかる算数の問題が、高校で習う順列組み合わせを知らないと解けない、大学入試に出してもいいような数学の問題になってしまうのだ。それもかなりの難問だ。
 自分でも解けるが、本当に合っているか自信がない。ありがたいことに、確率の専門家が100枚のくじのモデルでどうなるか計算してくれた。本当のバラバラというのは、抽選箱の中に100枚の数字が入っていて、そこから10枚の数字を適当に引いた場合だ。

 さて、その計算法は高校で数学を挫折した人が見たらドン引きなので、この記事の最後に載せることにする。その前に言いたいことがある。この0~99の100枚のくじでの計算は、2000万個の番号がある年末ジャンボのバラが真のバラバラとした場合も同じようにできるはずだ。
 しかし、科学する心があれば、計算してみなくても、おおよその予想はつく。100枚だと本当のバラの中にまあまあの比率で連続した番号の入った組み合わせがあるから、1等前後賞同時当選の確率も無視できないぐらいある。そのため、バラの高額当選確率は連番の2.5倍よりけっこう小さくなる。だが、2000万個もの中から10枚選ぶ場合、同時当選があるような組み合わせの比率は極めて小さくなるから、2.5倍より小さくはなるが、その差はほとんど無視できるぐらい微少だろう。

 それでは計算結果を示そう。まず、書くのが大変。高校数学では10通りの中から5個選ぶ組み合わせを10C5などと書くが、Cを大きくできないので、パソコンソフトなどでの表記法をまねて、comb(10,5)と書こう。10個の中から5個を選ぶコンビネーション(組み合わせ)という意味だ。

 ほら、ここまでで、もうすでに引いているでしょう。
とても面倒そうということさえ分かってくれれば、続きは見なくていいです。

0~99の数字が書かれた100枚のくじで、真のバラ10枚を買った場合の当たる確率

まず、真のバラ10枚すべての組み合わせは100枚の中から10枚選ぶ組み合わせなので、comb(100,10)となる。
comb(100,10)=(100・99・98・・・91)/(10・9・8・・・1)

①1等のみ当たる確率

1等のみが当たっている組み合わせは、バラの中に1等が1枚あり、残りの9枚は外れている97個の数字のどれかになる組み合わせなので、comb(97,9)となる。
comb(97,9)=(97・96・95・・・89)/(9・8・・・1)

当たる確率は、これをすべての組み合わせで割ったもの。なので、comb(97,9)/comb(100,10)=89/(11・98)
前賞のみ、後賞のみも確率は同じ。

②1等と前賞が当たるダブル当選の確率

バラの中に1等と前賞があり、残りの8枚は外れている97個の数字のどれかになる組み合わせはcomb(97,8)となる。

確率はcomb(97,8)/comb(100,10)=9/(11・98)

1等と後賞、前賞と後賞とダブル当選の確率はすべて同じ。

③1等前後賞独占の確率

バラの中に1等と前後賞の3つがあり、残りの7枚は外れている97個の数字のどれかになる組み合わせはcomb(97,7)となる。

確率はcomb(97,7)/comb(100,10)=4/(5・11・98)

①×3と②×3と③を足すと、どれかに当たる確率は約0.273。連番は持っている10枚に加え、その10枚の最小より1小さい番号と最大より1大きい番号が前後賞に引っかかる。100枚のうちの12枚が1等だとどれかに当たる場合になるので、連番の高額当選確率は0.12。バラは連番の約2.28倍の確率になる。2.5倍よりそこそこ小さい。

ちなみに、すべて外れる確率を計算した方が手っ取り早い。

外れの全組み合わせは外れ97枚の中から10枚選ぶ組み合わせ=comb(97,10)なので、
外れの確率はcomb(97,10)/comb(100,10)=2・89/(5・49)=約0.727

これを一般化すると、n通りあるくじで、

バラが外れの確率はcomb(n-3,10)/comb(n,10)=(n-10)(n-11)(n-12)/n(n-1)(n-2)

1等前後賞どれかが当たる確率は、1-comb(n-3,10)/comb(n,10)=1-(n-10)(n-11)(n-12)/n(n-1)(n-2)
=[n(n-1)(n-2)-(n-10)(n-11)(n-12)]/n(n-1)(n-2)

連番でどれかが当たる確率は、12/n
なぜなら、連番が1等前後賞のどれか当たりに引っかかるのはいつでも1等が12枚のどれかの時だからだ。12を全体の枚数で割った確率になる。連番は計算が楽でいい。

バラと連番の高額当選確率の比は、
[n(n-1)(n-2)-(n-10)(n-11)(n-12)]/12(n-1)(n-2) =[n-(n-10)(n-11)(n-12)/(n-1)(n-2)]/12

1000通りのくじなら倍率は約2.48、1万なら約2.4978、10万なら約2.4998、100万なら約2.49998、通常のジャンボくじと同じ1000万なら約2.499998、年末ジャンボと同じ2000万なら約2.499999と予想通り2.5に近づいていく。同時当選の確率が単独当選の確率に比べてものすごく微少になっていくからだ。同時当選が無視できるほど小さければ、同時当選のないジャンボくじのバラと同じになるのは当たり前。

 さて、上の式を展開してみよう。

[n-(n-10)(n-11)(n-12)/(n-1)(n-2)]/12=[n-(n3-33n2+362n-1320)/(n2-3n+2)]/12=(30n2-360n+1320)/12(n2-3n+2)=(2.5n2-30n+110)/(n2-3n+2)=2.5-(22.5n-105)/(n2-3n+2)

n → ∞ であれば、2.5倍になることがわかる。

展開が間違ってたらゴメンナサイ。どうせ、n無限大なら第2項は0になるから、結果は正しいけど。

 しかし、やってみて、これ、大学入試レベルでも超難問じゃないかという気がしてきた。もしも、自分が試験問題作成委員会のメンバーでこれを提案したら、却下されるのでは。高校数学の知識だけで解けるとはいえ。細かい設問で解答を導いていく方式じゃないと無理かもしれない。
 自分で作った問題だから解けたが、この問題をいきなり見せられて、予備知識もないのに試験時間内に解ける高校生がいたら、天才だと思う。